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概要

せんたん JAN 2018 VOL.26

の扉を開く量子のふるまいを計算し、化学反応の未知の経路を探索する物質創成科学研究科マテリアルズ・インフォマティクス研究室の研究者との融合領域として新たに有用な材料を生み出すための設計指針の構築を目指しています」と抱負を語る。不斉触媒と発光材料畑中美穂特任准教授吉村誠慶博士研究員有用な材料の設計指針を構築目的の機能を思い通りに果たす物質を化学反応で得るため、科学者らは膨大な回数の実験を重ねてデータを蓄積し、試行錯誤を繰り返して成果を築き上げてきた。その中で、最近、理論化学の研究に大きな進展があった。物質を構成する個々の原子が持つ電子の「量子」としての性質を考慮しつつ、物質の反応前の情報のみから、起こり得る反応の途中経過を、ほぼ自動的かつ網羅的に弾き出す「自動反応経路検索(G R R M)」という日本独自の方法などが開発されたからだ。これで実験データだけでは測り知れない反応も把握して効率的に結果を予測できるようになるなど新材料の研究開発に理論計算の占めるウエイトが高まっている。畑中特任准教授は「理論化学や計算化学の手法を使って、化学反応や機能性材料が働く機構を明らかにします。また、取得した計算データを人工知能(AI)の機械学習などの技術により解析し、実験系▲自動反応経路探索による化学反応のメカニズムの解析。反応経路上のポテンシャルエネルギー曲面の傾きを調べながら、安定構造や遷移状態の構造を探索していく。主な研究テーマのひとつが、鏡像関係にある2種の立体構造を持つ物質(光学異性体)のうち、必要な片方だけが生成するように化学反応を進める不斉触媒。この触媒が働くときの複雑なメカニズムについて、G R R Mの手法を使って解明する。これまで、有機化学合成にひんぱんに使われてきた「向山(むかいやま)アルドール反応」という炭素と炭素を結合する反応について、レアアース(希土類元素)を含む不斉触媒が、水中でのみ反応を促進する