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Ⅰ 肩の関節はどのようになっているのでしょうか
Ⅱ いわゆる五十肩とはどのようにして起るのでしょうか
Ⅲ 五十肩の症状にはどんなものがあるのでしょうか
Ⅳ 五十肩になったらどうすればよいでしょう
Ⅴ 五十肩にならないようにするために


四十肩、五十肩(肩関節周囲炎)

保健管理センター所長 上田 尚彦


  肩が痛い、腕が上がらない-------。五十肩は50歳前後になると肩が痛み、肩の関節の動きが悪くなる症状をいいます。五十肩を経験すると、自分のからだが老化してきていることを思い知らされますが、肩の運動をこまめに続けていれば予防できるものです。

 

Ⅰ 肩の関節はどのようになっているのでしょうか
   肩とは、人および哺乳類で、腕(上肢)、 前足まえあし(前肢)、翼と胴体(体幹たいかん)に接している部分のことです。一般にボール状の球関節の構造を持って回転、旋回などの複雑な動作が可能で、多くの筋肉から構成され強い力を出すことができます。二本足で立つようになった人間でも上肢を広く動かせるように進化し、肩関節は人体の関節の中で最も動く範囲が広い関節なのです。そのため、かなり複雑な仕組みになっています。
  肩の仕組みは、肩関節を中心に、くびに重い腕がぶらさがっている状態と考えてください。
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  • 上肢は肩甲骨けんこうこつ(肩胛骨)につながっており、肩甲骨は肋骨の上にのっかっている。
  • しかし、胴体の骨としてのつながりは胸骨とつながっている鎖骨さこつのみで、肋骨の上に浮いている状態である。
  • 僧帽そうぼう筋をはじめとして、頚から肩甲骨に付いている筋肉が肩や腕の重みをすべて支えている。
  • したがって、肩や腕の重みはすべて頚にかかっている。
  • 上記の構造はつり橋に例えられる。
  • 人間が二本足で立ち、手を使うようになった宿命として、肩こりが起こりやすい構造になっている。
  • 動く範囲が広くなったが不安定で、脱臼だっきゅうを起こしやすい。
   肩関節は、鎖骨と胸骨を結ぶ胸鎖関節、鎖骨と肩甲骨を結ぶ肩鎖関節、上腕骨と肩甲骨を結ぶ肩甲上腕関節の3つの関節から成り立っています。ただ一般的には、その中心をなしている肩甲上腕関節を肩関節といっています。この肩関節は、上腕骨の関節頭(上腕骨頭こっとう:丸くなっているところ)と肩甲骨の関節(凹面のくぼみ)で一つの球関節を作っています。しかし、この凹面が浅いためにこの関節は不安定性があって、よく脱臼しやすいことは知られています。このため、肩甲骨から出て上腕骨に付く筋肉群(肩甲下筋・棘上きょくじょう筋・棘下きょくか筋・三角筋など)はお互いに上腕骨頭を包み込んで腱板けんばん(腱は筋肉の端にあって骨と連結する部分で、腱板とは小さな筋肉の束が集まって丈夫な腱の集合体になったもの)を作って、肩関節を守り、同時に肩関節の運動の支点の役割を果たしています。この不安定な肩関節を補強するために、腱板に加えて関節ほう滑液包かつえきほうといった特殊な構造が加わっています。肩を包むようにある関節包は骨頭の約2倍の大きさをもち、網目状に走行する何層にもなるコラーゲン線維でできており、内にある滑膜かつまく絨毛じゅうもう構造ですべすべするようになっています。筋肉の周りには滑液包があり、その中には少量の滑液を含み、筋肉と腱の動きを滑らかにする働きをしています。なお肩関節には、わきの下の腋窩えきか神経や肩甲骨の上の肩甲上神経などが支配しています。
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Ⅱ いわゆる五十肩とはどのようにして起るのでしょうか
  五十肩は、肩から腕にかけて痛み、腕の動きが制限されるのが特徴です。40歳代後半から始まって50歳代にピークをむかえ、60歳代までみられるように加齢に伴って起るものです。文字通り、老化によって肩の関節の周囲に炎症が生じることが痛みや運動障害の原因になっています(肩の老化現象)。発症する割合は全人口の2〜5%といわれています。
   誰でも知っている言葉にもかかわらず、五十肩の意味は必ずしも明確ではありません。この不明確さの原因は、この言葉が医学的な疾病を表すために作られた専門的な用語ではないからです。医学的に五十肩と同意語として、肩関節周囲炎、凍結肩frozen shoulder、デュプレイ病Duplay disease、疼痛性肩拘縮こうしゅく症、腱板炎、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、上腕二頭筋腱炎、肩峰下けんぽうか滑液包炎があります。このように五十肩には様々な見解があり、概念は一定ではありません。一般的な考えとして五十肩は、「中年以降の初老期の肩関節に起こり、肩関節周囲組織の炎症、変性を基盤として発生し、他の明らかな病因を求めることができない、疼痛と可動域制限をきたす障害で、一定期間内に自然治癒するもの」として理解されています。加齢以外に五十肩の誘因となるものには、過去に比較的大きな外傷をした場合、職業・スポーツによる使いすぎ(オーバーユース)の場合、手術後やギプス固定などの安静によるものなどがあります。ただ、肩が痛くなる病気は多々あり、五十肩といって受診される患者さんの約半分は違う病態であることは注意しなければなりません。
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  肩関節周囲炎の病因は大きく分けて、①靭帯や筋腱が骨に付着するところで起る炎症(付着部炎)、②肩を動かすときに働く腱の滑動性が悪くなって引っかかりを起し、さらにその部位に炎症が起る滑動機能障害、③肩を動かす筋肉や腱どうしの間隙で起る炎症、の3つが考えられています。あまり肩を使い過ぎていないのに炎症が起ってくるのは、筋肉や腱の老化が潜在するために炎症が起りやすい状態にあるためです。最も炎症を起しやすい部分が、肩の関節を取り巻いている回旋腱板です。回旋腱板は二つの硬い骨に挟まれているため、腕を上げ下げするたびに圧迫されて摩擦を起します。長年、このような摩擦を受け続けると、回旋腱板は次第に薄くなり、擦り減っていきます。ひどくなると亀裂が生じたり、断裂することもあります。回旋腱板に退行変性(老化)が生じますと、関節に石灰沈着を認めたり、隣接する滑液包や関節包にも負担がかかり、炎症を起すことになります。そしていったん炎症が起ると、肩を動かすたびに痛みが生じるため、肩をあまり動かさなくなってしまいます。ところが長い間肩を使わないでいると、肩関節の周囲の組織が癒着してしまい、今度動かそうとしても、動かせなくなってしまいます(変性と慢性の炎症で拘縮こうしゅく―固まって動きにくい状態―が起る)。五十肩というのは原因がはっきりしない場合をいい、回旋腱板や滑液包に石灰が沈着する石灰沈着性腱板炎のように原因が明らかになった場合は、それぞれの病名で呼ぶようになります。

