世界初! バイオ技術でガラス基板上のメモリ動作に成功

2007/06/12

~装着できる柔軟なシートコンピュータの実現にさらに近づく~

【要旨】
奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 冬木隆 教授、浦岡行治准教授らの研究グループは、バイオ技術を用いて作製した全く新しい高品質の薄膜トランジスタメモリを動作させることに世界で初めて成功し た。この成果によって、ユビキタス時代に不可欠な衣服につけられるシートコンピュータなどフレキシブルな次世代の情報端末の実現にさらに大きく近づくこと となった。
これまで、本グループは、情報(電荷)蓄積の担い手であるナノ(10億分の1)メートルサイズの極微小な粒子を整然と並べて高密度に均 一化するという形で品質を向上させる技術を開発。バイオ系材料を用いてメモリーの基板となるシリコン薄膜の低温結晶化にも成功しており、今回はさらにこの 材料を用いて薄膜トランジスタ型のメモリの試作に取り組んでいた。
この研究成果は、7月に淡路で開催されるフラットパネルの国際会議(AM-FPD2007)で発表される。

【特徴】
バイオ技術を使用して、従来のシリコンではなく、困難とされていたガラス基板の上にメモリを作製することでさまざまな基板上に作製できる可能性を示した。
生体の細胞に含まれ、金属分子を包み込み貯蔵する球殻状タンパク質分子(フェリチン)を利用し、サイズの均一なナノ粒子を作製し、高密度化の道を開いた。
球殻状タンパク質が持つ自己組織化の能力(整然とした構造を自然に形成する能力)を利用し、シリコン基板上へのナノ粒子を高密度に2次元(平面上に)配置し、高精度なメモリー作製につなげた。
メモリー作製後に不要なタンパク質を選択的に除去する技術の確立により、ナノ粒子の分散配置と半導体素子のタンパク質無汚染を実現し製造工程を簡便にした。
ナノ粒子を単層で等間隔に並べるなど改質技術の確立により、ナノ粒子への電荷の充放電を達成し効率を向上させた。

【内容】
シー トコンピュータなど次世代の情報端末を実現するためには、ガラス基板やプラスチック基板などの上にメモリ素子を作る必要がある。しかし、LSIのように高 温熱処理に耐えられないために、作製プロセスは500度以下でなければならない。本グループは、今回、フェリチンタンパク質にサイズの均一な酸化鉄粒子 (直径7nm)を内包させたうえ、基板上に高密度に配置した後、タンパク質を選択的に除去する手法を開発することで、さまざまな素材の基板に低温で処理す るという課題を解決した。作製したメモリ素子は、適切に機能していることを示す必要条件として、スイッチをオン・オフしたさいの電流-電圧特性(ヒステリ シス)が満たされており、ナノ粒子への電子の充放電が初めて確認された。

【効果】
本技術は、先に発表したシリコンの低温結晶化技 術と併せることによって、低温のフレキシブル基板の上に、スイッチング素子やメモリ素子を同時に作製することが可能となり、シートコンピュータなどの次世 代情報端末の実現に、さらに近づいたといえる。今後、注目される電子タグの実現にも、有望である。

【研究の位置づけ】
文部科学省が経済活性化に資するリーディングプロジェクトとして2003年度より開始したものであり、バイオ技術と半導体技術の融合を目指す松下電器がリーダーとなって産学連携の研究開発を推進中である。

【本プレスリリースに関するお問い合わせ先】
○奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 微細素子科学講座 浦岡行治
TEL 0743-72-6071, E-mail:uraoka@ms.naist.jp

【用語】
フェリチンタンパク質
外 径13nm、内径7nmの球殻状タンパク質の一つで、哺乳類が肝臓などに持っている鉄貯蔵タンパク質である。ゆえに鉄酸化物が内包されている。フェリチン タンパクを基板上に展開すると、タンパク分子の持つ特性によって基板上で整然とした配置を形成する(自己組織化と呼ぶ)。

シリコン薄膜の作製方法
非晶質のシリコン薄膜の上にフェリチンタンパクを吸着させ、UV(紫外線)処理、700℃程度の温度で瞬間熱処理することにより、粒径10μmの結晶を作製することに成功しました。結晶の粒の大きさも業界最高レベルです。

薄膜トランジスタ型メモリ
蓄積電極(フローティングゲート)中の電荷の有無で情報を記憶する不揮発性半導体メモリで、フラッシュメモリとして広く使用されている。蓄積電極を連続膜でなく、今回のように、ナノ粒子で形成すると、電荷の保持性能向上が期待される。

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