せんたん vol.21

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巻頭対談男女で育む科学研究日本の科学イノベーションを支える若手研究者の育成が急務だ。その中で女性研究者、学生の果たす役割のウエイトが増し、十分に活躍できる研究環境づくりのプロジェクトも進んでいる。男女....

巻頭対談男女で育む科学研究日本の科学イノベーションを支える若手研究者の育成が急務だ。その中で女性研究者、学生の果たす役割のウエイトが増し、十分に活躍できる研究環境づくりのプロジェクトも進んでいる。男女が手を携え研究を盛り上げていくには、どのような理解、どのような対策が必要か。奈良女子大学の富﨑松代副学長と本学の片岡幹雄副学長が、科学者としての豊富な体験をもとに改善のための課題などについて話し合った。ー理系の学生、若手研究者をどのように育て、研究の実力を発揮してもらうか。とくに理系で増えている女性のパワーを生かす環境づくりなどについて話し合っていただきたいと思います。まず、大学・大学院の学生の現状はどうですか富﨑氏奈良女子大の理系、とくに理学部の学生の雰囲気についてお話ししますが、それぞれの意識の変化はなかなかつかみにくいところがあり、日本全体の学生の動向とそれほど変わらないと思います。ただ、学部の卒業研究の指導をしている段階で、これまでは「もっとできるところまでやってみよう」という意欲を感じたのですが、最近は、学部レベルでは、学生自身が適当なところで線を引き、見切りを付けていると感じることが時々あります。「このくらいでいいのではないか」と勉強をストップさせてしまい、「もう少し勉強して欲しい」と思うことがあります。「もう少し」という部分は、次に大きく発展するステップにつながることもある部分ですから、できるところまで挑戦してほしいと思います。片岡氏そうですね。自分で線を引くというのは、最近の若者には、よくありますね。大学院生はどうですか。富﨑氏修士課程で修了して企業などへの就職を考えている学生は、理論の深い部分に踏み込むのではなく応用の方向に向かうように感じます。修了後のことを自分なりに考えてのことかもしれません。博士課程への進学を考えている学生からは、できるところまでやってみたいという意欲を感じます。片岡氏若手を育てる側の女性教員の男女比はどれくらいですか。富﨑氏理系の場合、ようやく20%を超えたところです。理学部では全教員が約80人で、そのうち女性は16~17人です。片岡氏本学の場合、女子学生の比率は分野により異なります。バイオサイエンス研究科は35%ぐらい。情報科学研究科と物質創成科学研究科は20%を切ります。物質に所属する私の研究室には、これまで102人の学生が配属されましたが、そのうち28人が女性なので約28%。平均より少し多いです。大概が就職希望なのですけれども、女子学生だからといって不利なことは、いまはあまりないようです。博士課程に進学しても、情報と物質に関しては、大学に行ったり、企業に行ったりする人が割合多い。あとは、ポスドク(博士研究員)になります。そのような女子学生の動向から見ても指導する女性教員がもっと来てほしいなとは思います。富﨑氏女性教員の人数は。片岡氏本学全体の女性教員数は、教授が2人で情報と物質に1人ずついます。バイオの教授は1人いましたが、転出されて兼任です。准教授はバイオに1人だけなので、教授候補者が少なく、今後、増える見通しが立たないことになります。助教は全部で18人。そのうち12人がバイオ。情報に3人いますが、興味深いことにそのうち2人が外国籍。物質は3人で、元は5人いたのですがすぐに転出してしまった。女性教員の割合を20%から30%に増やそうとすると、助教は40~50%いないと、女性に来てもらうための他大学との競争に勝てないと思います。さらに女子学生もその割合ぐらい入学してもらう必要が出てくる。研究室に来たら、女性の方が積極的です。明るい女性が来たら、男子学生は一生懸命になりますから、そういう意味でもいいと思います。ー奈良女子大の場合は、研究室の雰囲気はどうですか富﨑氏すべてのことを女性自身がしないといけないのです。重たい物でも、実験道具などを運ぶのは全部女性なのですね。そういう意味ではたくましいと思います。やらざるを得ないところから始まるのですけれど、結局、それが自然な行動につながっていくのですね。机を動かすことから、高い所から物を下ろしてきたり、電源コードをつないだり、全て自分たちの手でしますので男性の力を借りることはありません。非常にたくましいです。教員は男性の方が圧倒的に多いのですけれども、助教は女性の比率が高い。学部生の実験ですと、先輩である女性の大学院生や、女性の助教が手伝うことが多いわけです。ここに着任したときから「ここの女性は違う」とずっと感じておりました。それはいまも変わりません。奈良女子大学理事・副学長富﨑富﨑松代とみさき・まつよ国立大学法人奈良女子大学理事・副学長(企画・研究担当)。理学博士。専門は確率論。男女共同参画推進室長、及び附属図書館長を兼務。キャリアパス形成支援、及び女性研究者の教育研究環境の整備に取り組み、女性人材の育成に努める。また、男女共同参画をテーマとした地域貢献活動にも尽力。01 SENTAN