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学長通信 No.4
学長通信No.4(2010年1月14日)
融合領域推進プロジェクトとポスト第3期科学技術基本計画について
年明け早々の1月7日に、標記プロジェクトの発表会が行われた。この融合領域推進プロジェクトは、前安田國雄学長時代に構想され、開始されたものであり、計画研究を学内で公募し、役員等で審査した上で、一定の研究費を数年間補助することにしたものである。その基本認識は、これからの本学の研究教育の方向を考えるとき、研究科に分かれて実施される研究だけではなく、3つの研究科間の融合領域あるいは、融合的な課題を推進していくことが必要である、というものであった。その立ちあげを目指すプロジェクトの選考にあたっての基準は、次のようなものであった。
(1)融合領域研究が推進される又は融合領域研究に発展する可能性があること。
(2)先導的・独創的な基礎研究であって、知的財産の形成に貢献する可能性があること。
(3)本プロジェクトを通じて、若手研究者にPI能力が涵養されること。
(4)本学における融合領域教育研究拠点の中心的役割を果たすことが期待できること。
(5)本プロジェクトを基に、外部資金・競争的資金を獲得する可能性があること。
各研究科から、9件の計画研究の応募があり、3件が採択された。そして、この5年間に、これらのプロジェクトに、大学の重点戦略経費から、総額2億4千万円ほどが支援されてきた。当時、私自身は、研究担当の副学長であったことから、審査にも立ち会い、発足時の事情も承知している。
今回の報告会はこのプロジェクトも本年度で終了することになったので、本年度5年目の研究費を支援した2つのプロジェクトについて、その成果を発表することにしたものである。1つのプロジェクトは、「計測」という共通のキーワードで、情報、バイオ、物質の3つの研究科の教員で構成されたプロジェクトで、内容的には3つの課題があった。また、2つめのプロジェクトは、システムバイオロジーの立場から、情報生命の研究者とバイオの研究者の共同研究であった。これらはいずれも、対象とする現象は生物現象であり、それを理解するために、計測や予測のシステムを考案し、それらの情報をどうとりまとめるかという観点での共同研究、あるいは融合領域研究であると言える。それぞれのプロジェクトは、総体的にいえば、本学での新しい領域を作ってきたと言える。特に、生物現象を見るための新しい計測方法の開発と、それを活用して得られた成果には、世界で初めて見ることができたものなどを含め、見るべきものがある。また、これらの研究の過程で、多くの外部資金が獲得されてきたが、それは、本プロジェクトの目的の一つであったことから、大学の資金が上手く活用されたということができる。一方、連携が必ずしも十分には機能しなかったように思えるテーマもあった。こうした課題は、今後どういう体制で融合領域研究を行っていけばいいのかという検証に十分役立てて欲しい。
共同研究の場合、一般的には、お互いの目的(目指すところ)が一致していることが、重要なポイントであり、どちらかがどちらかに従属しているようなものは余りうまくはいかない。また、同時に、お互いが、ただ相手を手伝っているという印象を持っている場合もうまくはいかないであろう。
今回聞いた話は生物現象の理解が最終目標であり、そのために、新たな方法を開発することが一つの鍵となる研究が多かった。また、その方法の開発自体が、研究としてすぐれたものであることも特徴であり、その有用性は、該当する生物現象の理解以外にも汎用性のあるものであった。こうした研究の場合、更に発展することが期待され、融合領域研究として成功したものということができる。一方、例えば、新しい計測システムを既に持っており、それをどう活用していけば、その有用性を更に示すことができるかという観点からの生物現象研究というプロジェクトも、同じように成立しうるであろう。いずれの場合も、本学のように、見えるところに共通の課題に一緒に挑戦できる研究者が存在し、それぞれが、お互いの存在とお互いの興味を知っていることが、こうした研究を展開していく上での最初のきっかけになるはずである。そうした意味では、研究者の日常的な交流が必要であり、それを目指したものが、全学研究懇話会と言うものであった。今回のテーマは、その意味で、本学の特色を活かした取り組みであったということができる。こうしたプロジェクトを推進すべきだと発案した、安田國雄前学長の見識に改めて敬意を表したい。また、発展性という意味では、今回の研究のいくつかは、実質的に継続していくことから、今後いっそうの展開を期待したい。
ところで、第3期科学技術基本計画では、政策的に支援すべき重要な政策課題について、重点4分野として、IT、バイオ、ナノテク、環境が取り上げられてきた。一方、科学技術・学術審議会のポスト第3期科学技術基本計画に関する中間答申(09.12.25)では、第3期までの「科学技術」から、ポスト第3期では「科学技術・イノベーション」というのが基本計画のキャッチフレーズであり、また、その基本政策には、「基礎科学力の強化」と上記の「重要な政策課題への対応」が並記されている。その後者について、第3期におけるような「分野での重点化」という考え方は踏襲せず、我が国の国のあり方に基礎を置いた重点政策課題を設定し、その課題毎に重点開発領域や研究開発課題が導き出されるという方針が提示され、具体的には、(1)質の高い国民生活の実現、(2)国際的優位性の保持、(3)地球規模の問題解決の先導、(4)未知・未踏領域への挑戦が示され、重要な政策課題が例示されている。また、民主党政権の新成長戦略(09.12.30閣議決定)では、グリーンイノベーションによる環境・エネルギー大国戦略、ライフ・イノベーションによる健康大国戦略が二本柱である。
本学は、これまで、「重点4分野のうちの3つの分野について研究教育を行う大学院大学である」ことを謳い文句としてきた。おそらく、今後はこうした主張は成立しなくなる。そこで、本学がこれから、どういう分野(当然、3研究科の専門分野ばかりではなく、今回のような融合分野を含めて)で研究教育を展開して基礎科学力を高めつつ、そのなかで、どういう重要な政策課題について貢献していこうとするのかは、改めて、本学の方向性を考える上で、検討していかなければいけないであろう。その両輪が上手く回ったとき、本学の機能をもっとも良く発揮できることになる。また、そのなかで、本学の特徴を示しうる新たなキャッチフレーズが示すことができるのかもしれない。これからの本学の組織論、人事政策に大きな影響を与える問題である。多くの人に考えて欲しいことではある。