平成20年度科学技術分野 文部科学大臣表彰「科学技術賞」受賞

2008/04/11

奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科の大門寛教授らが、文部科学大臣表彰「科学技術賞」を受賞し、4月15日(火)の午前12時から、虎ノ門パストラル(東京都港区虎ノ門4の1の1)で表彰式が行われます。
受賞については、文部科学省から、3月14日付けで発表されていますが、今回は各受賞者の研究内容など詳細について下記の通りお知らせします。(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/03/08030609.htm)


【受賞者】
大門 寛 (54歳)
現職 国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科  教授

松井 文彦 (35歳)
現職 国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科  助教

松下 智裕 (39歳)
現職 (財)高輝度光科学研究センター 制御・情報部門 主幹研究員

郭 方准(37歳)
現職 (財)高輝度光科学研究センター 産業利用推進室 研究員

【研究テーマ】
円偏光放射光を利用した立体原子写真法の研究

【業 績】
地 球上のあらゆる物質を構成する原子の構造を直接、立体的に見ることは、人類の夢の一つであり、また、新素材の開発や固体の研究の出発点である。従来は電子 顕微鏡やX線回折、走査トンネル顕微鏡などの装置で原子配列を解析していたが、これらの物理学的な手法では平面に投影した像や回折パターン、もしくは最表 面の凹凸など間接的なデータが得られるだけで、直接、内部の様子まで見ることはできなかった。
 本研究では、大型放射光施設であるSPring- 8の円偏光軟X線という強いエネルギーを持つ光を試料に照射して、飛び出した光電子がどのように散らばるか、その放出角度分布を独自に開発した「二次元表 示型球面鏡分析器(ダイアナ)」という装置で一度に測定することにより、歪みの無い原子配列の立体写真を得ることに成功した。原子は原子核の周囲をエネル ギーの異なる電子が回る構造だが、その中心に近く深く束縛されている準位から放たれる光電子を利用しているため、エネルギーを選別することにより、特定の 元素の原子の周りの構造を直接立体視することができる。
 本研究により、銅、グラファイト、ダイヤモンドなどの結晶や薄膜など多くの試料の原子配列立体写真が撮影されてきている。最近は測定時間が短くなり、ゆっくりした原子の動きを見ることも可能になりつつある。
 本成果は、固体物理の研究のみならず、触媒の反応を解析するなどの化学分野や、DVDなど原子配列が重要な材料開発、分析に寄与することが期待される。

主要特許:特許第3905338号
「立体原子顕微鏡、原子配列の立体観察方法、及び原子配列の立体写真測定方法」

主 要論文:「Circularly polarized X-ray photoelectron diffraction - Stereo photograph of atomic arrangement, H. Daimon, F. Matsui, F. Z. Guo, T. Matsushita, J. Electron Spectrosc. Rel. Phenom., 156-158, 1-9, (2007).

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