せんたん vol.21

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子学生は中高で理系に興味を持っていても、理学部や工学部は選びにくいのではないか。私は、優れた女性研究者をずっと見てきていて、そこはもう男女の差は全然なく、本人の資質だけだと思っています。ただ、何人もの....

子学生は中高で理系に興味を持っていても、理学部や工学部は選びにくいのではないか。私は、優れた女性研究者をずっと見てきていて、そこはもう男女の差は全然なく、本人の資質だけだと思っています。ただ、何人もの優れた女性研究者を見ていて、かわいそうだと思うところがあります。文科省の委員会などに一度「女性」学者という形で取り込まれると、ありとあらゆる会議に参加を要請される。能力のある人は、かえってすごく仕事を抱えてしまう。そのような事情は変わらないといけないし、そのためには女性の教員はもっと増えないと駄目でしょう。ー富﨑先生は、九州大学理学部数学科出身で、周囲がほとんど男性でしたね。どのような感じで研究されてきましたか富﨑氏私は70年代の学生で、1年上の学年は数学科の定員40人のうち女性が2人で非常に少なかったのですが、私の学年は5人、次の学年は10人ぐらいいました。女子がなぜか増えました。理学部全体で見たときも、全ての学科に女性が一定数いました。理学部の会議室に時々学生が集まっていましたが、女性は積極的に参加していたように思います。女子の人数は結構多かったと思います。学生運動が盛んな頃でしたが、それとは別の学生の活動がありました。例えば九州地区の国立大学の数学科の学生が集まって数学を通して交流するなどの活動です。そのような場合女子学生が積極的に委員を買って出ていました。そのような時代だったのかもしれません。私が大学院に入り、だんだん数学を好きになり、研究者への道を考え始めた頃に、後輩の非常に優秀な女子学生が、学会発表や論文を書くようになっていたのに、結婚を契機に辞めてしまいました。ショックでした。なぜ結婚が数学の研究をやめる理由になるのだろうかということは、その後も私自身の心のなかにずっと残っていました。そのことが、いまのような研究者支援に結びついているかなと自分では思っています。その頃の女子学生は非常に活発でしたが、一歩社会に出ようとすると、途端にそこで縛られてしまう。「女性は家庭に入るものだ」という制約が支配しているのか。いまでもそれはあると思っています。数学の分野は家庭でも研究できるので女性に向いていると数学者の伊藤清博士も言われていたのですが。片岡氏この15年の間に私が見てきた博士課程の優秀な女子学生2人が、「結婚して夫を支える」という理由で辞めていきました。私もショックでした。研究か家庭かという選択をしなければならないというプレッシャーが女性の方に強いのかなというのはあります。一方では、物理学会長を務められた米沢富美子慶応大名誉教授やお茶の水女子大学学長を務められた郷通子名古屋大名誉教授のように、研究をなさって、なおかつ、家庭も大事にされたという例もあります。ー女性の研究者には未ださまざまなプレッシャーがかかっているようです。これから若手を育てていくうえで、望ましいあり方とは片岡氏「リケジョ」(理系女子)と言われて、女子高校生でもかなり理科が好きな人が多くなり、女子学生のための理系のサマースクールなど全国で行われていて参加者が増えています。でも、大学・大学院に行って教育を受け、学位を取った後に、ロールモデルとする女性研究者は、まだ数が本当に少ない。富﨑先生のような研究者がもっと多くいて、あの人のようになりたいということが見えるといいのかなと思います。私としてはできるだけ優れた女子学生を大事に育てて、それなりの活躍ができるような自立した研究者として育てて、それなりのポストにつける努力をすることぐらいしかできないのですが、そのさい、キャリアを積むためのキャリアパスは多様だということを示さなければならない。それは、できれば男女共同参画という施策のなかでも、「女子学生が勇気を持てる」「研究者になることに魅力を持てる」というよう持てる支援を」ー片岡氏なることに魅力を「研究者にな支援をする必要があるし、そのような大学でないとこれからは生き残れないでしょう。男子学生や留学生についても同じことは言えます。最終的には、自然な形で教員も学生も全体的に男女半々になった、というのが理想だと思います。富﨑氏そうですね。ロールモデルは、学生に近い世代から現れればいいですね。若い女性の助教とか講師、准教授クラスに。とにかく女性が増えることが望ましいなと思っています。それから、転出などの流動化は、研究の活性化の観点から好ましいことだと思っていますが、そのポストを引き継ぐ女性をあらかじめ育てていく必要があります。結婚、出産、介護などを理由に研究を断念せざるを得ないような事態には、やはり意識を変えて臨まないと駄目ですね。その人を追い込まずに、その人が研究を継続する意欲を失わずにすむような環境づくりと、周囲はあなたのことを理解していますというメッセージを送り続けなければいけない。こういう制度もありますと示すことです。女性に限らず男性も若い研究者が次の世代を支え、その人たちが「研究は面白い世界」というメッセージを送り続けることが大事です。片岡氏企業サイドも理系の研究者、開発者として女性を採用しないというような態度を取っていれば、まず改めないといけない。そこで、本当に女性の力を男性と同じように戦力として見る。結婚、出産ということがあっても、やはり働き続けられるのだという世界にしていくことも必要ですね。いまはちょうど過渡期なのかもしれない。富﨑氏そうですね。過渡期ですから、何か一部の施策に集中して助成金をつぎ込んで、少し過剰な支援に動くことがありますが、私自身は、それは誰のためにもならないと思っています。むしろ女性が抱えている問題の本質や全体のバランスを見て、適正で適度な支援をすることに気を付けるべきだと思います。片岡氏適正で持続的な支援ですね。予算が付いても先細りになると、できていたこともできなくなる。せっかく女性研究者の環境を整える動きが出てきたのだから、次世代を見通して支援を続けていきたいですね。SENTAN04