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学長からのメッセージ

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学長通信 No.3

学長通信No.3(2010年1月1日)

 年頭所感

 「ある」から「いる」のではなく、「いる」から「ある」に。

 

あけましておめでとうございます。2010年の年頭にあたって、学長通信の形でご挨拶します。この通信も、毎月一回くらいと言いながら、昨年11,12月は、政府の仕分け作業に関わる問題があって、学長通信という形では発信できませんでした。あらためて、今年は、月に一度を目指します。

 

昨年を振り返って感じることは、やはり、世の中の変わり目、変化の年であったのだということです。昨年の「今年の漢字」に、変化して新しくなるという意味の「新」が選ばれたのも、なるほどと思います。本学も、学長交代という時期を迎え、単なる継続ではなく、新しくなることを目指していますが、少しは何かが変わってきたでしょうか。

 

さて、9月に民主党政権が発足しました。鳩山内閣は理系内閣と評判され、ある意味では、科学技術振興の施策の強化への期待がありましたが、そうした簡単な図式にはなりませんでした。新政権による事業仕分けの作業は、従来の予算決定手続きを全く変え、その一過程をテレビ化することで、市民の目線にたった予算編成といわれました。その背景に景気悪化による歳入欠陥と新規事業を行うための財源探しというものがあったことは良く知られています。この事業仕分けの過程や結論に対して、大学人は大きく反発しました。本学では、奈良にある国立大学3法人として、高等教育経費の現状の改善と長期的な高等教育政策の基本政策の確立を政府に期待し、その理解と支援を求める奈良県民に向けた共同声明を発表しました。結局、予算編成は政治主導型という名目で行われ、これまでの、大学vs文部科学省;文部科学省vs財務省という図式が大きく変わりました。この間、特に科学技術予算を巡って、色々な立場からの発言が続き、世の中の注目を浴びました。科学技術予算がこれほど注目を浴びたことはかつて無かったのかもしれません。しかし、大学や研究機関を支援する街の声は、政治家の判断を大きく変えるものとはなりませんでした。これには、これまで長い間、科学技術振興という名の下に守られてきた大学が、社会に対してその存在の重要性を認めて貰うための発信力を十分に発揮してこなかったこともあるのかもしれません。その結果、これまで優遇され発展してきた競争的資金などについて、来年度どうなるか、あるいはその後をどうするかという現実的、また理念的な問題を多く残しました。本学は、学部学生がいない分、授業料収入などが少なく、科研費などを含む外部資金に大学運営が大きく依存しており、その影響は少なくないでしょう。

 

政府の長期的な高等教育あるいは科学技術の基本政策を示して欲しいという私達の注文に対しての政府からの一つの答えが、平成22年度予算編成基本方針についての閣議決定でしょう。これについて、文教速報(7388号)は次のように要約しています。

 

 

「政府は平成22年度予算編成の基本方針を12月15日に閣議決定した。旧来型の資源配分や行政手法を転換し、経済社会の構造や重視すべき価値を変え、国民生活に安心と活力をもたらす第1歩として、コンクリートから人への理念に立って、子育て、雇用、環境、科学・技術に特に重点を置くとしている。

 

科学・技術は、我が国が「知恵」で生きていく基盤を創る重要な手段だとし、命に関わる医療や地球規模の課題である環境分野などにおいても、科学・技術の果たす役割は大きく、国家の戦略上、重要な役割を担う分野とする一方、資金配分や研究体制、研究成果の評価等は見直しの余地も多いと指摘。

 

従来の推進体制を改め、総合科学技術会議の改組も検討し、科学技術予算については、無駄や府省間の重複を排除し、将来の戦略上の重要な分野に投資を集中するとしている。」

 

 

