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学長からのメッセージ

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学長通信 No.1

奈良先端科学技術大学院大学
学長 磯貝彰

学長通信No. 1(2009年10月1日)

本年4月に学長に就任し、ほぼ半年が経った。この半年、極めて慌ただしく過ごした。最初の3ヶ月は、来年度から始まる第2期中期目標・中期計画(素案)の作成に多くの時間を費やした。その全学報告会の際に、今後、折に触れて、諸々の問題についての学長としての考え方を、本学構成員に伝えるための仕組みを作りたいということを述べた。このほど、本学のWEB上に、学長通信というコラム欄を作ることになり、そこに定期的に学長からの報告を載せることとなった。本稿はその第1号である。

私は4月の入学式で、新入生諸君に、科学の作法を身につけること、自ら学修することに加えて、次の7項目について要望した。

  1. 本をたくさん読み、自分で考えること。
  2. 身の回りの自然に親しむこと。
  3. 自分と社会との関わりを考えること。
  4. 奈良の文化に親しむこと。
  5. 専門以外のサイエンスについても、興味を持つこと。
  6. 人と親しむこと。
  7. 心身とも、健康であること。

これは、学生諸君にこうしたことのための時間を与えるという、教員側の覚悟でもある。彼らが社会に出て幅広く活躍できるためには、言われることを待つ、あるいは言われたことはしっかり出来るというだけの学生に育ててはいけない。教員は学生が育つ手助けをしているのだという覚悟が必要であろう。

6月半ば、本学の第2期中期目標・中期計画(素案)がほぼ出来上がった頃、文部科学省から、改めていくつかの検討事項が示された。その中で重要なことは、博士課程の定員を見直し、その結果を改めて中期目標に書き込むことが要請されたことである。文部科学省の説明では、減らすことを要請しているのではなく、それぞれの大学の実情にあわせて見直しをしなさいということであった。本学では、それまでも、この問題について議論をしてきた経過があり、私自身も、本学の存在理由から考えて、博士課程の定員を減らすことは考えていないことを表明してきた。このことについては経営協議会でも理解され、特にそれまでの議論の結果を変更することなく、最終案を決定した。

その後、大学や文部科学省などの色々な立場の人に、博士課程定員問題についての本学の考え方を説明してきたが、本学の目的から考えてそれは当然であるという意見を述べる人が多かったのは、心強いことであった。その中で、博士課程修了者の将来をどう見るのかをよく考え、京大や阪大とはひと味違う、奈良先端大の特徴を持った教育システムを考えて欲しいという意見が示されたことは、私自身にとっても、改めて、本学の位置づけを考える上で重要な示唆であった。

それぞれの研究科が国際的に通用する第一線の研究者の養成を考えることは、博士課程の目的として重要である。しかし、その中で、日本の大学で養成されている博士課程学生の数とアカデミックポジションの数の問題、また、これからの社会では、多くの優れた修了生が産業界でも活躍することが重要であるという現実的な問題を考えるとき、全ての博士課程学生を同じように扱うことではなく、彼らの人生設計の中で、自らの将来を幅広く見られる、またそれに対応しうる教育システムを考える必要があるのだろう。

今回の総選挙を見ての感想である。アメリカのオバマ候補はchangeを訴え大統領となり、鳩山氏は政権交代というキャッチフレーズで総理大臣になった。しかし、変わること自体が重要なのではなく、何をやるために変わらなければいけないのかが重要である。日本の場合、郵政改革と同じような、政権交代というワンフレーズのポピュリズムではないことを祈りたい。もし、変わった結果、何も変わらなかったら、その反動は大きい。自戒しなければならないと思っている。

日本の新政権が、国立大学法人や、科学技術をどう捉えていくのか、注目しなければいけない。また、前政権で示された、運営費交付金1%削減策や、人件費の毎年1%削減という問題が、どうなっていくのか。高等教育政策がどう変わっていくのか。かつての国立大学時代に比べ、国立大学法人となって独自性が増したはずである中で、むしろ政治の世界の事情に振り舞わされる事態になってきたようにも思われる。この政権交代が大学にとって良い方向になるためには、大学人の発言が必要なのであろう。国立大学とは何か、大学院大学とは何か、本学でも考え発信する必要があろう。そのためには、改めて、本学が目指すもの、本学に期待されているものを考えていく必要があろう。その中で、本学の独自性を示すための活動を行っていくことが必要である。

現在、平成23年度からの第4期科学技術基本計画の策定に向けた各段階・各組織での議論が続けられている。そのなかで、科学技術・イノベーションという基本的キーワードが提案されているようだ。しかし、政府方針がどうなろうと、大学、国立大学法人の担うべき基本的役割:基盤的な学術研究(知の創造)と人材育成(知の伝承)は、変わることはないはずである。その上に立って、それぞれの大学がその目的、方針に沿った特徴付けを行い、様々な形での大学の機能分化が果たされるのであろう。この意味でも本学の特徴は何かについて良く考え、大学内のコンセンサスを保つ必要がある。

10月に入ると、奈良もモミジの季節を迎えることになる。正倉院展をはじめ色々な催し物も始まる。時間を見つけ奈良を歩いて欲しい。きっと気持ちにゆとりを持つことができるだろう。


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