せんたん Jan.2013 Vol.21

せんたん Jan.2013 Vol.21 page 18/28

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TOPICS最新の研究成果バイオサイエンス研究科神経形態形成学研究室神経細胞が細胞膜を広げ、軸索を伸ばす仕組みを発見~再生医療への応用期待~稲垣直之准教授脳内の神経細胞が情報ネットワークをつくるため、表面積....

TOPICS最新の研究成果バイオサイエンス研究科神経形態形成学研究室神経細胞が細胞膜を広げ、軸索を伸ばす仕組みを発見~再生医療への応用期待~稲垣直之准教授脳内の神経細胞が情報ネットワークをつくるため、表面積を広げて軸索と呼ばれる長い突起を伸ばす仕組みについて、バイオサイエンス研究科神経形態形成学研究室の稲垣直之准教授、博士後期課程3年の中澤瞳氏、情報科学研究科の杉浦忠男准教授、東北大学生命科学研究科の福田光則教授らの研究グループが解明することに成功した。稲垣准教授らは、ラットの神経細胞を培養し、蛍光を発するタンパク質を組み込んで物質の動向を追跡、観察した。この結果、脳内にあり、これまで機能がわからなかった「Rab33a」というタンパク質が、細胞体で合成された細胞膜成分の軸索先端への輸送と供給を担うことによって、軸索の伸長と形成に関わることがわかった。今後、軸索の形成や再生についての理解が加速するとともに、神経の伸長など再生医療への応用などが期待できる。この研究成果は、2012年9月12日付の米国神経科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に掲載された。稲垣直之准教授神経細胞が軸索を伸ばすために細胞膜を広げるしくみ。「Rab33a」は、細胞体の小胞体とゴルジ装置で新たに合成された膜成分を軸索先端へ輸送し軸索先端の細胞膜に膜成分を供給することで、軸索の細胞膜を広げてその形成と伸長を引き起こす。軸索先端に見られるRab33a(緑)。軸索の先端は手のひらのような構造をしており、この図では上方向に進む。手のひらの甲にあたる部位は青色(微小管を染色)に見え、指にあたる部位は赤色(アクチン線維を染色)に見える。「Rab33a」が軸索の先端に顆粒状に広く分布していることがわかる。物質創成科学研究科エネルギー変換科学研究室片岡幹雄教授上久保裕生准教授光を感じるタンパク質の原子の動きを世界最高レベルで可視化に成功外部の光に反応して情報を伝える生体内の光センサータンパク質の動きを世界最高の分解能で可視化することに、物質創成科学研究科エネルギー変換科学研究室の上久保裕生准教授と片岡幹雄教授らが成功した。米国立衛生研究所国立糖尿病消化器腎疾病研究所のフィリップ・アンフィンラド教授らとの共同研究。光センサータンパク質が光を吸収した直後の100ピコ(1兆分の1)秒から、構造が大きく変化するミリ(1000分の1)秒に至るまでの間、タンパク質の時々刻々の動きを、空間分解能1.6A(オングストローム、100億分の1m)、時間分解能120ピコ秒という、世界最高の時空間分解能で可視化することができる。100ピコ秒を1分として考えると、これは分子の20年の長きにわたる活動を観察したことに相当する。反応に伴う原子レベルでの動きを画像化して手に取るように見えるうえ、未知の構造変化も明らかになった。片岡教授らが、イェロープロテインといわれる光受容タンパク質について、均質で大きく、壊れにくい良質な結晶が調製できたことが成功に結びついた。データは、連続写真のように構造の変化を追跡する「時間分割結晶構造解析」により取得した。本手法は、フォトクロミック分子など光応答性分子の反応過程の可視化といった物質科学全般に広く応用されるものと期待される。この研究成果は、2012年11月にアメリカ科学アカデミー紀要の電子版に掲載された。実験方法概念図。120psのパルス幅を持つ励起用レーザーを照射後、任意の遅延時間後にパルスX線をあて、反応過程の構造のスナップショットを撮影した。125psのパルス幅を持つX線を使うことによって反応初期の構造を観測することに成功した。片岡幹雄教授上久保裕生准教授光反応中心近傍の反応中間体の構造。右から順に、レーザー照射直後に形成される中間体からミリ秒程度の寿命を持つ中間体までの構造を示している。pGは反応前の構造で、pCAと書かれた分子はtrans構造をとっている。反応が始まり、しばらくするとpR1のように、平面上のcis構造をとる。pR0で示した構造は、transとcisの中間的な構造をとっており、通常、励起状態でしか見られないような構造が基底状態の中間体で安定化されていることを示している。17 SENTAN