せんたん vol.21

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知の扉を開く物質創成科学研究科レーザー光で生命の謎を解く物質創成科学研究科グリーンバイオナノ研究室細川陽一郎特任准教授バイオ研究の強力なツール生物は自然環境の変化に適応して生き抜く能力を持っている。た....

知の扉を開く物質創成科学研究科レーザー光で生命の謎を解く物質創成科学研究科グリーンバイオナノ研究室細川陽一郎特任准教授バイオ研究の強力なツール生物は自然環境の変化に適応して生き抜く能力を持っている。たとえば植物は、光合成に必要な太陽光に向かうほか、湿度や温度の違い、重力の方向などさまざまな環境の変化を敏感に察知し、状況に応じて体勢を立て直している。こうした生物の精緻で巧妙な環境応答の仕組みを知り、工学に役立てることはできないか。強力で微細な加工ができるレーザー光を使い、細胞一個のレベルで操作する技術を開発、駆使しているのが細川研究室だ。「レーザー光を使った計測技術によって生物に備わる環境感覚を学び、生物が培ってきた生存のための技術や原理を応用して、太陽電池や省エネデバイスなど環境を考慮した工学技術に還元することができないかと考えています」と細川特任准教授は説明する。この研究室には、「フェムト秒レーザー」と呼ばれるレーザー発振装置(超短パルスレーザー)があり、加工を施せるほどの強力なフェムト秒レーザーをバイオを対象にした分野で利用できる施設は全国でもまれである。この装置ではレーザー光を10-100フェムト(千兆分の1)秒という超短時間に照射する。この結果、熱発生よりも遙かに短い時間に光エネルギーをミクロな範囲に集中させることができ、針を刺すように周囲に熱の影響を与えずに穴を開けたり、1細胞に衝撃を付荷したりすることができる。レーザーを研究してきた工学畑の細川特任准教授が、「バイオ研究に使える」と挑んだのは慧眼だった。顕微鏡の培養細胞の試料に当てることで、数十ミクロンの範囲で爆発のような現象を起こし、その衝撃波により、細胞群に直接触れず、細胞を壊さずに引きはがす技術の開発に世界で初めて成功した。集光点の径が約1ミクロンに対し、細胞の幅が約10ミクロンだから、細胞1個単位で細胞そのものやその近傍にねらい打ちできる。バイオ研究の画期的なツールとしての応用ができるようになった。細胞の接着力が測定できたレーザー実験室は、3つの部屋が連動していて中央の部屋にフェムトレーザー装置が陣取り、両脇の部屋にはフェムト秒レーザー光照射による反応を測定する共焦点蛍光観察システム、タイムラプスシステム、光ピンセットシステム、原子間力顕微鏡(AFM)などを装細川陽一郎特任准教授11 SENTAN