〔プレスリリース〕細胞増殖を止めてストレス対策をする植物独自の仕組みを解明~環境の変化に負けない、食糧や植物バイオマスの安定的生産に期待~

研究成果 2019/04/05

 奈良先端科学技術大学院大学(奈良先端大、学長:横矢 直和)先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 植物成長制御研究室の梅田 正明教授、高橋 直紀助教らは、ストレスを受けた植物が、細胞分裂を止めて増殖を抑えることにより、対応するためのエネルギーと時間を確保するというメカニズムの詳細な仕組みを世界に先駆けて発見した。植物は外界からのさまざまなストレスにさらされているが、いずれの場合も同じメカニズムを発動させることにより効率的に対処するという巧妙な生存戦略を明らかにした。

 モデル植物であるシロイヌナズナのDNAに損傷を与えると根の伸長が停止するが、梅田教授らは、遺伝子の働きを調節する転写因子というタンパク質の中で、「ANAC044」、「ANAC085」という2つの転写因子が機能を失った変異体では細胞分裂の停止はなく根が伸び続けることを見出した。また、これらの変異体ではDNAに損傷を与えても根の構造が健やかに保たれていることも突き止めた。

 そこで、この2つの転写因子の働きについて詳しく解析したところ、細胞分裂を抑制する別の転写因子を安定化させることにより、細胞分裂を止める作用があることを解明した。興味深いことに、「ANAC044」と「ANAC085」は植物が高温ストレスに曝された際にも機能していることがわかり、ストレスに応答した細胞分裂の停止機構として中心的な役割をもつことが明らかになった。

 本研究の成果は、転写因子の発現や機能を改変することにより、さまざまなストレスに曝される自然環境下において細胞分裂を止めずに成長を続けさせ、食糧や植物バイオマスを安定的に生産する技術開発に、新たな方向性を与えるものと期待される。

 この研究成果は、現地時間 平成31年4月4日(火)付で、eLife(オンラインジャーナル)で掲載されました。

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