平成13年度春入学式

___ 学長式辞 ___

 皆さん、入学おめでとうございます。また本日ご同伴の皆様にも心からお祝い申しあげます。

入学式は何度経験してきても、しかもいくつになっても荘厳で晴れがましく緊張感があり、主役である入学生の皆さんに自分の未来について期待と不安とを覚えさせてくれる特別の式です。実は私もこの4月から学長になったばかりの新人で期待と不安とが入り交じって、今日の皆さんと同じような緊張感を持ってこの場に臨んでいます。

皆さんの多くはさまざまな出身大学で学問を修めてこられました。中には既に社会で働く経験をして入学してこられた人もいます。その上で、さらに本学の大学院で深く学問を究めたいという強い意志を持ち入学されました。面接のみによる本学の入学試験は教官と学生との人と人との対峙であって、簡単なようで難しい入学試験であります。皆さんはその結果選ばれた人たちなのです。いうまでもなく選んだ側として本学教職員一同は責任をもって研究指導や生活指導を行う覚悟でおります。

 本学には、大変恵まれた研究環境が整備されています。皆さんは、このような環境の中で何を疑問に思い、何を追及していきたいのかを明確にし、その上で自主的に研究しようとする姿勢を持続することが必要なのです。その結果、得られた経験や知識を自らの能力に昇華させていくことが何にも増して重要なことはいうまでもありません。さらに本学の教官は、最先端の科学技術の進歩を目指して日夜研究に励んでおります。これらの研究環境を利用し、教官の持てる力を引き出し、自分の血や肉とすべく努力していってください。

さて、本年は本学が開学して10周年に当たります。その間、博士前期課程1793名、博士後期課程189名の優秀な修了者を輩出してきました。本学には、情報科学研究科、バイオサイエンス研究科、物質創成科学研究科の先端科学での最も大切な三つの研究科が揃っています。最近、政府でまとめられた総合科学技術会議による科学技術基本計画では、今後5年間で研究開発活動に総額24兆円を投資するとしています。重点分野として、情報通信、ライフサイエンス、ナノテクノロジーはもちろんのこと、ITとバイオテクノロジーの融合分野の必要性などがあげられています。本学においても新年度から情報生命科学の研究を率先して遂行する予定にしています。

時あたかも新世紀の最初の年です。本日、入学式を行っているこのホールは3週間ほど前に竣工したばかりで、学内からの公募でミレニアムホールと命名されました。新しい1000年が始まったこの記念すべき年に、皆さんは本学で教育を受け、研究を始められるわけです。

新世紀を迎える現在、国立大学を取り巻く状況は大変厳しいものとなっており、独立行政法人化を視野に入れた大学評価が現実に行われ、大学改革や教育改革が叫ばれています。皆さんもご存知のとおり、本学は学部を持たない大学院のみの大変ユニークな大学です。これからの大学院教育の新しい一つのモデルを実践しているところです。それだけに外部から注目が集まっています。開学以来僅か10年間で、今日のような高い評価を得るに至った背景には、諸先輩方の血のにじむような努力があったからにほかなりません。

ちなみに、本学の昨年度の教育研究や施設整備などに要した経費は約90億円でした。本学では約1000人の学生が在籍しますので、単純計算では学生一人あたり年間約900万円に当たります。このような状況の中、皆さんが本学において得られる研究成果や個人の能力をどれほど社会に還元できるかが本学の存在意義につながります。本学の将来は皆さんの双肩にかかっているといっても過言ではありません。

少し気楽な話をします。京都の北の方にあって、鳥獣戯画で有名な高山寺というお寺があります。高山寺の掛け板の冒頭に、私が若いころから尊敬している明恵(みょうえ)上人の「阿留辺幾夜宇和(あるべきやうわ)」という言葉があります。明恵上人は時代的には今から約800年前の12世紀から13世紀へ移り変わる頃活躍されていた方です。

