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ドキ★ワク先端科学

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~読売新聞寄稿連載「ドキ★ワク先端科学」から~

第29回:バイオサイエンス研究科 伊東広教授 [2015年9月15日]

「生物支える細胞のアンテナ」

伊東広教授

 

夏の間にトンボやセミなど多くの虫たちに出会ったことでしょう。身の回りにいる生き物も私たちの身体も、たくさんの細胞が集まって形作られています。

では、どうやって生き物が一つの個体を形成し、命を育んでいるのでしょう。カギとなるのが、細胞と細胞が互いに行うシグナル(情報)のやり取りです。

例えば、ホルモンや神経伝達物質といった、シグナルになる物質がバランスよく働くことで、身体が安定した状態を保つことができます。また、光や匂い、味など外界のシグナルを的確に受け取ることは、生きていくため、そして生活を豊かにするために重要です。

細胞の外からやってくるシグナルを受け取るのが、細胞の膜を貫く「Gタンパク質共役(きょうやく)受容体」と呼ばれる分子で、アンテナのような役割をしています。さらに、同受容体から出たシグナルは、「Gタンパク質」という分子によって細胞の中へ伝わります。そうなることで、心臓の拍動や神経活動の変化など様々な応答が引き起こされるのです。

例えば、ヒトは約1000種類の同受容体を持っていて、そのうち約400種類が匂いに関わる「嗅覚受容体」です。最近、ゾウがヒトより多い、2000種類近い嗅覚受容体を持っていることがわかりました。

一方、ネズミ、ヒト、トリは異なる波長の光(色)を認識する光受容体をそれぞれ3種類、4種類、6種類持っており、暗闇で過ごすネズミよりトリの方が、高い色覚能力を持っていることがわかります。生物が環境に適応して生きていくために、受容体の数が変わってくるのですね。

現在、世界中で使用されている薬剤の30%は、Gタンパク質共役受容体に対して働きかけるように作られています。しかし、実は、どのようなシグナルを受け取るのか分かっていない受容体は、100種類以上も残っています。

私たちの研究室では、このような受容体を調べるために、Gタンパク質共役受容体に働きかける「抗体」を作りました。調べる過程で、抗体が受容体に働きかけることで、受容体がシグナル伝達を調整し、結果的にある種のがん細胞の働きを抑える効果が得られたのです。

世界の60か国以上で研究用としてこの抗体が使えるように話が進んでいます。将来的にがんの転移や増殖などを抑える薬剤の開発につながるかもしれません。今後も、こうした薬剤の開発から目が離せません。


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