せんたん vol.21

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システム微生物学研究室http://bsw3.naist.jp/courses/courses302.htmlか表に出てこない。しかし、「補完している遺伝子を同時に失わせれば、変化の程度がより明確になり、遺伝子同士の関係がわかる」。森教授はその....

システム微生物学研究室http://bsw3.naist.jp/courses/courses302.htmlか表に出てこない。しかし、「補完している遺伝子を同時に失わせれば、変化の程度がより明確になり、遺伝子同士の関係がわかる」。森教授はその方法として、雄から雌へと染色体DNAが移動する接合に着目。F因子という雄化させるDNAの運び屋を使って、2種類の1遺伝子欠失菌株から二重遺伝子欠失菌株を非常に効率的に作り出すことに成功した。ただ、大腸菌の約4000個の遺伝子のうち2個を欠失させる場合、その組み合わせは1600万通りにもなる。このため、手のひらほどのサイズの1枚の寒天培地に約1600種類の1遺伝子欠菌株を同時に培養してコロニーをつくり、そこに別の一種類の遺伝子欠失を同時に移動する方法と、その測定の自動化を行った。遺伝子発現制御や環境ストレスに対する制御に関与すると考えられる非コード低分子RNAについても同様の遺伝子欠失ライブラリーを作って解析を進めている。細胞構築のルールを探りたいすでに成果は出始めている。新たな補完経路の遺伝子や、ある酵素の遺伝子がないと解毒できないなど新たな未知機能ネットワークが見つかっている。また、グルコースなど炭素源からエネルギーやアミノ酸を合成する中心代謝経路といわれる解糖系、TCA回路に焦点を当てた研究では、蛍光を発するタンパク質の遺伝子を組み込み、酵素量の変化などを測定する定量的な解析を行っている。これまで明らかと考えられてきた現象も、実は現在の測定技術を用いることで、以外な事実も明らかになりつつある。システム生物学が大きく進んだ酵母の細胞内機能ネットワークと比較することで、真核単細胞生物と原核生物との共通点を探り、生命構築の基本ルールの探索を目指す。ルールが明らかになると、有用物質高効率生産など、大腸菌自体の設計に役立てる目標もある。さらに、この接合による遺伝子移動の方法では、細菌まるごとの大きさのDNAを導入できる。遺伝子操作がしやすい大腸菌でゲノムを作った後、抗生物質など有用な物質を生産することで知られる放線菌など、有用微生物に入れて改変する研究も進めている。森教授は「大腸菌については、過去50年の研究成果で遺伝子を除いたり、逆に化学合成したりすることができるようになってきました。しかし、どの遺伝子群を、どのような制御で存在させれば細胞が構築できるのか、というルールが分かっていない。その原理を探り当てていきたい」と強調する。木を見て森を見る日本は米国より早く、1989年から大腸菌のゲノム解析プロジェクトをはじめ、森教授は京都大学の助手時代に当初より関わった。当時はゲノムの自動解析機も普及しておらず、3年がかりで遺伝子100個ほどが並んだ領域の全貌が明らかになった。これまで遺伝子個々についてバラバラに研究していたものが、♂DonorCm RF plasmid regionChromosomeHfr,Δtarget::catoriTRecipient♀一歩進んで遺伝子の集合体が調べられるようになると、「美しい遺伝子ネットワークの全体像」を垣間みることができた。「これまでの研究が木を見て森を見ずと感じたのが最初の驚きでした」と森教授は研究の原点を振り返る。研究にまい進する中で、趣味は多彩だ。中学生のときから始めた硬式テニス、毎日のジョギングに加えてスキー、スキューバダイビングとスポーツ好き。一方でクラシックのピアニストを志した時期もあったが、「京大で学び、高名な指揮者になった朝比奈隆氏のような道もある」と当時のピアノの先生のアドバイスを受けて農学部に入学したところ、興隆期の分子生物学と出会って魅せられた、という。好奇心をバネに研究Cm RCm RKm RKm RChromosomedonoe gene ::catrecipient gene::kan若手研究者や学生も、遺伝子ライブラリーを有力なツールとして、研究に挑んでいる。中屋敷助教は、薬剤に対し感受性が変化する遺伝子欠失株の選抜と、その現象の分子機構の解明がテーマ。「ヒドロキシウレア(ヒドロキシ尿素)というDNA合成を阻害する薬剤を使っての研究で、遺伝情報を翻訳してタンパク質をつくるリボゾームなどに変異があると、活性酸素を発生させて細胞死を引き起こす機構を増強することなどが分かってきました。こうしたデータの因果関係を探っていくと細胞内の遺伝子の結びつきが明らかになってきます」と話す。「好奇心や興味を動機づけにして研究するというスタイルは、自分の経験からも結果的に良かったと思います」という中屋敷助教の趣味は、パズル、将棋、囲碁、チェス、数独と遺伝子の迷宮を解く研究にもマッチする。博士後期課程4年の竹内力矢さんは「二重欠失株作製方法の確立と解析方法の開発を進め、細胞構築のルールを探っています。学部で有用な微生物の選抜を研究していましたが、この研究室に来て、ネットワークの中で働く遺伝子の本質を見ることができるようになりました。本学は伸び伸び研究できることや、郊外にあって遊びの誘惑がないところがいい。大腸菌の接合を利用した、全遺伝子を組合せた2重欠失株による遺伝子間の遺伝的相互作用解析を進めている。より高効率に行う為に、寒天培地1枚あたり1500を超える大腸菌コロニーを一度にスタンプ可能な装置を導入し、行う。大腸菌全遺伝子の解析に3枚の寒天培地で済む。その後スキャナーを利用した自動分析装置も作成し、解析を行っている。背景の薄い緑と赤の図は、一つずつの遺伝子の組合せによる遺伝的相互作用の強さを示したもので、ヒートマップと呼ばれる。この方法を用いて、現在1600万(4000遺伝子の総組合せ)もの2重欠失株の解析を進めている。この解析から、細胞内の遺伝子ネットワークの普遍的なルール解明を目指している。博士号を取ったら海外の大学でポスドク修業をしたい」と夢は広がる。博士後期課程3年の大塚悠太さんは「目印のバーコード(遺伝子配列)が付けられている欠失株をすべて混合して、それぞれの株について個体数の変動を追い、機能との相関を調べる実験を行っています。一部の欠失株が優位に増殖し、機能が確定できるなど結果が出てきています。もともと発生学の研究をしていましたが、網羅的な研究で遺伝子ネットワークの全体像を見たくて入学しました」という。何事も手作りが好きで、データ処理も既存のソフトだけではなく、自分でプログラムすることもある。使いにくいため自分で縫ったという財布も見せてくれた。マレーシア出身の留学生、博士後期課程2年のヤン・ハン・テクさんは、欠失させるのが困難な必須遺伝子の研究をしている。「研究環境が最先端で、ものすごく楽しい。ドイツや米国、カナダで研究させてもらったし、本学での国際交流も盛ん。将来的には米国の薬品関係の企業で研究を続けたいと思っています。日本は大好きで、ハイキングや温泉によくいきます」と話していた。大塚悠太さん竹内力矢さんヤン・ハン・テクさんSENTAN10