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学長からのメッセージ

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学長通信 No.43

学長通信No.43(2012年1月5日)

平成24年度政府予算案と本学の予算について


暮れの24日、平成24年度予算の政府原案が発表された。その内容などを紹介し、本学の来年度予算や、本学が注目していかなければいけないことなどについて書いておきたい。

24年度予算では、増える社会保障費増額分をどうひねり出すかが一つの焦点であった。そのため、各省庁は要求額と要望枠(日本再生重点化措置枠)および復旧・復興対策枠(復興特別会計)という形で概算要求を提出した。文部科学省からの要望枠には、大学関係の予算としては科研費の基金化の拡大、アカデミック・パイオニア事業(G-COE 終了プログラムへのRA経費の支援) 、IT実践教育中核拠点整備事業、給付型奨学金の創設、博士課程リーディングプログラムの拡充など、多くのものが含まれており、予算化が期待された。

こうして出てきた各省庁の要望枠の合計は約2兆円であったが、それを予算化する財源は7,000億円とされた。平成23年度予算の編成にあたっては、こうした要望枠の順位付けにパブコメという政策がとられ、その結果として、文部科学省関係の予算に対する支持が強く、大学関係の予算が大幅に認められることになったことは記憶に新しいところである。しかし、24年度予算の編成にあたっての優先順位付けは、パブコメはやめて、新たに設置された「予算編成に関する政府・与党会議」において政策的に決定するということになり、昨年とは違う様相を示した。

12月初旬に開催された当該会議では、要望枠として提案されていた課題から優先・重点事項が選抜された。その結果、文部科学省予算として要望枠に取り上げられたのは、大学の運営費交付金などを含む「教育研究基盤強化」、宇宙と海洋関係の事業だけであり、人材育成をはじめ多くの新規予算は選抜されず、文部科学省の要望枠全体の25%程度しか採用されていなかった。この選抜によって約2兆円の要望枠はその半分の約1兆円に絞られたが、それでも予定額の7,000億円にはまだ絞り込みを行う必要があった。それに加え、奨学金などは優先・重点課題に準ずるものという位置付けとなり、それにも一定の予算が必要なはずであった。こうしたことから、大学関係の予算は相当厳しくなるのではないかと心配した。

その後12月19日に、財務大臣と文部科学大臣との大臣折衝が行われ、国立大学法人の運営費交付金と奨学金の問題について、一定の結論が出た。奨学金については、給付型奨学金の新設の要求(要望)に対して、無利子奨学金の枠を増やすとともに、いわゆる「出世払い方式」の奨学金制度を新設することで決着した。また、我々にとって最も重要な国立大学法人の運営費交付金については、ほぼ昨年程度を確保するとともに、新たに国立大学改革強化推進事業のための予算138億円を新設することで合意された。この大臣折衝の確認事項として、この新規予算は「具体的な国立大学改革の方針については、別紙の基本的な考え方に基づき、文部科学省内に設置したタスクフォースにおいて検討を行い、協議の上、速やかに改革に着手する」とされ、「今後の国立大学の改革について(基本的考え方)」として、次のような別紙が示された。ここでは大学改革の必要性、国立大学の役割についてまず述べられ、続いて次のような文章がある。

「このため、大学の枠組みを超えてオール・ジャパンの視点から、有機的な連携協力を展開出来るよう、大学間のネットワークである「大学群」の創出など連携協力システムの構築に取り組むとともに、個々の大学においては、個性や使命の明確化を図り、学部など学内の教育研究組織の大規模な再編成、外国人や実務家等の教員や役員への登用拡大など人材交流の促進などにより、知の競争力の向上に努めることが重要である。

こうした施策を効果的に推進するためには、必要な財政措置の確保に加え、「大学群」のスケールや求められる機能、大学間の連携協力促進のための支援方策、それらを踏まえた多様な制度的選択肢の考え方(例えば、一法人複数大学方式(アンブレラ方式))、国立大学運営費交付金の配分基準などについての更なる整理が必要である」。

このことは今後の国立大学法人の運営にあたって、国の立場として一つの方向付けをしたことになると考える必要があろう。予算の問題としては、この時点で、運営費交付金が大幅に減少する可能性については低くなったように思われた。しかしその他の諸々の予算については、やはりどうなるか心配であった。

そして、12月24日、24年度予算の政府案が発表された。それによると、最大の問題であった社会保障費の増額分などの財源(約2.6兆円)については、収入の見込みが当年度は無いが、将来の消費税などの収入を当てにした交付国債という新手の別枠予算で処理したため、結果的に要望枠の財源が増えた。これは、昨年のパブコメ政策以上の驚きではあった。こうして、各省庁の予算は、大枠ではほぼ昨年に準じたものとなった。文部科学省の要求・要望で部分的には配分されていないものがあるが、基本的に日本再生重点化措置枠でかなりの部分が採用されることになり、その結果、文部科学省予算全体では約2.3%減にとどまった(これは復興特別会計予算を含めれば、プラスに転じることになる)。


