せんたん Jan.2013 Vol.21

せんたん Jan.2013 Vol.21 page 11/28

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O FORUM 2012の場だけではない。例えば国際機関は、博士スだったのだろう。目標課題自体を自ら設定するという時代になると、多様性や異質な経験にチャレンジするといった人の育て方なり、人材を活かす環境がないと、....

O FORUM 2012の場だけではない。例えば国際機関は、博士スだったのだろう。目標課題自体を自ら設定するという時代になると、多様性や異質な経験にチャレンジするといった人の育て方なり、人材を活かす環境がないと、新しいものを生み出しにくい。田中氏日本のカルチャーの中に問題点がある。変わることの良さがあるのに、異質に見られるという世界がある。今、若者に元気がないのではなくて、例えば野球選手が海外へ出ていくのは、個人の主張や考え方をはっきり示しはじめたからだ。やはりそこから変わり、自分の意思を強く出していける人間がいいと認める世界ができてこなければ。ただ、地味なサイエンスまでは至っていないのが現状だ。竹内氏未来型サイエンスといえば、単純明快な結果が出るところが大きい。グーグルの検索エンジンが登場したとき、キーワードを入れるとすぐに答えが出るので驚いた。山中先生のノーベル賞の受賞理由にも「驚くほど単純な手法によって」と書いてある。尾関氏それでは、人材育成という視点に立って、どういう科学者像、技術者像が求められるのか。田中氏例えばライフサイエンスの中で日本は技術的に何も負けていない。良い例が、遺伝子解読の機械「シーケンサー」が急速に進歩しているが、そのパーツは全部日本製だ。つまり、日本は技術、サイエンスの考え方においては最先端だが、それをいかに役に立つように仕上げるかはマネジメントの力で、なかなか若いときに学べていない。技術の基盤はほとんど日本にあるのだから、そこを直せば新たな再生の道が開ける。教育のシステムからドラスチックに変える必要があると思う。畚野氏いろいろな科学研究の場でリーダーになれる人が必要だ。かつては大学を出た人がリーダーになったが、社会がどんどん複雑化、専門化して、知識だけでなく判断力とか、広い意味での人間力を持っている人が、リーダーになることを求められている。そういう人を育てるのがこれからの大学院で、理系だと博士課程の教育だ。それができていないのが、企業、社会の期待に応えられていない原因ではないか。板東氏(俯瞰力と独創力を備えたグローバルなリーダーを養成する)リーディング大学院という考え方の中で想定しているのは研究号取得の人材が多い。官庁も修士は多く採るようになった。企業も同様だが、博士に素晴らしい人もいれば、知識の幅の狭い人もいるので、リスクを考えて採れないところがあった。しかし、文部科学省職員の中を見ても大学院で高度な学びをしたい人が多くいて、企業も高度な知識・能力を持った人材がほしいと思っており、大学が博士を育成するときに社会人も含めて考えてほしい。竹内氏ポスドク(博士研究員)の就職先の1つとして科学コミュニケーターがある。2つ以上専門的な知識があって、その知識を基に正確な情報をわかりやすく社会に発信するという役割の人はもっと増える必要があり、大学以外にそのような道筋ができればいいと思う。尾関氏それでは、グローバル化をどのように進めればいいか。竹内さんは、日本からの留学生が少ないことより、海外の留学生が来ないことに問題がある、と言っていた。竹内氏1985年から7年間カナダに住み、留学生事情を見てきたが、日本はすごくガラパゴス化しているという印象が強い。その理由は、カナダの大学ではさまざまな人種、言語、カルチャーの人がいて、サイエンスを勉強する環境も自由闊達で、刺激に富み、それぞれの国の文化や世界情勢に対する理解が深まる。そのような環境が日本の大学にあれば良いのにな、と思う。田中氏今やらなければいけないのはアジアからの留学生の問題だ。例えば中国の人が留学する際、サイエンスのレベルは同じでも日本ではなく欧米に行ってしまう。それなら、アジアと日本で共通の問題である肥満、生活習慣病など病気や環境、食糧などの問題について、日本がアジア全体の問題としてとらえ、課題提案型にしながら一緒に解決していくという強い姿勢を見せれば、アジアの留学生が来るのではないか。そのような留学生を派遣する国と日本との関係が良くなり、さらに日本に留学をする。日本とコミュニケーションする意味を考えてくれるのではないか。畚野氏グローバル化は切り口によって様々だ。例えば、英国で世界の大学のランキングをつけている組織が日本の大学を下位にした理由は「グローバル化していない」ということだ。そのグローバル化の定義の1つに外国籍の教員の比率があり、目安は約30%だそうだ。日本の大学の実状から見て10%でも夢のまた夢だ。改革には様々な制約や抵抗がある。別の新しい組織をつくるというような強い気構えが必要だ。板東氏新しい大学をつくらないと変えられないというケースも実際はまだ結構ある。私も十数年前に秋田県に出向したとき、国際教養大学という新たな大学をつくり、グローバル化対応では評価されている。ただ、既存の大学でも、新しいチャレンジをするための組織をつくるなどして、大きな刺激を与えていくこともできるのではないか。世界的にも社会的にも評価をされるようなものを、まずつくってしまう。それもスピード感を持ってやり、足並みがそろわなければ一部の突出したところがやるだけでもいい。とにかくやってみることが必要だ。板東久美子氏田中隆治氏竹内薫氏畚野信義氏尾関章氏SENTAN10