ドキ★ワク先端科学
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~読売新聞寄稿連載「ドキ★ワク先端科学」から~
第34回:物質創成科学研究科 中村雅一教授 [2016年2月16日]「熱を変換 発電する布」 |
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電気をおこす方法と聞いて、すぐに思い浮かべられる仕組みは、発電機を回す蒸気タービン、太陽電池、乾電池などでしょう。これらは、様々なエネルギーを電気エネルギーに変えています。
それでは、熱を直接、電気エネルギーに変える方法はご存じでしょうか。その筆頭は、ゼーベック効果という現象を使う「熱電変換」です。2種類の金属の両端をつないで輪にしたとき、一方の端を暖めると電流が流れるという現象で、トーマス・ゼーベック氏によって発見されたことから、名付けられました。200年近く前のことです。それだけ長い歴史があるわりには、電気をおこす方法として熱電変換は普及していません。他の発電の方法に比べて効率が低く、材料などにかかる費用のわりには出力が大きくないことが理由です。それでも究極のエネルギー利用が求められる惑星探査機などでは使われています。
この熱電変換が最近、注目を集めています。近い将来、現実の世界の様々な情報が、インターネットの世界に送られる時代が来るでしょう。その際、ごく小さなセンサー回路が、体や建物などのいたるところに取り付けられるようになります。そうした回路を動かすには、その場その場でエネルギーを集めて電気に変える仕組みが必要になるのです。
私たちの研究室では、軽くて曲げ伸ばしができる新しい材料を使って、熱を電気に変える仕組みを作り出す研究を行っています。既に研究室レベルでは、手で軽く触れるだけで、体温によって電気をおこすことができる「発電する布」ができあがっています。これが実用化すれば、「発電する服」ができ、かさばる電池などを持ち運ばなくてもよくなります。例えば、入院中の患者さんの体温や脈拍などをナースセンターに送るセンサー回路を、電池なしで24時間、安定して動かすことができるようになります。性能の向上とともに、まだ想像すらできない新たな分野への活用も期待できそうです。