学位記授与式を挙行

イベント報告 2007/03/27

3月23日(金)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う413名の課程修了者を送り出しました。
授与式では、安田学長より学位記が手渡され、式辞が述べられた後、福森 孝司 本学支援財団専務理事(田代 和 本学支援財団理事長代理)より祝辞が述べられました。
また、同支援財団が優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞の表彰を行い、受賞者には、同支援財団より賞状及び賞金が贈られました。

【修了者数】()内は短期修了者数
博士前期課程分 情報科学研究科      143(4)名
        バイオサイエンス研究科  97(0)名
        物質創成科学研究科    99(0)名

博士後期課程分 情報科学研究科      35(9)名
        バイオサイエンス研究科  25(1)名
        物質創成科学研究科    13(3)名
論文博士分   情報科学研究科      1名

安田学長式辞】
本日、奈良先端科学技術大学院大学の修士の学位を取得されました三百三十九名、博士の学位を取得されました七十三名の皆さん、おめでとうございます。ご来賓の方々、本学の教職員や学生諸君一同とともに、心よりお祝い申し上げます。ご家族やご友人の皆様、指導教員の皆様にも、入学以来の様々なご支援に対し感謝申し上げるとともに、心よりお祝い申し上げます。本日学位を授与された皆さんは、皆様自身の努力と勉学の成果に対し、自信と誇りを持って、輝かしい人生を切り開いていただきたいと思います。しかし、皆さんが今日この場に居る背景には、ご家族や友人、指導教員、教職員、先輩や後輩の学生諸君の日頃の暖かいご支援があったことも忘れず、皆様への感謝の気持ちを持っていただきたいと思います。

大学には、知の伝承としての「教育」、知の創造としての「研究」、知の活用としての「社会貢献」という三つの大きな目的があります。本学は昨年十月に創立十五周年を迎えました。その設立の理念に基づき、法人化に際し、本学の目標として、社会の要請の強い学問分野の課題にも取り組むこととし、「持続可能な地球社会と人類の幸福の実現」を掲げています。二十世紀は、科学技術が高度に進歩し、交通手段の発達、通信手段の飛躍的発展、様々な電化製品の利用享受など、私達の日常生活を取り巻く社会環境は大きく変化しました。私達は、先端科学技術の進歩による恩恵を享受する一方、人間のさまざまな活動に起因する物心両面における環境悪化、異常気象、交通事故の増大、環境汚染、エイズの蔓延、鳥インフルエンザの問題、南北問題、テロの発生など、人類の存続さえ危ぶまれる状況をも作り出してきました。世界各地における宗教や民族対立による戦争は後を立たず、各国の都市における凶悪な犯罪は増加の一途をたどり、人々相互の信頼関係も希薄になり、人々が安全で安心して住める世界でなくなる傾向にあります。気候に関しては、一昨年は冬の北陸一帯を襲った豪雪、世界各地を襲う豪雨や旱魃などがありました。例年なら雪が降り、スキー場も賑わうはずでしたが、この冬は、雪が降らず、世界各地のスキー場でもスキーができない状態でした。地球温暖化に一端の原因があると言われている異常気象の発生による被害が新聞やテレビで報道されない日が一日とないような現状です。

このような現在我々人類が抱えている諸問題を解決していかなければ、私達の世代や次世代の若い人々が住む二十一世紀には、人類の持続的な発展は期待できません。そのためには、これらの諸問題に取り組み、問題を解決する様々な研究を推進し、またその目的を担う次代の人材育成が不可欠です。大学は、知の創造を通して社会に貢献する場です。本学ではこのような環境問題にも取り組んでおり、本日学位を取得された皆様の中の独創的・先端的な研究成果が、今後これらの問題を解決し、社会の発展や文化の創造に貢献できることを確信しています。

環境問題は世界的に大きな問題であり、各方面から大きな関心が寄せられています。地球温暖化の危機を訴えて世界を行脚するアル・ゴア元米国副大統領の最近大きな話題を呼んでいるドキュメンタリー映画「不都合な真実」や書籍化された同名の本をご覧になった方々もいらっしゃると思います。また英国では、スターン卿の報告書「Stern Review: The Economics of Climate Change」が提出され、世界的に話題になっています。現在の我々が抱えている問題、食糧危機、石油枯渇、環境汚染などの問題の解決に、植物の力を利用しようという啓蒙書を、本学バイオサイエンス研究科の新名敦彦教授が出版されました。植物分子生物学の研究者の立場から、「植物力--人類を救うバイオテクノロジー」という表題で、環境問題等の解決のために植物のもつ能力の利用を提言されています。ブラジルでは既に石油に代わるエネルギー源として植物の力を利用しています。サトウキビからバイオエタノールを生産し、自動車の燃料に現実に使用しています。植物は人間の食料や動物の飼料に使われていますので、これらと競合しない方法を考える必要があります。私達は植物バイオマスの半分程度しか利用せず、残りを廃棄しています。この廃棄バイオマスを利用する技術を開発すれば、エネルギー利用の大転換になります。このような植物の力を最大限に利用する提言で新名先生の本は埋まっています。是非一読して下さい。

