奈良先端科学技術大学院大学 動物細胞工学研究室(河野研)

Research

センサータンパク質が小胞体ストレスを感知する仕組み

木俣 行雄

小胞体ストレス応答にて、ストレスのセンサーであると考えられているのがIre1です。Ire1は酵母から高等真核生物に保存された膜貫通タンパク質であ り、小胞体膜に分布しており、小胞体ストレスに応じて活性化します。Ire1の活性化は、小胞体分子シャペロンや異常タンパク質分解因子の発現を誘導し、 その結果、変性タンパク質は処理され、ストレス状態は緩和されます。私たちは、小胞体ストレスに応じて酵母Ire1が活性化する際に、大きな集合体を作る ことを見いだしました(図1、論文1)。

では、Ire1はどのようにして小胞体ストレスを感知して大きな集合体を作り、活性化に至るのでしょうか?
私たちの研究により、小胞体分子シャペロンBiPがIre1に結合しており、小胞体ストレスにより離れることが分かりました(文献2)。BiPが離れる原 因は不明ですが、小胞体ストレスにより生じた変性タンパク質がBiPに結合するためかもしれません(文献3)。BiP結合部位を欠くIre1変異体は常に 集合していることから、BiPが離れることがIre1の集合につながると考えられます(図2,ステップ1;文献1)。しかし、BiPが解離することや集合 することが、Ire1の活性化にすぐにはつながりません。BiP結合部位を欠くIre1変異体は、常に集合していますが、常に活性化しているわけでは無い のです(文献1,4,5)。私たちは、Ire1集合体に変性タンパク質が直接的に結合することにより、Ire1は完全に活性化すると考えています(図2, ステップ2;文献1)。このような2段階制御は応答の正確性、すなわち「小胞体ストレスに対してのみIre1が活性化する」ことを保証しているのです(文 献4)。
ire1 図1 小胞体ストレスに応じたIre1の局在変化と活性化
出芽酵母細胞を蛍光抗体染色し、Ire1の細胞内局在を調べた。写真は酵母細胞で、Ire1の存在場所が緑色に光っている。ストレスが無い細胞では Ire1は小胞体全体に拡がっており、小胞体そのものの形が見える。細胞に小胞体ストレスを与えると、Ire1が集合し、ドット状に見えるようになる。

activation 図2 Ire1の2段階活性化モデル
変性タンパク質の蓄積は、Ire1からのBiPの解離とIre1の集合(ステップ1)、および変性タンパク質のIre1への直接的相互作用(ステップ2)をもたらし、Ire1は完全に活性化する。

文献

1. Kimata Y, Ishiwata-Kimata Y, Ito T, Hirata A, Suzuki T, Oikawa D, Takeuchi M, Kohno K (2007) “Two regulatory steps of ER-stress sensor Ire1 involving its cluster formation and interaction with unfolded proteins.” J. Cell Biol. Vol.179, 75-86.

2. Okamura K, Kimata Y, Higashio H, Tsuru A, Kohno K (2000) “Dissociation of Kar2p/BiP from an endoplasmic reticulum sensory molecule, Ire1p, triggers unfolded protein response in yeast.” Biochem. Biophys. Res. Commun. Vol.279, 445-450.

3. Kimata Y, Kimata YI, Shimizu Y, Abe H, Farcasanu IC, Takeuchi M, Rose MD, Kohno K (2003) “Genetic evidence for a role of BiP/Kar2 that regulates Ire1 in response to accumulation of unfolded proteins.” Mol. Biol. Cell Vol.14, 2559-2569.

4. Kimata Y, Oikawa D, Shimizu Y, Ishiwata-Kimata Y, Kohno, K (2004) “A role for BiP as an adjustor for the endoplasmic reticulum stress-sensing protein Ire1.” J. Cell Biol. Vol.167, 445-456.

5. Oikawa D, Kimata Y, Kohno K (2007) “Self-association and BiP dissociation are not sufficient for activation of the ER stress sensor Ire1.” J. Cell Sci. Vol.120, 1681-1688.

奈良先端科学技術大学院大学
研究推進機構 特別プロジェクトグループ
河野特任研究プロジェクト(旧:動物細胞工学研究室)