小夫家教授の人工光合成研究が成功したのは、バクテリアのクロロフィルが「スペシャルペア」という形で結合していることに気づいたのがきっかけだった。二分子のクロロフィルがはす向かいに結合した形(二量体)で、これが効率よく光を吸収し電子を放出する原因になっていると推測した。
このスペシャルペアをリング状に繋げる際には「自己組織化」という方法が使われた。生体内で行われている方法で、

タンパク質は遺伝子の情報によりアミノ酸を鎖状に連結して作られるが、この鎖を折りたたんだり、繋げたりして、十分に機能が発揮できるための複雑な構造をとるよう分子間の相互作用で自発的に調整する。この作用は遺伝子の情報に刻み込まれていないだけに、生命の神秘とも言われている。
小夫家教授は、この方法により、溶液中の成分を調節するだけで、見事にスペシャルペアの美しいリングを作り上げた。この物質は高いエネルギー伝達効率を示し、アンテナ物質であることが証明された。
さらに、スペシャルペアを長大な鎖状に成長させたり、適当な長さに留めたり、自由自在に扱うことができた。金属の表面に結合させる「分子はんだ」も可能になった。これらの分子はいずれも光を吸収して電流を発生した。
このような人工光合成の研究は、化学からの生物学へのアプローチとして基礎研究に大きく役立っている。