こうした政府の方針は、今後も続くと思われ、科学・技術は重要分野と位置づけられてはいるものの、科学技術関連予算がこれまでのように、聖域で守られることは無かろうと思われます。また、重要分野や課題の選別がもっと厳しくなり、大学は教育と研究のバランスの問題で、さらに苦労することになる可能性もあります。もう一点、政府の方針で注目すべきことは、これまで、「科学技術」と総称されてきた言葉が、「科学・技術」と並記して書かれていることでしょう。これ自体、科学技術の基礎部分である科学を重要視する方向として、私自身は評価したいと思いますが、それが予算として、学術的な基礎研究分野(部分)、あるいは、大学の運営のための基礎的な部分の維持や強化に顕れるのかどうか、注目していかなければいけないでしょう。また、それについての世の中の理解を求める活動を、大学人としては、やっていかなければいけないのだろうと思います。

 

このような予算上の不透明さの中、たぶん、昨年より大幅に収入が減りそうな状況の下で、本学のこれからの一年の課題は何でありましょうか。

 

昨年6月、本年4月からの第2期の中期目標・中期計画(素案)を作り、その後何度かの文部科学省からの追加の検討課題を整理して、今、ほぼ最終案になってきております。さらに現在は、本年4月からの年度の事業計画を作成中であります。また、中期目標などには具体的には、記載されていないものの、本学の目標に向かっての具体的事業を計画していく必要があります。昨年からの継続課題としては、男女共同参画室の運営、国際連携推進本部の運営など、新しく予算を伴う事業があります。また、これまで継続してきて、今後も継続を約束している事業で、大幅に予算が削減されるものもあります。さらには、本年度は、大学院GP関係の新規募集はないため、これまでGPでやってきた事業をどう整理し、何を継続するかという問題も整理しなければいけません。今回の政府の仕分け作業の一つの教訓は、どんな事業も予算がついて回る、つまり、予算無しに事業は展開できないというものです。本学の収入が減る中、継続することが必要な事業と新規に必要な事業を優先し、一度立ち止まって考えてみた方がいい事業を停止あるいは中止していくことを、事業仕分けと同じような観点で行う必要があります。

 

こうした中で、大きな問題としてあるのは、本学の将来構想の問題でしょう。各研究科の教員人事の問題もまた、政府の人件費抑制策への対応策も、大きな意味での本学の将来構想の中で、考える必要があります。その一つが、将来の研究分野の変遷に対応できるような、教員組織、専攻・研究科組織の問題です。本学は、国家戦略として作られた、科学技術に特化した大学院大学であります。従って、国の科学技術政策の方向に対して、無関心ではいられません。このことは、政府のいう方向に大学が従うということではありません。政府の方針は認識しつつ、その上で、本学としての将来の研究教育の方向性を、本学の責任として考える必要があります。また、これについては、教職員一人一人が、それぞれに考える必要があるのです。そのなかで重要なことに、本学の目指すもの、国立大学法人の中での本学の役割・位置づけ、また、その実現のために本学の特質をどう活かすかということがあります。国立大学法人という枠の中で、動かせないこと、横並びでやらねばならないことはあるでしょう。しかし、そのなかでも、本学の特質は何か、「小さいことがいいことだ」と言えるようなことは何かを考え、実現させていくことが必要です。

 

本年の課題には、上に述べた本質的なもの以外にも、融合研究棟の運用開始、2011年度での創立20周年事業などの問題もあります。これらについては、またの機会に述べることにしたいと思います。

 

本学は創立以来、国立大学・国立大学法人としての役割を十分果たし、その存在感を高めてきました。だからこれからも本学が必要なのだという論理ではなく、これからの日本の高等教育システムの中で、本学が必要だから存在すべきだという論理を使いたい。そのためには、これからが今までの単なる継続ではなく、いまは、新たな目標に向かってのスタートラインであるという必要があります。この考え方は、既に述べたように、本学での色々な事業にも同じようにいえることで、予算逼迫の中、やってきたことの単なる継続というのではなく、本学の目標達成のため必要とする事業ができるような、体系や予算配分を考えないといけないでしょう。つまり「ある」から「いる」のではなく、「いる」から「ある」という考え方をしていきたい。あらためて、本学の新たな目標とは何なのか。それを皆さんで共有したい。皆さんのご協力をお願いしたい。

 


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