読売新聞寄稿連載「ドキ★ワク先端科学」から~

第36回:情報科学研究科 荒川豊准教授 [2016年4月19日]arakawa.png
「行動を予測 未来の住宅」


arakawa2.png
奈良先端大のスマートホーム実験室(上)と設置されている各センサー

私たちの住まいは、耐震性が増したり、断熱性や通気性が良くなったり、日々進化しています。そして、最近では、センサーや人工知能などの情報技術を駆使した「スマートホーム」と呼ばれる未来型の住宅の研究が進んでいます。

奈良先端大の中には、スマートホーム実験室を設けています。この実験室では、天井から壁、コンセントに至るまであらゆる場所にセンサーを取りつけています。センサーは、私たちが住む世界の変化を捉える装置です。

ドアの開閉や、電力、湿度、光、音、位置などの変化に関するデータによって様々なタイプがあります。このようなセンサーに囲まれた家でどんな実験をして、どんな未来を目指しているのか、紹介しましょう。

この家の基本概念は「住人をおもてなしする」ということです。お風呂に入りたいな、と思ったら既にお湯が満たされていたり、見たいテレビが勝手についていたり。また、寝ようとし

たら明かりが自然に消える、寝苦しかったら自動的に冷房がつくなど、住人の思いを先取りする快適な家を目指しています。

このような家を実現するためには、まずは住んでいる人の習慣や癖を理解しなければなりません。そのため、多数のセンサーを取り付け、住人がどういう状況でどういった行動をとるのかを把握するのです。この際に重要になってくるのが人工知能の一種である「機能学習」というものです。機能学習とは、住人の行動に対して反応したセンサーの値を繰り返し学習していくことで、次に同じような反応があった時の行動パターンを予測できるようにすることです。

例えば、皆さんが帰宅したら真っ先にテレビをつける、という生活習慣がある場合、未来の家では、ドアのセンサーで帰宅を検知し、足音からあなたを判別し、リビングに着く頃には好みのチャンネルに合わせたテレビがついている――。このような用意周到な能力を発揮します。スマートホーム実験室の研究では、電力の使用状況を学習するだけでも、住人の行動を80%程度、判別できることが分かりました。

今後は、この判別精度を改善していき、未来の行動を予測できるようにしていきたいと思います。同時に、より安価で高性能なセンサーを開発し、皆さんの家庭に普及できるようにしたいと考えています。