ドキ★ワク先端科学
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~読売新聞寄稿連載「ドキ★ワク先端科学」から~
第22回:物質創成科学研究科 浦岡行治教授 [2015年3月17日]「壁や窓もディスプレー?」 |
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家の壁や電車の窓ガラスが映像を写すディスプレーになったら、どんなに素晴らしいでしょうか。奈良を走るリニアモーターカーの窓がディスプレーだったらと想像すると、わくわくしませんか? 我々の研究室では、そんな未来の夢を実現する半導体について研究しています。
それは、透明な半導体の一種、酸化亜鉛です。酸化亜鉛の膜を重ねて作る部品が、ディスプレーに映像などを表示する際、電気を流したり止めたりするスイッチになります。この膜には、これまでの半導体にはない魅力的な性質がたくさんあります。
シリコンなど従来の半導体より低温でできるので、高温だと溶けてしまうプラスチックフィルム上にも作ることができ、そのフィルムをそのままディスプレーとして使うことができます。
また、例えば、皆さんが持っているインクジェットプリンターのインクを酸化亜鉛に変えれば、技術的には作ることも可能です。
さらに、電気抵抗が小さいので電流を流した時の反応が速く、可視光が素通りするので透明です。これらの性質を組み合わせて使うと、これまでにはなかった曲げたり伸ばしたりできる柔軟なディスプレーが誕生します。
研究室では、多くの博士課程の学生が「どうしたら、ガラスやプラスチックフィルムの上に膜をうまく重ねることができるか」「長期間使っても、性能が落ちないようにするには、どうすればいいか」などと、それぞれの課題に取り組んでいます。基礎から応用まで幅広くカバーしていて、この分野の発展を牽引していると自負しています。
最近では、透明ディスプレーだけでなく、透明半導体を導入したコンピューターや太陽電池、センサー、そして排熱を電気に変える省エネタイプの熱電変換シートなどにも手を広げています。研究室には設備が企業の半導体研究所並みに完備されているので、海外からも多数の留学生が意欲を持って訪れ、研究しています。
その成果を実用化するために、企業と共同研究を行い、夢をかなえる電気製品づくりを目指しています。