せんたん Jan.2013 Vol.21

せんたん Jan.2013 Vol.21 page 16/28

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知の扉を開く物質創成科学研究科化学反応を自在に制御し、希少な天然物を物質創成科学研究科反応制御科学研究室垣内喜代三教授森本積准教授抗がん剤を合成植物から抽出される医薬品の材料など有用な天然の物質を人工....

知の扉を開く物質創成科学研究科化学反応を自在に制御し、希少な天然物を物質創成科学研究科反応制御科学研究室垣内喜代三教授森本積准教授抗がん剤を合成植物から抽出される医薬品の材料など有用な天然の物質を人工的に化学合成することができれば、希少な物質を大量に安価に生産できたり、分子の構造を作り変えて機能を高めたり、さまざまな応用の道が開ける。しかし、天然物の大半を占める有機化合物という炭素原子(C)を骨格にした複雑な構造の物質を生み出す研究は、一筋縄ではいかない。分子を構成する「原子」や「基(原子の集合体)」をそろえても、それらの組み合わせ手順によって隣接する原子との結合の仕方が変わり、思い通りの形にコントロールするのに膨大なエネルギーや手間がかかってしまうからだ。そこで、反応の途中でできる環状の構造など主要なユニットの部分を自在に合成する効率的な方法の研究開発が行われている。「有機合成反応の新しい制御法を開発し、それを活用して複雑な環状構造を持つ有機化合物をつくり、機能を発揮させる研究。温和な条件で効率的に反応を進める触媒の研究を行っています」と垣内教授は説明する。これまでセイヨウイチイという植物に微量含まれ、卵巣がん治療に使われる抗がん剤「タキソール」の新たな化学合成法の開発などに成功してきた。反応が促進できた最近の成果を紹介しよう。谷本裕樹助教、垣内教授らは、医薬品の材料などによく使われる窒素(N)を含む有機化合物(環状イミン)を温和な条件で効率よく作る方法を開発し、それを南米アリが持つ防御物質の人工合成に応用してみせた。これまで100℃以上で数時間~数十時間かかっていた反応が、0℃以下、10分~20分で済むのだ。その仕掛けのポイントは、結合した分子から脱離する際に他の原子も一緒に抜き取る「脱離基」という分子ユニットにあり、あらかじめ原料分子の反応部分の近くに付けておき、脱離させることで反応が安定化し、促進される。さらに、でき上がった分子には二重結合が含まれるので、そこにさまざまな分子を結合させて、いろいろな有用物質を新たに構築することができる。また、もともと負の電荷を持つ窒素原子に、その電子(負の電荷)を引っ張る「基」などを結合することで、逆の正の電荷を持つ形にする「極性転換」を使う方法も考案した。正の電荷に変身した窒素に対し、負の電荷を持つ炭素が結合しやすくなって、炭素と窒素の結合が基本にあるアミノ酸をはじめ、有用な窒素垣内喜代三教授森本積准教授15 SENTAN