「あるべきやうわ」とは強い意志の力が必要であり、単純に「あるがままに」ということとは違います。すなわち、明恵上人が「あるべきやうに」とせずに「あるべきやうわ」としていることは、「あるがままに」生きるというのではありません。その時その場において「あるべきやうわ」とは何かということの問いかけを行い、きわめて主体的な考え方、生き方を提唱しているように思われます。

河合隼雄先生の著『明恵 夢を生きる』では「戒を守ろうとして戒にこだわりすぎると、その本質が忘れられてしまう。さりとて、本質が大切で戒などは副次的であると思うと、知らぬまに堕落が生じてくる。これらのパラドックスをよくよく承知の上で、「あるべきやうは何か」という厳しい問いかけを常に己の上に課する生き方を、明恵はよしとしたのであろう。」と記されています。

現代においても個人個人で「あるべき姿」が異なるのは当然です。社会や環境が変化してもその時その場で「あるべきやうわ」とは何かということの問いかけを行いながら生きていって欲しいと私は願っているのです。

科学技術の進歩は早く世の中は常に変化しています。今後、本学がどのような大学になるべきなのか、どのような学生を育てようとしているのかなど、私は常に考え「本学のあるべき姿」を求めています。新人の学長として学生や教職員を問わず、これからはそれぞれの立場で「あるべきやうわ」を考えながら行動していって頂くつもりですので、新入生の皆さんにおかれましてもそのことを肝に銘じていただきたいと思います。

終わりにあたって、人生の大切な一時期を本学において過ごされる皆さんは、今日からは本学の学生としての誇りと自信をもって主体的に行動し人類のために活躍できる人となっていただきたい、という大きな期待を持っていることをお伝えして式辞といたします。

 

平成13年4月6日

     奈良先端科学技術大学院大学

        学 長   鳥 居 宏 次

 

 

 

 

_平成13年度4月入学者
 

 
情報科学研究科
バイオサイエンス研究科
物質創成科学研究科
博士前期(修士)課程
128 (12)

    [11]

      _

123   (41)

      [ 7]

        

 98  (17)

    [ 7]

349  (70)

    [25]

      _

博士後期(博士)課程
 39 ( 4)

    [ 4]

      _

 29   ( 7)

      [ 3]

        _

 21  ( 4)

    [ 5]

      _

 89  (15)

    [12]

      _

167 (16)

    [15]

      _ 

152   (48)

      [10]

        _

119  (21)

    [12]

      _

438  (85)

    [37]

      _

注)(  )は女子数、[  ]は社会人、○の数字は留学生を内数で示す。
 
 

奈良先端科学技術大学院大学同窓会からの御案内

 このたびは、奈良先端科学技術大学院大学へ入学おめでとうございます。
さて、奈良先端科学技術大学院大学同窓会は、入学手続時に案内状を差し上げましたとおり、平成12年3月11日に会員(在学生及び修了生)相互の親睦を図り、併せて奈良先端科学技術大学院大学建学の目的及び使命の達成に寄与することを目的として設立されました。その際、同窓会費の納入をお願いしておりますが、未だ納入されていない方は、下記により是非納めていただくようお願いします。
なお、同窓会の活動内容や各種案内、皆様方からのご意見ご要望については、同窓会ホ?ムペ?ジ(http://alumni.aist-nara.ac.jp/)を利用してください。



金額 : 20,000円(永年会費)
納入方法 : 学生課窓口持参、銀行振込、郵便振込のいずれか
 

銀行振込の場合
銀行名・支店名:南都銀行 登美が丘支店
口座名義: 奈良先端科学技術大学院大学同窓会
代表 城 和貴
口座番号: 普通預金 278442

郵便振込の場合
口座番号: 00960?4?158330番
口座名称: 奈良先端科学技術大学院大学同窓会
 
 
 
 

  *問い合せ先:奈良先端科学技術大学院大学学生課 TEL 0743-72-5920(ダイヤルイン
 

 

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「せんたん」号外第5号(平成13年4月6日発行)
企    画:奈良先端科学技術大学院大学広報委員会
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