地球環境の問題解決のためには、科学技術の進展に基づく研究成果が有効です。しかし、一部の研究者の努力だけでは解決しません。日常生活を送る私たち全員の努力が不可欠です。日常生活の中で様々な取り組みを実行していく必要があります。書籍「不都合な真実」の中にも、「あなたにも、すぐできる十の事」が提案されています。その中には、こまめに蛇口をしめましょう、と言うのもあります。また、たくさんの木を植えましょうというのもあります。この木を植えましょうと言う提言をすでに実際に行動に移し、実行している人々がいます。二〇〇四年にノーベル平和賞を受賞されたケニア共和国の環境副大臣マータイさんのグリーンベルト運動と呼ばれる植林事業で知られています。日常的に取り組む行動を的確に表現できる言葉が英語などにはなく、マータイさんは日本訪問の際に、その精神を的確に表現できる言葉として、日本の美徳を表す言葉「モッタイナイ」があることを知り、この「モッタイナイ」と言う言葉を世界に通じる環境運動のスローガンに採用しています。この「モッタイナイ運動」は、日本が物質的には必ずしも豊かでなかった時代には、日本人が当たり前の行動規範にしていました。しかし、四十年代以降の高度成長期を経て、物質的に豊かになった現在、モッタイナイと思うこころをわたしたちは失いつつあります。この「モッタイナイ運動」を今一度私たちの生活の中に一人ひとりが生かしていくことも大切です。

現在の日本はあらゆる面において戦後はじめての大きな変革の時代を迎えようとしています。では、このような社会に私達はどう対処したらよいのでしょうか。それは、この変化する時代において、その場の状況を正確に判断し、その状況を切り抜けるために、失敗を恐れず、新しいことに立ち向かって、自らの信念に基づいて行動をすることです。ダーウィンの「種の起源」の中に、次のような言葉があります。「強いものが勝つわけでない。賢いものが勝つわけでもない。変化するものだけが勝つのである」この「勝つ」という言葉は、現在の文字通りの勝負に「勝つ負け」の「勝つ」ではありません。地球の長い変化する歴史の中で生き残るという意味です。地球上の生物が長期に生き残れる社会の実現、すなわち地球の持続可能な社会の実現を達成するためには、「変化する」ことが大切であることを意味しています。先行き予測不能な現代においてこそ、失敗や変化することを恐れず、チャレンジ精神をもって人生に立ち向かってください。

皆さんは、これからそれぞれ様々な固有の目的を持った組織の中で働くことになります。製品を作る会社、サービスを売る会社、開発や研究を目的とする研究所、教育を目的とする大学など、様々な目的をもつ組織の中で生きてゆくことになります。皆さんの組織が何を目的とし、どこを目指しているか、その目的を達成するために何が問題になっているか、その解決のためには、何をしなければならないかを、皆さん自身が認識し、理解することが大切です。そのためには、常にアンテナを張って、情報を収集し、その問題解決を常に考えることが大切です。与えられた命令だけに単純に従うだけでなく、皆さんが組織の生き残りのために、何ができるかを積極的に常に考えて行動していただきたいと思います。

ネットワークなどの情報化が進んだ現在において、様々な手段で容易に世界の情報を手にすることができます。しかし、どの情報が真に大切で、本当の情報であるかを認識することは容易ではありません。そのためには、先人が残した古典をじっくりと時間をかけて読み解くと言う、読書も大切な手段の一つです。また、本学で培った人脈を利用することも、今後の皆さんの人生の中で大いに役立つことと思います。是非、本学での人脈を活用してください。また、博士前期課程修了生の皆様には、さらに本学の先端的な教育を受け、人脈を広げていただくために、近い将来本学の博士後期課程の学生としてお会いできることを期待しています。

皆さんがグローバル化しつつある世界の舞台で、本学出身であることに誇りを持って、大いに活躍されることを期待して、私のお祝いの言葉といたします。

本日は修士、博士の学位おめでとうございます。

平成19年3月23日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 安田 國雄

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