遺伝子はDNA分子に含まれる四種類の物質(塩基)を文字のように使い、塩基の並び順で機能を表す。ゲノムはこれらの遺伝子などが列車のように長く連なっているので、その塩基の順番を解読し、どの配列が遺伝子かつきとめておけば、

そのデータをもとに遺伝的な設計図の全体像が浮かび上がるのだ。
枯草菌のゲノムに含まれる遺伝子の数は約四千百で、進化の頂点にあるヒトの遺伝子(二~三万)よりぐんと少なかった。つまり、枯草菌のゲノムには、進化の過程で付け加わった遺伝子がもともと省かれていることになり、全ての生物に共通する生命維持のうえで不可欠な遺伝子の基本セットをつきとめるにはうってつけなのだ。
全ゲノム解読のあとは、個々の遺伝子の機能解析という膨大な作業が待っていた。
「四千百の遺伝子それぞれについて、その遺伝子を欠いた突然変異を作り、どのような変化が起こるか調べることで、機能をチェックしました。生命維持の基本的な遺伝子は三分の一ぐらいで最小限千ぐらいに絞れるのではないか。他の三分の一は未解明で新たな機能を持っている可能性があります」と小笠原教授は予測する。