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学長通信 No.2
学長通信No.2(2009年11月1日)
本学の将来構想・教員組織と人件費問題
平成18年、私が副学長であったころを振り返って、当時、教員(特に、助教授と助手)の呼称とその役割の変更について議論した際、新しい教員組織については十分な議論ができなかったような記憶がある。そして今でも講座が教員組織として活かされている。いま、本学も開学以来20年近くがたって、教員の世代交代に伴う教員人事が増えてくる。それぞれの分野の最先端研究を展開するために、研究分野の見直しの必要性なども出てくるであろう。新しい分野にどう切り込んでいくのか、そのための教員採用をどう進めていくのか、また、その際、現実の問題としても、これまでの講座という教員組織をキチンと維持できるのかという問題もある。今回は、本学の将来の人件費の問題を取り上げ、教員組織との関係などについて、考えているところを書いてみる。
一方、現在、国立大学法人では、効率化係数と称する経費削減で、毎年1%ずつ運営費交付金が削減されてきている。また、同時に、人件費抑制策として、毎年、1%の人件費削減が義務づけられている。この人件費抑制策は、今回の第2期中期目標・計画の中にも盛り込むこととされ、23年度まで継続することとされている。新政権政党である民主党の政策集index2009には、こうした国立大学法人の経費見直しの必要性が書かれている。しかし、現在提出されている概算要求では、国立大学法人の運営費交付金は、やや増加しているものの、病院支援などの要因が多く、基盤的な運営費交付金が維持されるのかどうかは、定かではない。効率化係数の問題では、第1期中期目標期間の6年間で、国立大学法人全体で約720億円が減らされてきた。これは、京都大学1校分より大きく、小規模大学であれば、23校分がなくなることに相当する。この問題については、国大協などをはじめ、多くの学術機関で、声を大にして大学における学術研究の重要性を訴えて、改善を要求していく必要があろう。また、国立大学法人の人件費抑制策が回避されるようになるかどうかは、予断を許さない。
こうした問題から多くの国立大学法人では、定年退職者などの後任の採用を手控える方策などが採られている。本学では、人件費抑制策に対しては、幸い、職員の平均年齢が比較的若いこともあって、これまでは余り大きな問題とはならず、この1,2年も今のままでもそれをクリアできる。そのため、将来の人件費問題については、議論が先送りされてきている。しかし、現実にこうした状況が続くことになると、28年度には、抑制策による人件費限度枠を2億円以上超えてしまうことになる。これは、助教の人数で考えると、現在のほぼ半数の助教の人件費相当となる。つまり、今の規制をそのまま受け入れざるを得ないとすると、助教は半数の数しか採用できないことになってしまう。また、もし、この過剰分を、人件費限度枠外の費用でまかなうとすると、その原資として、現在研究科に配分している研究費相当分を上回る額が必要になるというシミュレーションデータがある。このことは、何らかの方法で人件費限度枠の問題を回避して教員数を確保できたとしても、その代償に、研究費がほとんど無くなってしまうことを意味する。大学においては、何よりも人が財産である。こうした状況になることを回避するためには、先に書いたように、国立大学法人全体として、新政権に政策転換を求めていく行動が必要である。しかし、本学においてもこうした事態を想定して、運営費交付金の使途のうち節約できるものを節約し、人件費に回すこと等を検討していくことも必要である。そのうえでもなお、7,8年後に想定される人件費問題を視野に入れた長期計画を考え、そのなかで、教員組織のあり方を考えておく必要がある。物件費とは違って、人件費は年度ごとには調整することは困難であり、雇用の継続性から、その後年度負担分を常に想定した施策を立てる必要がある。
こうした長期的な状況も視野に入れつつ、各研究科では、研究科の将来構想を考える中で、教育研究組織のあり方について、改めて議論をして欲しい。その際、重要なことは、研究者、特に若手研究者の研究の独立性を意識する余り、教育研究組織をばらばらに小さくしてしまわないことであろう。今の大学運営に求められているのは、単に、個々の教員の和集合の力ということだけでなく、集まることによって質的に高いレベルになった総合性を持った組織になることである。それが、大学あるいは研究科の研究力、教育力として評価されているという現状を十分理解して欲しい。そのためには、教員組織は一定レベルの大きさを持っており、その運営の中で、個々の研究者の研究などの独自性を保証するシステムであろう。現代のサイエンスは、研究も教育も一人ではできない総合性を持ったものになっている。かつての国立大学の中で見られたように、助手のポストを教授ポストなどに振り替え、間口は大きくなったものの、研究教育組織として小さな、薄手のものとなってしまい、全体組織としても、若い人がいない、いびつなものとなってしまった愚を本学で再現してはいけないであろう。しかし、一方では、常にそれぞれの分野の最先端研究を可能とするような教員組織を考えていくことも重要であり、20年前に本学が発足した当時の研究分野を、全てそのまま維持すればいいということにならない。
若手研究者に活躍の場を与えることは重要なことである。そのなかで、若手研究者が、プロモートされて外部に出ていくことを、推進するような制度や運営が必要であろう。そのために、教員組織の中で若手研究者をどう位置づけ、どう支援していくのか、この層の教員の将来を考えた組織運営もまた、必要となる。最近採用された助教教員は、全て任期制となっている。この人たちの任期切れが近づきつつあり、その将来をどう考えていくのかは、大学としても責任がある重要な問題であろうと考えている。特に、再任可としてある採用条件の場合、どのような場合に再任されるのか、あるいは再任されないのか、それぞれの分野での評価システムは一様ではないであろうが、早急な検討が必要であろう。若手教員のキャリアパスという意味では、テニュアトラックという概念も重要な課題である。政策的にもテニュアトラック制への支援が行われている。この制度は、一つのポストに予備的に複数の教員を採用しておき、その中から、一定期間ののち一人を選考するというような制度ではない。この制度の本来の意味を活かし、その意義有るものとして取り入れるには、どういう教員組織が適切なのか、どういう層にこれを適用すればいいのか、また、どういう評価システムがいいのか、これも、検討が必要であろう。
教員組織の問題についての課題は多い。しかし、今の時期はこうした問題を議論するにふさわしい時期では無かろうか。まもなく20周年をむかえ、法人化後の第2期に入る今の時点で、こうした問題を整理し、今後の本学の10年を目指す必要がある。
最近、私的な会合で、奈良の若い職人さん達と話をする機会が多い。古い町の中で、それぞれ、自分の先輩を超えるため、協力しながら前向きに努力している。本学も、若い人たちが、元気で未来を見られる場でありたい。それは、教員に限らず、職員層についても同じことである。