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コラム
タイトル:教育者・研究者にとっての仕事の効率化 ― 情熱と時間のはざまで思うこと
著者:物質創成科学研究科 バイオメティック科学 菊池純一 教授
 先日、企業で働いているある友人から聞いた。社内での昇進試験において、「仕事の効率化」というお題は小論文のテーマでよく登場するようだ。どのような工夫をすれば仕事の効率がアップするかを論理的に述べることを出題者は期待しているのであろうか。以下に私の意見を述べるが、結論は、「教育者・研究者たる者、仕事の効率化など考えるべきではない」である。
 私の本務は教育と研究であると認識している。それに加えて様々な事務処理の仕事、いわゆる雑用を要求される。雑用といえども、もちろん、重要な仕事もある。しかし、形式にとらわれてだれかを満足させるための無駄な仕事もかなりある。仕事の効率化には、まず、部下に無駄な仕事を与えない上司の資質が問われることになる。仕事の内容によっては、効率化を工夫することは重要である。しかし、学生の教育に関して言えば、時間をかければかけるほど教育効果は上がる。もちろん、当事者に教育に対する情熱があるのは当然のこととして。研究においても然りである。サラリーマン的精神で研究をしている研究者は世の中に多いが、所詮、二番煎じの研究しかできない。
 何年か前、あるベンチャー企業をオリジナルな製品開発で世界が一目置く中堅企業に育て上げた立役者の一人である技術者の仕事を間近で拝見するチャンスを得た。私よりもかなり年上のこの方は、当時は第一線を退いておられたが、仕事の話をするときの目の輝きは少年のようだった。独創的な発想で新しい測定装置の開発研究に取り組み、オペレーションプログラムの開発から装置の設計そして組み立てまでを一人でこなし、測定感度向上のために来る日も来る日も光学レンズを磨きつづけておられた。技術者としての妥協を許さない強い意志が伝わってきた。このような人達が現在の技術立国日本を創ってきたのであろう。私は、この方から研究者・技術者とはどうあるべきかを改めて学んだ。「先生、仕事の効率化なんて考えたらあきまへんで」という声が聞こえてくるような気がする。

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