読売新聞寄稿連載「ドキ★ワク先端科学」から~

第45回:情報科学研究科 松本健一教授〔2017年2月21日〕
「変わるソフトウェア作り」

松本健一教授
松本健一教授

 ソフトウェアとは、コンピューターに計算や処理を行わせるために必要な情報が書かれている文書の総称です。スマホのアプリもその一つ。家電製品や自動車、駅の自動改札、電子マネーなど身の回りの様々な装置やシステムには、それぞれソフトウェアが組み込まれていて、目に見える形で、また、見えないところで私たちの生活を支えています。

 大活躍のソフトウェアですが、実は今、その作り手の多くが「どんなソフトウェアを、どのように作ればよいかわからない」という大きな壁に直面しています。

 そもそものソフトウェア作りは、人間や機械が行っていた計算や処理を「ソフトウェアで置き換える」というだけのものでした。しかし、ソフトウェアが広く社会に行き渡った今日では、それらをより便利にし、さらに、新しいアイデアや仕組みを実現することへと、ソフトウェア作りの目的が変化してきています。これは簡単なことではありません。

 そこで最近注目されているのが、ソフトウェアの作り手が抱えている課題を、作り手仲間や社会全体で共有すること。課題の解決に向けたアイデアをみんなで提案し合い、優れたものを選び、それらをどんどん積み重ねてソフトウェアを作るのです。言わば「三人寄れば文殊の知恵」作戦です。

 しかし、優れた提案を選ぶということは、裏を返せば、せっかく集まった提案の大半を捨ててしまうことにもなりかねません。そんな乱暴な方法が広く受け入れられ、経済的に見合って長く続くかどうかは、まだわかりません。

 私たちの研究室が取り組んでいるのは、変化しつつあるソフトウェア作りを末永く支える技術基盤を確立すること。ソフトウェア作りに関する膨大なデータと、学生たちのユニークな発想に基づいて研究を進めています。

図1
ソフトウェアを都市に見立てて可視化するシステム「HEIZO」。プログラムがファイルごとにビルとして表示され、バグなど問題のある箇所から炎が上がっています。

 例えば、ソフトウェアの全体像やその課題を分かりやすく表示(可視化)して共有するシステムをつくり、「三人寄れば文殊の知恵」作戦を、よりスムーズに展開できるよう、奮闘しています。

 人工知能(AI)がソフトウェアを作る日が来るのは、もう少し先でしょう。その前に、作り手が人であれAIであれ、生み出されたアイデアやソフトウェアを最大限に活用するための研究開発が、これからますます重要になると考えています。