自在に花を咲かせる夢のホルモン(フロリゲン)を世界に先駆け発見!

2007/04/16

〜イネの遺伝子研究により70年の謎を解明
 開花の薬剤の開発 穀物の増収や四季を問わない園芸作物の栽培に期待〜

【概要】
思い通りの時期に花を咲かせる植物のホルモン(花成ホルモン、フロリゲン)を奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 植物分子遺伝学講座の 島本功教授と大学院生玉置祥二郎らが世界に先駆け発見した。この植物ホルモンは、70年前にロシアの植物学者によりその存在が提唱され、夢のホルモンと期 待されながら取り出すことができず、現在まで解明されていなかった。島本教授らは、このホルモンがイネの開花を促進する遺伝子(Hd3a)により作り出さ れたタンパク質であることをつきとめたもので、分子生物学の手法を使い、イネにこの遺伝子を導入したところ通常50-60日要する日数が15-20日で花 を咲かせることができた。

花成ホルモン(フロリゲン)は、植物が日長や気温などの環境の変化の刺激を受けて葉で作られたあと、花を作る組織である茎の先端部に移動し、花を咲かせる ホルモンとして提唱されてきた。しかし、その実体は不明で、過去70年間にわたり、世界中の植物学者がその抽出を試みてきたがすべて不成功に終わってい た。花成ホルモンはすべての植物に共通の普遍的な物質であることから、その発見は、自由自在に「花咲じいさん」のように、好きな時に植物の花を咲かせる技 術につながるだけに、研究者がしのぎを削っていた。花成ホルモンは、園芸植物だけでなくイネや麦などの穀類においても共通であることから、島本教授らの花 成ホルモンの発見は、花を咲かせる薬剤の開発や穀類の増収にも結びつく可能性が示された。この成果は4月19日発行の米科学誌「サイエンス」のサイエンス エクスプレス(速報)としてオン・ラインで掲載される。また、この論文に関するニュース記事も同時にサイエンス誌に掲載される。

島本教授らは、イネの花成を促進する遺伝子として知られているHd3a遺伝子に、緑の蛍光を発して目印となる発光タンパク質の遺伝子GFPを結合させたう え、茎や葉の内部で栄養分が移動する通り道である維管束という部分で働くような性質を持たせた合成遺伝子を作り、イネに導入した。その結果、この遺伝子を 導入したイネは開花時期を短縮できた。さらに、緑の蛍光を発するタンパク質(Hd3a:GFP融合タンパク質)が葉および茎の維管束で観察されたのみなら ず、花を形成する茎の先端(茎頂と呼ぶ)においても観察された。Hd3a:GFP融合タンパク質はもともと葉のみで作られ、葉や茎の維管束、さらには茎の 先端ではほとんど存在しないことから、Hd3aタンパク質が葉で日長の変化などの環境要因によって作られ、そのタンパク質が茎の先端に運ばれ花を咲かせる ことが明らかになった。この結果によりHd3aタンパク質が花成ホルモン(フロリゲン)であることが証明された。

【解説】
どうして発見できたのか?
今 回の発見は新しく分子生物学の方法を用いたことが成功につながった。この発見に最も貢献した研究技術は、光るタンパク質GFP (Green Fluorescence Protein) をフロリゲンにつなげ、行動を追跡する目印としたことで、植物組織の中でタンパク質の存在を見つけることが可能になった。つまり、タンパク質の植物内での 居所を追跡できるようになったことである。さらに、そのためには植物への遺伝子の導入と蛍光顕微鏡による解析技術の最近の進歩も大きく貢献した。つまり、 遺伝子の働きを解析するさまざまな分子生物学の方法の進歩がこの発見の原因であったと言える。

花成ホルモン(フロリゲン)はどうして茎の先端に運ばれるのか?
今回の研究においてはフロリゲンの移動のしくみは明らかになっていない。維管束の最先端は花を作る茎の先端まではつながっていないため、いったん維管束から出たフロリゲンは何らかの機構で茎の先端まで移動すると想像できるが、これらは今後、解決すべき課題である。

花成ホルモン(フロリゲン)の発見はどういった効果をひきおこすのか?
花 好きな人でなくても好きなときに好きな花を咲かせられたらどんなにいいだろうと思うときがある。花成ホルモン(フロリゲン)は、ロシアの学者チャイラキア ンが1936年、花を咲かせる日照条件で育てた植物の葉を切り取り花の咲かない日照条件で育てた植物に接ぎ木したところ、後者にも花が咲いたことから、そ の存在を提唱した。これまで70年にわたって植物学者を惹きつけてきただけでなく、一般の人にとってもその解明は夢とされてきた。今回の発見によって花を 咲かせるクスリの開発も不可能ではなくなった。さらに、フロリゲンはどの植物にも共通な普遍的な花成ホルモンであることから、すべての花や作物の花を咲か せるのに役立つ。つまりこの発見により、園芸分野および穀類の増産に大きな可能性を生み出す事が期待される。

【用語説明】Hd3a 遺伝子
イ ネの開花促進遺伝子として単離され、島本研究室においてこれまで、開花の短日植物(イネ、アサガオ)と長日植物(ダイコン、シロイヌナズナ)の違いが、 Hd3a遺伝子の発現の制御の違いによって起こること(Nature誌に2003年発表)や、夜間に受けた微量な光によりイネなどの開花が阻害される「光 中断」の現象がHd3a 遺伝子の働きの阻害によって起こること(アメリカ植物科学学会発行のPlant Cell誌に2005年発表)などを見つけている。

【添付写真の説明】
茎の先端(茎頂:将来花ができる場所)に存在する花成ホルモン(フロリゲン)。GFPタンパク質と融合した形で存在しているために緑に光って見える。

【本研究内容についてコメント出来る方】
福田裕穂 教授  東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
 電話:03-5841-4461  FAX:03-3812-4929 E-mail:fukuda@biol.s.u-tokyo.ac.jp
和田清俊 教授 新潟大学理学部生物学科
 電話・FAX 025-262-6369 E-mail:ktw@bio.sc.niigata-u.ac.jp     
【本件に関するお問い合わせ先】
バイオサイエンス研究科 分子生物学専攻 植物分子遺伝学講座 教授 島本  功
 TEL 0743-72-5500/5501  FAX 0743-72-5502 E-mail:simamoto@bs.naist.jp   

このトピックにつきましては、以下のとおり報道されました。
2007年4月19日 朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞、NHK奈良
2007年4月20日 毎日新聞、読売新聞、日刊工業新聞、奈良新聞

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