本学への予算としては、概算要求時から見ると、特別運営費交付金(概算要求したプロジェクトもの)が各項目とも10%程度削減された以外は大きな変更はない。そして、23年度に比べ、授業料免除枠分が23年度は、4,554万円であったものが5,304万円と、修士課程の免除枠増もあわせて増加している。この結果、本学の24年度予算は約62億円で、実質的には昨年に比べ約6,000万円(約1%)減にとどまっている。そのうち特別運営費交付金(プロジェクト分)が1,900万円減なので、大学本部への交付金は約4,000万円の減ということになる。こうしたことから、24年度についても、予算上は大学運営に大きな支障が生じることへの心配はしなくても良いのかもしれない。ただ、本年度まで補助金を使って行っていた事業などの継続性をどうするかは大きな課題であり、今後に向けての本学の方向性や機能についての基本的な考え方を整理した上で、決めていかなければいけない。


ここで、文部科学省の全体予算で大学関係あるいは本学に関わりのある部分についてまとめておく。「 」内は、文部科学省の説明資料からの文章である。

1.奨学金:所得連動返済型(出世払い方式)の無利子奨学制度の新設を含め貸与人員を127万2千人から、133万9千人に増加。

2.授業料免除枠:学部及び大学院修士課程に係る授業料免除率を7.3%から8.3%に引き上げ。また新規に、卓越した学生(学部、修士課程及び専門職大学院)に対する授業料免除枠が新設され、学生数に応じて配分。本学には1名分の枠が措置された。

3.教育研究力強化基盤整備費:23年度は「大学教育研究特別整備事業費」として58億円が措置され、本学も物質創成科学研究科の機器整備に予算配分を受けたが、これが24年度は事業を見直した上で43億円となっている。「今年度の大学教育研究特別整備費を見直し、新たな社会ニーズに対応した教育研究組織の整備等を行う大学に対し、教育研究基盤の整備に対する重点的支援を行うことで、教育研究力の強化を支援」とされている。

4.国立大学改革強化推進事業(新規):138億円。これは、先に経緯を書いたように、財務大臣と文部科学大臣との大臣折衝の結果措置された予算であり、今後その内容は文部科学省で詰めていく予定となっている。

5.博士課程教育リーディングプログラム:23年度は17件分の予算で、24年度は46件を予定した概算要求であったが、措置されたものは、新規分17件を含め34件分、116億円である。内容としては、新規分はオールラウンド型2件、複合領域型10件、オンリーワン型5件、と今年と同数である。複合領域型の募集分野については、まだ不明である。

6.卓越した大学院拠点形成支援補助金(新規):概算要求では、拠点形成支援事業としてアカデミック・パイオニア養成支援事業(70億円)が入っていたが、これはそれが変わったものかもしれない。本事業に80億円が措置されている。「卓越した大学院の教育研究拠点に対し、博士課程学生が研究に専念出来る環境を整備するために必要な経費を支援し、優秀な学生を惹きつけ、世界で活躍できる研究者を輩出するシステムを構築する」とされている。もしこれが想定したようなものであるとすると、G-COEの終了拠点に対するRA経費などの支援が中心になると思われる。内容の詳細な説明を待ちたい。ただし、卓越した実績に応じて毎年配分する大学や金額を見直すもので、これまでのCOE(公募型、5年)とは全く違うものであるとのことである。

7.情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業(新規):概算要求では10億円であったが、6億円と減じられたものの予算化されている。修士課程の学生が対象。「情報技術を活用して社会の具体的な課題を解決できる人材を育成するため、大学や産業界による全国的なネットワークを形成し、実際の課題に基づく課題解決型学習等の実践的な教育を推進する」とある。

8.大学間連携共同教育推進事業(新規):30億円(45件)。対象が学部なのか大学院も入るのかは不明。「国公私の設置形態を超え、地域や分野に応じて大学が相互に連携し、社会の要請に応える共同の教育・質保障システムを構築する取組を支援する」とのことである。

9.産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業(新規):23億円(9件)。これも対象が学部か大学院か調べないといけないが、たぶん学部学生が対象である。「学生の社会的・職業的自立に向けた取組の充実を図るため、大学・短期大学がグループを形成し、地域の産業界等との連携を通じて、産業界のニーズに対応した人材を育成する取組を支援する」ということで、地域での連携による就職支援のようである。

10.大学の世界展開力強化事業:27億円(うち新規7億円、10件)。新規分は、ASEAN諸国との大学間交流形成の支援。

11.科研費:2,566億円。基盤Bおよび若手A(総額で500万円以下について)を基金化することが出来た。さらに24年度分研究費も103億円の増額を達成。これにより、新規採択分の9割が基金の対象となる。


以上、個々の予算ついて述べてきたが、特徴的なことは、先にあげた別紙の「今後の国立大学の改革について(基本的考え方)」に書かれていることが、それぞれの予算の目的でもあげられていることであり、特に組織活動への競争的な支援経費には、ほとんど連携などのキーワードがついている。これは、別紙にあるように、大学内部の再編成や大学間の再編成を促進するために(一法人複数大学という言葉すら入っていることに注意する必要がある)、財政的にもその方向性を支援するための予算を措置したというように理解することが必要である。今、国大協を中心に、国立大学総体としての機能強化、また、それぞれの大学の機能分化と機能強化のための方策などが議論されているが、本学としては、こうした方向にどういう姿勢で対応することが必要なのか、本学の将来構想の問題も含め、考えていく必要がある。

以上



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