読売新聞寄稿連載「ドキ★ワク先端科学」から~

第55回:情報科学研究科 伊藤実教授  〔2017年12月20日〕
「車同士の通信で渋滞緩和」

伊藤実教授
伊藤実教授

 自動料金収受システム(ETC)の登場で、高速道路は停止せずに料金支払いができるようになりました。料金所のサーバーと車の間でデータをやり取りする、無線通信によって実現したシステムです

 車同士で通信する「車車間通信」や、道路などに設置したサーバーから車に情報を送る「路車間通信」の応用が進んでいます。この先、どんなことができるのでしょうか?

 警察庁の統計によると、交通事故の約4割は交差点付近で起きており、歩行者や二輪車が絡む重大な事故も多く発生しています。

 この交差点事故を減らすため、「車車間通信」の利用を考えてみます。車同士でドライブレコーダーの映像データを交換し、交差点を真上から見た鳥瞰(ちょうかん)映像を合成するのです。運転手側の死角が減り、事故防止に役立つでしょう。

 このアイデアは、カーナビ内のコンピューターで十分、実現可能です。実際には無線で送信できるデータ量に制限があり、右折など死角の多い車を優先する仕組みが必要ですが、交差点に固定カメラを設ける必要がなく、費用の面で優れています。

 次に、ショッピングセンターの駐車場でよく見かけるゲート前や敷地内での渋滞を考えてみましょう。満車でないのにこのような状態になるのには、いくつかの理由があります。

 入店に便利な場所に駐車が集中しがちであったり、空きスペースに着くまでに他の車が駐車してしまったり。そもそもどこが「空き」なのか見つけるのが困難なことも挙げられます。

 解決策として、費用があまりかからない駐車場ナビゲーションを紹介します。

 まず、出入りする車からの信号によって、サーバーがエリアごとの駐車可能な台数を見積もり、入場する車に情報を送ります。

 データをもとに、それぞれの車で待ち時間が短い経路を計算し、運転手に提示。いくつかの候補からランダムに選ぶことで、他の車と経路が重なりにくくします。

 解析の結果、待ち時間を最大で約70%減らせることが分かりました。また、データを受信できる車が全体のわずか10%でも、平均で約20%待ち時間を減らすことができ、この手法が有効であると確認できました。

図1車同士のデータ交換によって鳥瞰映像を合成し、交通事故の防止に役立てるイメージ図

 研究室では、観光ナビゲーションや、信号機の制御で渋滞を改善する手法の開発も行っています。技術の実用化に必要な規格化も国内外で進められており、より安全で便利な車社会の実現が近づいています。