せんたん vol.21

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事業推進統括基幹研究室光情報分子科学研究室河合壯教授グリーンフォトニクス融合・萌芽研究チーム高効率光不斉反応グループ西山靖浩助教グリーンフォトニクス融合・萌芽研究チーム半導体サブバンドグループ武田さく....

事業推進統括基幹研究室光情報分子科学研究室河合壯教授グリーンフォトニクス融合・萌芽研究チーム高効率光不斉反応グループ西山靖浩助教グリーンフォトニクス融合・萌芽研究チーム半導体サブバンドグループ武田さくら助教光工学の研究拠点づくり物質創成科学研究科は、重点研究領域として「光ナノサイエンス」に取り組んできた。さまざまな物質の構造や機能について、光(光子)を使った手法により、ナノ(10億分の1)メートルレベルの世界で明らかにし、未知の技術開発の可能性を探る融合領域の研究。その成果は国内外から高い評価を得ている。こうした実績を背景に、新規事業として行われている今回のグリーンフォトニクス研究プロジェクトの体制は、「光情報分子科学研究室」(河合壯教授)、「微細素子科学研究室」(冬木隆教授)、「情報機能素子科学研究室」(浦岡行治教授)、「量子物性科学研究室」(柳久雄教授)、「有機光分子科学研究室」(山田容子教授)の5つの基幹研究室が参加。さらに、具体的なテーマの実現を優先する課題解決型の研究室として「グリーンデバイス研究室」(中村雅一特任教授)、「グリーンバイオナノ研究室」(細川陽一郎特任准教授)、「グリーンナノシステム研究室」(信澤和行特任助教)の3特定課題研究室が加わった。今回のプロジェクトを推進統括する河合教授は「低炭素社会をつくるための技術、省エネルギー化のための技術、そして太陽電池のような再生可能エネルギーをどのように実現し、低コスト化して社会を変えていくか。この3つの要素を含め、課題解決型で社会的な要請に応える研究を重視していく。さらに、それによって10年先の本研究科が、社会のニーズに機敏に対応できるような組織構造に変えていくことが、プロジェクトの大きな意義になります」と強調する。具体的なテーマのひとつは、クリーンエネルギーとして有望な太陽電池の開発。この分野では、冬木研究室がシリコン半導体などを材料にした高効率、高機能の素子について、すでに世界的な成果を上げている。一方で、柔軟な素材の太陽電池の研究では、山田研究室で有機薄膜太陽電池の開発が行われている。さらに、河合研究室は、基盤研究として100%の効率で光に反応するセンサー分子の開発研究に挑んでいる。また、特定課題研究室では、中村研究室が有機太陽電池など有機半導体材料にさまざまなエレクトロニクスの機能を付加する研究を進めている。このように各研究室が横断的に集まり、テーマを掘り下げていく中で、この体制を拡充するため、任期付きで採用したあと実績を評価して正規雇用となる「テニュア・トラック制度」を本学で初めて導入した。とくにNAIST方式として、准教授クラスで、研究室を采配できるPI(プリンシパル・インベスティゲーター)の能力を持ったハイレベルの人材を登用して新たな研究室を立ち上げる。河合教授は「本学の規模では、教授のマネジメント能力が問われるケースが多いので、そのような能力にも興味を持っている人材に参加してもらいたい」という。さらに、研究科内の若手研究者から独自のテーマを募り、プロジェクトの中で積極的に共同研究してもらう「融合・萌芽研究チーム」の体制も整えた。「次世代の研究の潮流を作っていく若手に、自分の興味や知識、アイデアをどのように全体のテーマとマッチさせるか。その方法を考える機会を作りたかった」と河合教授。このチームに参加している武田さくら助教(凝縮系物性学研究室)は、半導体の中を動く電子の重さを軽くする研究などに取り組んでいたが、「電子を軽くすることには限界があり、光に換えるための基礎研究をしたいと考えていたところプロジェクトのテーマと一致しました。LSI(集積回路)の中に光を出すシリコンを組み込むことで、省電力で動作が速いデバイスをつくりだしたい」と抱負を語る。「他の研究者と協力して研究ができるので、自分の領域を広げるのに役立ちます。いま基礎科学に軸足を置いた研究をしていますが、応用分野のデバイス製品にまでつなげればいい」と語る。西山靖浩助教(反応制御科学研究室)は、有機物に光エネルギーを吸収させて化学反応させる研究がテーマ。二酸化炭素(CO2)や水の温度、圧力を上げて気相と液相の境界がない状態の臨界点を超えると、溶解性が高い超臨界流体が生じ、これが有機溶媒のかわりのクリーンな溶媒として使える点に着目。その中で、鏡像のように2種類合成される立体異性体の一方を選択的につくる研究を続けているが「十分に光が当たる1辺1mmくらいのマイクロリアクターを使い、回収率を上げ、選択性を高める研究を始めたい。低電力の光源でも反応が進められるので、省エネも考慮できます」と話す。「熱では困難な反応が光を使うと1ステップでできるとしたら、天然物しかなかった薬剤など付加価値の高い薬を合成できます」と期待する。「実際にものづくりの現場の人と話す機会が多くなって、自分のアイデアをわかりやすく伝える方法など、すごくいい勉強をしています」と満足そう。プロジェクトは順調に進んでいる。河合教授は「本研究科のすべての教員が、社会に対する説明責任を意識しながら研究と教育を先導できる。これは本学の非常に特殊で恵まれた研究環境でできるということであれば、その意識はもっと強化しなければならない。プロジェクトを通じて、それができれば世界から一目置かれる研究機関にバージョンアップできると思います」と語った。SENTAN06