せんたんvol.21

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ソフトウェア工学研究室http://isw3.naist.jp/Contents/Research-ja/13_lab-ja.htmlコストを予測、削減する松本教授、門田准教授らの研究は幅広い。最近の企業との共同研究では、ソフトウェア開発状況のデータから、....

ソフトウェア工学研究室http://isw3.naist.jp/Contents/Research-ja/13_lab-ja.htmlコストを予測、削減する松本教授、門田准教授らの研究は幅広い。最近の企業との共同研究では、ソフトウェア開発状況のデータから、開発終了までに必要な人数と時間などを予測する技術の開発がある。たとえば、どれだけの時間、ソフトのどの部分を重点的に調べれば、テストのコスト削減とともに製品の信頼性の向上が図れるかを明らかにする。「ソフトはいろいろな機能の集まりなので、一般的に8割のバグが2割の場所に集中しているといわれます。仕様が固まっていなかったり、複雑なロジックが使われていたり、何度も変更があったり、複数の開発者が担当して作業に一貫性がみられないなどの低品質につながる部分を見つけて重点的にテストします」と門田准教授。ソフトを開発している企業から、作業中の変更の回数、過去のソフト開発のバグの発生頻度などの情報を提供された研究では、機械学習を用いた手法により予測の精度を上げることができた。また、開発者の作業内容を自動的に計測して日報のように記録するソフト「TaskPit」も作成した。データ分析やメールの閲覧などそれぞれの作業にどれくらいの時間を費やしていたか、日ごとに棒グラフなどに図示して一目でわかる。開発者にとっては、時間の無駄使いを反省し、有効に使うという自己分析のツールになる。ホームページに公開したところ、企業から予想外の反響があった。「このツールが普及し、独自に修正を加えて使うという形で研究者と実務者のコミュニティができればいいのですが」と松本教授は期待する。広がる人的ネットワーク研究の人的ネットワークを広げようと、昨年、「ソフトウェア情報学研究会」が結成された。国内の大学や企業の研究者など多方面で活躍している同研究室の卒業生を中心に連絡を取り合って情報交換し、年2回の研究会や国際的な研究集会を開く。松本教授は「本学の卒業生には優秀な人材が多く、本学で築いた連帯感をきずなに共同研究などを展開していきたい」という。海外との交流も盛んに行われている。留学生の受け入れでは2年前からインターンシップ制度を導入した。タイの大学の3年生を招き、春休みの約9週間、研究室で演習している。日本の大学の実情を知り、意欲を高めてもらうのがねらいだが、演習の内容は、国際学会で発表するほどのレベル。翌年の卒業時には、選抜されて正式に博士前期課程に入学することになる。この制度を経て留学しているパサコーン・ファナチッタさんは、設計図(ソースコード)が公開されて、独自に改良できるオープンソースソフトウェアの開発支援の研究を行っている。「インターンの間にも研究ができましたが、研究設備や指導など環境が非常に良いという印象でした。博士後期課程まで進んで、いずれは大学の教授になりたい」と夢を膨らませる。絶えず考え続けることが大切このように研究テーマや体制が拡充されるなかで、研究陣の高品質のソフトづくりへの意欲は高まっている。松本教授がコンピュータに興味を持ったのはインベーダーゲームなどが流行した時代で、その仕組みに強くひかれたのがきっかけ。大学に入り本格的にソフト研究に取り組んできた。「研究の対象がソフトという知的活動の産物なので、データに対しても通り一遍に分析するのではなく、あきらめないで時間をかけて見て、何か閃いたり、発想したりできると楽しいですね。とにかく、何か役立つものはないかと絶えず考えていることが大切です」と強調する。門田准教授は、小学校高学年からのパソコン少年でゲームソフトを作り雑誌に投稿していた。大学に入ってからは、クラシック音楽が趣味ということもあり、本格的な作曲ソフトも作製、公開していた。「大学院では、実際のソフト開発の現場で役に立つ研究が第一。その一方で,他の研究者のインパクトになるような引用されやすい研究が必要で、他の人が行っていないテーマを手掛けるようにしています」と語る。若手研究者も張り切っている。博士後期課程3年の伊原彰紀さんは、オープンソースのソフト開発のさいに、利用者にも開発者にも不具合の修復の予測時間などを伝えて、作業を支援する方法の研究が最終段階に入っている。「オランダ、カナダなど海外で学会発表や研究をさせてもらい、日本とは違った研究方法や発想を学べたことが楽しかった」と振り返る。博士前期課程2年の西薗和希さんは、ソフパサコーン・ファナチッタさん西薗和希さん伊原彰紀さん田中智也さん中野大輔さんトの大本のプログラムであるソースコードのバグを早く見つける方法の研究だ。「ソフトウェアエンジニアになりたくて、学部でのプログラムを書く研究以外に、この研究室でソフトの品質管理などについても学びたかった。タイでの一か月間の研究などさまざまな機会が与えられたのがよかった」と話す。同学年の田中智也さんは、オープンソースソフトウェアの流用を判別する手法がテーマで、ソフトを圧縮しファイルサイズを比較するなどの方法で、ソフトウェアのライセンス違反を見つける技術ができつつある。「大学院に入ってテーマが変わりましたが、研究室のテーマが多岐にわたっているので、伸び伸びとした環境でテーマを掘り下げることができるのがすごく魅力的です」という。博士前期課程1年の中野大輔さんのテーマはソフトウェアの不具合の自動予測で成果が出つつある。「どんなテーマでも、無理といわれることはなく、基本的に先生が全力でバックアップしてくれます」と意欲を見せている。ソフトウェア開発タスク計測システムTaskPitソフトウェア構築状況の可視化SENTAN08