読売新聞寄稿連載「ドキ★ワク先端科学」から~

第37回:物質創成科学研究科 柳田健之教授〔2016年5月17日〕
「蛍光体 電子の変化で発光」

柳田教授

 「蛍光」という言葉から、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。一番身近なのは蛍光ペンなどの文具かもしれませんし、蛍光灯のような照明器具かもしれません。これらは全て「蛍光体」と呼ばれる物質がもとになっています。

 蛍光体について、少し専門的な説明をしましょう。

 あらゆる物質は、様々な元素の組み合わせでできています。元素そのものは、陽子と中性子が集まった原子核と、その周囲を飛ぶ電子からできています。蛍光体という物質は、何らかのエネルギーを与えると電子にわずかな変化が生じ、それが光を発するのです。

 例えば室内灯の場合、発電所からの電気エネルギーを蛍光体物質に与え、光を発生させていることになります。よりよい元素の組み合わせを見つければ、省エネルギーで明るい照明を実現できるというわけです。

 物質には、大きく分けて無機物と有機物があり、蛍光体もこれら二つに分類されます。室内灯などの照明器具には無機蛍光体が利用されていて、私たちは、このタイプの蛍光体の研究をしています。

 特に力を注いでいるのは、目に見えない放射線を当てると発光する「シンチレーター」「ドシメーター(線量計)」という蛍光体です。レントゲン撮影のような医療用や、空港での手荷物検査機などに用いられています。放射線を計測して、人体や荷物の透過像を得るために、放射線用の無機蛍光体が役立ちます。蛍光体が、目に見えない物体の内部を映し出す役割を果たしているのです。

 私たちが研究開発している蛍光体は、電子顕微鏡のスクリーンや、乳がんの診断装置などにも使われています。元素の組み合わせによって、様々な色の光や、より強い光を放つ蛍光体を開発すべく、日夜、研究を行っています。

柳田教授
  • エネルギーを物質に与えた際に、電子のわずかな変化によって光を発する蛍光体の原理

柳田教授
  • 様々な蛍光体。非常口やX線CTなどに使われている