奈良先端科学技術大学院大学 研究推進部門
Home > お知らせ詳細
?

【受賞報告】研究推進機構の土屋雄一研究員が2017年10月9日、10日に奈良先端大で開催された第12回 小胞体ストレス研究会で優秀発表賞を受賞(2017/10/10)

 
研究推進機構の土屋 雄一研究員が2017年10月9日、10日に奈良先端大で開催された第12回 小胞体ストレス研究会で優秀発表賞を受賞しました。



 【受賞コメント】


 この度は、第12回 小胞体ストレス研究会における優秀発表賞を頂き、大変光栄に思っております。河野憲二教授、斎藤美知子准教授(京都薬科大)、門倉広准教授(東北大学)をはじめ、研究室の皆様のご助言、ご協力のおかげであり、深く感謝しております。また、本研究を滞りなく進めることができたのも、奈良先端大の素晴らしい研究施設と支援体制のためであり、この場を借りてお礼を申し上げます。



【発表内容】


 「膵島β細胞におけるIRE1α-XBP1経路の生理的役割」


    

 小胞体ストレスセンサーIRE1αは、生体が危機的状況に陥ったときのみ活性化するとこれまでは考えられてきた。しかしながら、近年の研究からは免疫のB細胞から形質細胞への分化や胎盤迷路細胞網の形成などの生理現象によってもIRE1α-XBP1経路が活性化し、それぞれの生理現象に欠かせない役割を担っていることがわかってきた。我々は、インスリンを産生、分泌する膵島β細胞においてもIRE1α-XBP1経路が生理的条件下で強く活性化していることを見出した。しかしながら、その生理的意義の詳細については分かっていなかった。

 膵島β細胞でのIRE1α-XBP1経路の生理的役割を明らかにするため、我々は膵島β細胞特異的なIre1αのConditional Knockoutマウス(Ire1αB(-/ΔR) マウス)を作製し、さらにIre1α Knockout MIN6細胞(MIN6(Ire1α(ΔR/ΔR))細胞)を樹立した。Ire1αB(-/ΔR) マウスは、インスリンの産生低下によって糖尿病様の症状を呈した。つぎに、MIN6(Ire1α(ΔR/ΔR))細胞を用いて詳細な解析を行なった。MIN6(Ire1α(ΔR/ΔR))細胞は、マウス表現型と同様にインスリン分泌の低下とインスリン含有量の低下を示した。さらに、MIN6(Ire1α(ΔR/ΔR))細胞では、インスリンの前駆体タンパク質であるプロインスリンの折りたたみ効率が低下していた。膵島β細胞でIRE1α-XBP1経路がプロインスリンのジルフィド結合形成に関わる酵素の発現誘導に関与していると考え、小胞体シャペロンの発現量を網羅的に調べたところ、小胞体内でジスルフィド結合を触媒するシャペロンである5つのPDIファミリー(PDI、PDIR、P5、ERp44、ERp46)の発現量が低下していた。また、ChIPアッセイから、XBP1はこれら5つのPDIファミリーのプロモーター領域に結合し、直接的に発現誘導を行っていることが分かった、プロインスリンは3つのジルフィド結合の形成によって小胞体内で酸化的に折りたたまれる。つぎに、5つのPDIファミリーがプロインスリンのジスルフィド結合形成に関与しているか調べたところ、PDI、P5、ERp44、ERp46がプロインスリンとジスルフィドを介した複合体を形成していた。さらに、これら5つのPDIファミリーを一過的にMIN6(Ire1α(ΔR/ΔR))細胞に発現させるとインスリン分泌が回復した。これらの結果から、我々は膵島β細胞においてIRE1α-XBP1経路は強く活性化し、5つのPDIファミリーの転写誘導を促すことでインスリンの産生を促進していると結論づけた。



土屋 雄一 研究員

土屋 雄一 研究員