せんたんvol.21

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グリーンデバイス研究室http://mswebs.naist.jp/courses/guidance/25.html置の真空を改善したり、微小な電流を測定するのでノイズの除去など測定精度が高まれば高まるほど対策にかなり苦労しました。研究の性格上、....

グリーンデバイス研究室http://mswebs.naist.jp/courses/guidance/25.html置の真空を改善したり、微小な電流を測定するのでノイズの除去など測定精度が高まれば高まるほど対策にかなり苦労しました。研究の性格上、何回もシリーズで実験を重ねたうえ理論づけてようやく成果が分かるので、忍耐が必要です。それだけに成功したときの達成感は大きい」と振り返る。また、不純物にデリケートに反応する有機トランジスタの電気的な特性を精密に調べるため、すべての測定を真空中でできる「電界効果熱刺激電流法」も開発した。その装置により、トランジスタの重要な特性であるオン・オフのスイッチに要する電圧(ゲート閾値電圧)が決まる仕組みを突き止めた。基礎と応用の両輪で研究一方、応用研究のテーマでは、最近、注目され始めた電波と光波の間の波長の領域にある電磁波「テラヘルツ波」を使い、透視した画像を影絵のように映し出す柔軟な大面積センサーがある。衣服の下に隠し持っていた不審物を発見するなどセキュリティ用の機材だ。この電磁波の特定の領域の光は水など特定の物質にだけ吸収されるので、その痕跡をつなげれば物質の種類も見分けられる。中村研究室ではテラヘルツ波を受けて電気が流れる有機半導体のセンサーを敷き詰めた撮像素子をつくるための研究を続けている。このほかにも多くのテーマがある。人の体温程度の熱で発電する有機材料の熱電変換素子はウェアラブルデバイスの電源などに使え有機薄膜トランジスタの定番材料であるペンタセン多結晶膜における結晶学的構造と対応するキャリア輸送バンド端プロファイル。独自の評価装置やシンクロトロン放射光による解析などを駆使して解明した。独自開発した評価装置たち原子間力顕微鏡ポテンショメトリ装置AFMPTHz時間領域電場変調分光装置THz-TD-EFMS四探針電界効果移動度評価装置FPP-FET電界効果熱刺激電流測定装置FE-TSCる可能性がある。有機材料を積み重ねて作ったウイルスサイズの微小な縦型トランジスタを1平方ミリあたり約1000万個も密に並べることでパワーを出し、スピーカーを鳴らすことにも成功した。「有機エレクトロニクスはシリコンと違って材料の選択肢が多く、独自の評価装置で物性を調べ、応用としてデバイスに結びつけられるところがとても面白い。ただ、新たに機能が上回る物質が見つかれば、また一から研究が始まるというところが大変ですが」と中村特任教授。だから「基礎と応用の両輪で研究しているわけで、視野を広げ、深めることでどんな材料にも対応できるというメリットがあります」と強調する。学生に対しても「基礎科学向き、応用向きとそれぞれ学生の志向に合わせてテーマを選び研究してもらっているので、広い視野で議論できます。とにかくよく考えてから実験し、結果が出たらよく考えることが大事です」と語る。研究を発展させる刺激がある中村特任教授は千葉大学で研究を重ね、松原特任助教ら研究室のメンバーとともに本学への着任が決まったあと、昨年3月の東日本大震災の影響で実験設備の移転などが遅れたものの、夏頃からNAISTで実験を再始動した。「千葉大ではグローバルCOEに参加しましたが、学部学科をまたいで研究者が集まりました。本学ではさまざまな分野の研究者が密なやりとりをしていて、あの活動に近いレベルと刺激が、すでにそのままある感じです」と話す。キャンパスの立地環境は都市部の千葉大と郊外の本学とでは異なるが、中村特任教授は趣味のオートバイから自転車に切り替え、1日最高100キロを走破することも。「本学は街中を通らなくてすみ、快適に走れます」。欧米、イスラエルなど海外との共同研究も盛んで、世界に視野を広げるのも中村特任教授の方針だ。中国からの博士後期課程2年の李世光さんは、有機半導体のテラヘルツセンサーを研究している。「有機半導体による安(上)ポリマー微粒子を用いた自己組織化プロセスによって形成された有機縦型トランジスタ(1セル分)の断面。(下)有機縦型トランジスタによってスピーカーから音楽を流すデモンストレーション。吉岡勇多さん落合慧紀さん李世光さん関東詩織さん戸松康行さん価なセンサーの開発を目指しています。日本の大学の研究や教育の人材、設備は素晴らしく、世界一の日本の半導体技術を学び、中国に帰ったら大学の教官になりたい」と抱負を語る。若い大学院生(いずれも博士前期課程1年)も意気盛んだ。有機半導体内の電気の流れを調べている落合慧紀さんは、「学部では光学を専攻しましたが、半導体の分野も知りたくて入学しました。本学はテーマ選びが自由なだけに、自主的に計画を立てて勉強する必要があり、その点が鍛えられます」という。テラヘルツセンサーを研究している吉岡勇多さんは「研究設備のよい大学として本学を選びました。電気系の専攻だったのですが、化学、物理など異なった専攻の出身者が多く、刺激になります。就職しても研究職につきたい」と張り切る。縦型有機半導体素子の研究を行う関東詩織さんは、「理学部では基礎研究だったので、応用をしたいと本学に入りました。実験で予想外の結果が出ても、きちんとした指導があるので、それはそれで楽しいのかなと思えるようになりました。素材開発のような応用の仕事につきたい」と意欲を見せる。熱電変換素子の研究をする戸松康行さんは「有機材料は熱電の理論がまだ完全に構築されていないので、すごい特性を持ったものがあるのではないかと期待しています。本学の学生はすごく意識が高いので、相談を持ちかけると一生懸命みんなで考えようという空気になります。アコースティックギターの同好会に入っていますが、まずは研究というところでしょうか」と話していた。SENTAN12