 

Ⅲ 五十肩の症状にはどんなものがあるのでしょうか
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  • 急性期(炎症期 freezing phase)
  • 関節の炎症が激しく、非常に痛みが強い時期で、通常痛み始めてから1〜2ヶ月です。動かしたときの痛みのために、衣服の脱ぎ着、入浴(体や髪を洗うとき)、大便の始末、高所のものを取るときなどに困難を生じます。安静時に肩の痛みがあって、特に夜間に血液循環障害によって、症状が悪化し睡眠障害をきたすことが多く、患側(痛い側)を下にして眠ることはできません。 痛みは、一般に三角筋部にありますが、上腕の外側あるいは肘関節の親指側に訴えることもあります。肩を動かすと痛みが強くなるため、この痛みにより肩の動きは著しく制限されます。この期間は1〜2ヶ月続きます。
  • 慢性期(拘縮期 frozen phase)
  • 急性期から1〜2ヶ月たち、自発的な痛みは緩和しますが、肩を動かすと痛み、運動制限(可動域制限)が著しくなる時期です。上肢を動かすために肩甲骨が代わりに動くようになり、大きな回旋運動ができなくなります。このため、髪結い、髪をとかす、エプロン・帯のひもを結ぶなどの動作が障害されます。運動時の痛みは、肩の後面部や前面部に強く出ます。ときに筋肉の萎縮をみることもあります。この期間は4〜6ヶ月続きます。
  • 回復期(雪解け期 thawing phase)
  • 関節可動域が徐々に改善する時期です。痛みが取れて、手を動かしやすくなります。つい油断しがちで、この時期に肩を動かさないと運動制限が残ることがあります。完全に症状が消失するまでには、6〜9ヶ月かかることもあれば、もっと早いこともあり、必ずしも一定ではありません。

 

Ⅳ 五十肩になったらどうすればよいでしょう
  五十肩は自然に治るものといわれますが、初期に適切な治療をしないと、症状を長引かせたり、悪化させることにもなります。
  • 急性期
  • (肩を冷やす→温める)急に痛みがきたときは、氷や保冷パック、冷湿布で肩を冷やします。3〜4日たって痛みが落ち着いてきたら、今度はホットパックやカイロで肩を温めて血行を促進させます。徐々に痛みがきた場合は、強い炎症ではないので冷やす必要はなく、むしろ温めるほうが効果的です。
    (薬物療法)消炎鎮痛薬、筋弛緩しかん薬や外用薬で痛みを和らげます。眠れないほど痛む場合は消炎鎮痛の坐薬が有効です。また、関節の中に麻酔薬やステロイド薬、最近ではヒアルロン酸ナトリウム(関節内の分泌液と同じ成分)の注入を行うこともあります。
    (体操療法)急に痛みがきた初期は肩を安静にしますが、痛みが緩和されたら、なるべく早く肩を動かす体操を行います。体操の前には肩をよく温めておくようにしましょう。
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  • 慢性期
  • (肩を温める)毎日入浴したり、カイロ、超音波・超短波などで肩を温め血行をよくします。
    (体操療法)肩の動きを回復させるために積極的に体操を行います。薬は、どうしても必要な場合にだけにしましょう。
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  • 回復期
  • 慢性期と同様、肩を温め、体操を続けます。

 

Ⅴ 五十肩にならないようにするために
  日常生活でできる予防法は、日頃から肩の運動をすることです。たとえばラジオ体操や中高年のための軽いエアロビクス、なわとび、民謡に合わせて踊るなどが適しています。肩に負担がかからない運動として「自由の女神のポーズ」をおすすめします。肩の筋肉に最も負担がかからない位置をゼロポジションといって、片手を上げた状態をいいますが、この姿勢が“自由の女神”の姿に似ていることから名づけられた運動です。このポーズは、手を体の前方に上げる簡単な運動ですが、肩や頚の痛みの解消に効果があります。
   日常生活で肩に無理な負担をかけないためには、手を横に上げるときは、いったん手を前に上げてから横に動かすようにします。また、物の上げ下げは、自分の体の正面で行うようにしてください。腕を直接横に上げると、いろいろな筋肉を使うことになり、肩に大きな負担がかかるからです。前記の振り子(アイロン)体操も有効です。
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 “年だからしょうがない!”とあきらめず、なかなか良くならないと悲観せず、あせらず気長に治療を続けましょう。


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