せんたん vol.21

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知能コミュニケーション研究室http://isw3.naist.jp/Contents/Research-ja/43_lab-ja.htmlアルタイムで自動的に声質変換するようなシステムを研究しています。本人が望むような声になるように複数のサンプルの声を混....

知能コミュニケーション研究室http://isw3.naist.jp/Contents/Research-ja/43_lab-ja.htmlアルタイムで自動的に声質変換するようなシステムを研究しています。本人が望むような声になるように複数のサンプルの声を混ぜる技術も研究しています」と戸田准教授は説明する。このため、さまざまな質の声を集める「ボイスバンクプロジェクト」を計画。このシステムを携帯できる装置に載せて、日常使えるようにする研究にも力を入れる。このほかにも、幅広いテーマを設定して取り組んでいる。人間の言葉を理解し、話せる機械(ロボット)の作製。大勢の中で周囲に迷惑をかけたり、傍聴されたりせずに話せる携帯電話。ウェブ上の膨大な情報(ビッグデータ)を処理し、対話をうまく進めるための知識として役立てるシステム。各個人に合った情報提供の方法(個人性モデリング)を探索するシステムなどだ。ユニークなのは、脳科学を使い、機械が対話する人の「えっ、常識と違う」という反応を察知し、翻訳ミス、対話の食い違いなど発見する研究で、これはスタートしたばかり。脳波の波形を測定して「正確に理解していない(空気を読んでいない)」と違和感を抱いたときに出る特徴的なパターンを検出しておき、同じパターンを機械がキャッチすれば警告する仕組みだ。いずれのテーマの要素技術も相互に関連し、組み合わせによって有力なコミュニケーション支援の手支援する段になる。これだけ多様なテーマに挑めるのは、本学情報科学研究科の新たな試みである「スーパーリサーチグループ(SRG)」として研究室の枠を超えて学内外の大学・研究機関と積極的に共同研究を行っているからだ。企業とは共同研究のほかに、学生の教育として実践にすぐに役立つカリキュラムの検討も進めている。世の中を変える研究が必要「自分の声をつくり出したり、分からない言葉があったらその場でささやいてくれたり、相手が外国人だと自動的に翻訳してくれたり。コミュニケーションに役立つ理想的なサイバースーツのような機能が開発できたらいい。共通の夢に向かって学生らとともに研究することが、教育にもつながるでしょう」と中村教授。「新しい研究と同時に世の中を変える技術をつくることが重要」というのが研究哲学だ。学生に対しては、自分の研究について本質をはずさず説明できるように「研究内容を一言で話せるようにする」と指導する。戸田准教授は「物事を考える癖をつけ、本当に理解するということを学んでほしい」と学生に呼びかける。「あとは楽しく研究してほしい」。本学については「大学院大学なので、外部から非常にモチベーションの高い学生がはいってきます。半面、入学後、学部生のときからの教育をカバーする努力は必要不可欠です」と打ち明ける。研究室のスタッフは国際的だ。サクリアニ・サクティ助教はインドネシア出身で、バンドン工科大学を卒業後、ドイツで博士号を取得した。グラム・ニュービッグ助教は米イリノイ大学を卒業後、京都大学で博士になった。中村教授もドイツ・カールスルーエ大学の客員教授も兼務している。まさに、欧米、アジアの世界的なコネクションをカバーした研究体制を整えている。学生は博士前期課程20人、博士後期課程4人の大所帯。アジアや欧米からのインターンシップも受け入れている。博士後期課程1年の田中宏季さんは、自閉症者のコミュニケーション支援がテーマ。「携帯端末でアプリケーションをつくり、無料で公開しています。自閉症の人は、自己表現がうまくできず、相手の気持ちや表情を読み取るのが苦手です。そこで、このような表情のときはこんな風な思いを伝えたがっているというのを教えるツールです。使った人から良い反応をもらったときは、役に立ったという実感があり、うれしい」と話す。博士前期課程2年の高道慎之介さんのテーマは、音声翻訳の際のテキストの音声合成。『ドラえもん』の「ほんやくコンニャク」を実現するために「いまのこもったような音質を改善したうえ、話者自身の声が出せるように個性を持たせる研究をしています」という。昨年の研究室の立ち上げ時に入学したが「設備を整えるなど自分で動くことの大切さを知る良い経験でした。情報科学は専門外だったので、専門用語を使う英語の講義が多いのは少しつらかったが、ようやく慣れました。進学し研究者になる自信もついてきました」と意欲を見せる。博士前期課程1年の神保希美さんは、難聴田中宏季さん高道慎之介さん神保希美さんウ・ビョウさん者を支援するテーマを探している。「健常者が難聴を体験するシステムの作製か、会話の内容が携帯電話などで簡単に文字になって理解できるようにするシステムか、どちらにしようか考えています。本学は、音声の研究が盛んということで選びました。少し授業が多いですが、おかげで毎日が充実し、負けてはいられない気持ちです」と率直に語る。博士前期課程1年のウ・ビョウさんは、中国・大連理工大学を卒業したあと本学へ留学。「外国人に向けて自然な日本語、とくに中国とは違った敬語表現に注目して翻訳できるようにしたい。日本語は本当に難しいので、外国人のサポートができたらと思います。本学の学生はまじめですごく勉強するので私の励みになります」という。趣味は書道と旅行で、関西方面はすでにほとんど訪ね、「日本の生活がますます好きになりました。日本で就職したい」と張り切っている。声質変換用DSP(デジタルシグナルプロセッサ)発声障害者の声から自然性の高い声へとリアルタイムで変換するDSPの構築に取り組んでいる音声翻訳システム解説図脳波測定装置SENTAN08