せんたん Jan.2013 Vol.21

せんたん Jan.2013 Vol.21 page 13/28

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概要:
ユビキタスコンピューティングシステム研究室http://isw3.naist.jp/Contents/Research-ja/45_lab-ja.htmlを使い、照度の変化によりユーザの位置を推定、追跡するなどシステムを安価に簡略化する工夫も取り入れている....

ユビキタスコンピューティングシステム研究室http://isw3.naist.jp/Contents/Research-ja/45_lab-ja.htmlを使い、照度の変化によりユーザの位置を推定、追跡するなどシステムを安価に簡略化する工夫も取り入れている。また、交通渋滞の情報をドライバーらが参加して自動的に検出し、伝達するセンサシステムも研究している。多数の運転者の携帯端末や自動車に搭載したセンサから通行中に送られる個別の情報を集約して、渋滞個所を見つける。実験では、その場所を通る自動車に取り付けたビデオカメラが自動的に渋滞状況を撮影し、後続車のカーナビなどに画像を送って、迂回するかどうかを判断する材料を提供するという仕組みを検討している。このほか、健康支援のシステムとして、ウォーキングの際にどのコースをどれだけの速さで歩くと辛くなるかを推測するソフトも開発した。GPS(全地球測位システム)で歩行速度を測り、本人の身体能力を示す運動強度から身体状況を推測して知らせる、という。「このようにセンサで人や環境の情報を集め、それを使ってユーザにサービスとして還元する方法は無限の応用が考えられ、質の高い豊かな社会をつくるうえで必須のシステムになっていくでしょう。ただ、センサの数値データからどのように具体的な状況を推測するか、わかりやすく画像化するかなど研究すべき課題は多い」と安本教授は話す。また、玉井助教は、研究室の一連のテーマの中で、共推測する通する大きな技術的課題である携帯端末による無線通信を安定化し、品質を向上させる研究に取り組んでいる。たとえば、データ通信が錯綜した場合、回線がパンクしないように電話回線の3G(第三世代携帯電話回線網)の負荷を無線LANの方へ逃がすことが考えられる。また、無線LAN自体の品質向上のため、通信を複数のチャンネルに振り分けたり、少し遠い所をアクセスポイントに選んだり、さまざまな方法を研究している。面白く実用化される研究をこのような多彩なテーマで研究を展開する安本教授は、「研究は、自分にとって面白いと思うことがないと続かないので、学生にもテーマは自分で選ばせています。また、実用化される技術であることも必要です。研究室では目的地までの最短経路を示すナビゲーションシステムを作りましたが、それが奈良の観光案内として名所をどのように巡れば効率的かという形で使われている。そのような社会還元できることが喜びです」と語る。趣味はガーデニングと釣りだ。玉井助教は、「日常生活の中でこれは役立つと気づいたテーマを選んでいます。ITは個人の能力の範囲を非常に拡大できる技術と思います。これまでなら工場で大規模なハードを作って開発しなければならなかったものが、個人レベルでソフトを開発して、それが一気に広まって劇的に生活スタイルが変わることがあります。それが面白い。学生に対しても好きなテーマであっても、新規性を重視して研究するように求めています」と強調する。学生にとってもユビキタスの研究はそれぞれの発想を生かせる分野でもある。博士後期課程2年の水本旭洋さんは、家庭内の省エネシステムで、センサと家電機器のネットワークがうまく連動して自動制御できているか、テストする手法について研究している。「テストのときに、実際に室内の温度を下げてみるなど手間がかかるので、これを簡略にする手法を考えています。博士前期課程では救命救急のトリアージの効率化の研究でしたが、もう少し対象が幅広いテストに移りました」と話す。「ITの研究は、システムを作る理論からモニター画面のシミュレーションまで見られるのが楽しい。将来はユビキタスか無線通信関係の企業の研究者になりたい」とITへの思いは一貫している。博士前期課程2年の小山由さんは、大災害時に通信機能が停止状態になっても、互いの端末が自動的に探知し合ってデータを送受信する「すれ違い通信」で安否情報をやり取りする研究を行っている。「シミュレーションで安否情報の到達率などを調べています。特定の人にどのように送信して安否を問うか、返事をもらうか、というところなど問題があるので何とか解決したい」と抱負を語る。「学部ではロボットに考えさせる論理プログラムの研究をしていましたが、すぐに社会に役立つ研究がしたくて本学に入学しました。ITの基礎の知識に加えて、対象の応用の分野の深い知識も必要なので勉強が大変です。その点、この研究室はいろんな分野の出身の人がいるのでアドバイスがもらえるところがいいと思います」と期待する。水本旭洋さん小山由さん柏本幸俊さん博士前期課程1年の柏本幸俊さんは、家庭内の節電支援の研究だ。「これまでの節電は、システムの方でスケジュールが決まっていて、この時間は洗濯機を使うとか、人間に押し付けるケースが多かったのですが、むしろ上手に節電を工夫している人の生活の知恵を活用して、必要に応じてスムーズにユーザに示せる提案型のシステムの方法を考えています」とユニークなアイデアを示す。「学部のときは、携帯多機能端末を使って家電の操作をする研究で、今と似たテーマでした。研究室では、最初はカルチャーショックになるほどさまざまな分野の出身の人と出会いましたが、それがいまは研究の道に進もうと決心するきっかけになりました。自然に囲まれて修業するような環境も私にとってはふさわしい」と本学での研究に意欲を見せている。電子トリアージを用いた救命救急システム:携帯端末を向けた方向にいる患者の生体情報がリアルタイムに表示される様子電子トリアージを用いた救命救急システム:患者の位置と優先度を地図上に表示している様子ユーザ参加型センシングによる渋滞情報の収集・配信システム:渋滞発生地点の動画を効率よく収集し、その地点にこれから向かうユーザが所有する端末へ配信するSENTAN12