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概要

せんたん JAN 2018 VOL.26

TOPICS最新の研究成果DNA損傷で植物の成長を一時停止、ストレスに自在に対応する新たな仕組みを解明~食糧や植物バイオマスの増産に期待~▲根の先端における抑制型転写因子とGFPの融合タンパク質の蓄積バイオサイエンス研究科植物成長制御研究室梅田正明教授バイオサイエンス研究科植物成長制御研究室の梅田正明教授らは、植物がDNAに傷を負うというストレスがあった時に細胞分裂を一時停止して成長再開の準備を整えるという新たなメカニズムを発見した。動物の場合、DNAに重篤な損傷が与えられると細胞死に至るが、植物はストレスに曝されても、細胞分裂のオンオフを切り替えて生き続ける巧妙な生存戦略を裏付けた。シロイヌナズナのDNAに損傷を与えると根の伸長が停止するが、梅田教授は細胞分裂を調節する遺伝子の活性制御に関わる転写因子の変異体では根が伸び続けることを発見した。そこで、この転写因子について解析したところ、DNA損傷を受けるとタンパク質が顕著に蓄積して、細胞分裂を促進する働きをもつ遺伝子群の発現を抑制することを明らかにした。これらの遺伝子群の発現は、この転写因子と近縁の転写因子により逆に誘導されることから、植物はストレスの状況に応じてこれらの転写因子を使い分けることにより、成長を自在に止めたり再開させたりする仕組みをもつことが明らかになった。この成果は、英オンライン科学誌『Nature Communications(ネイチャーコミュニケーションズ)』に掲載された。てんかんに対する局所脳冷却の効果をシミュレーションで検証~難治性てんかんの新たな治療の実現へ~?局所脳冷却のヒトへの適用のイメージ情報科学研究科数理情報学研究室久保孝富特任准教授情報科学研究科数理情報学研究室の久保孝富特任准教授、池田和司教授らは、山口大学、熊本大学との共同研究で、脳の局所の温度を下げることで、てんかん発作の抑制効果が期待できる局所脳冷却の作用メカニズムについて、ラットの実験データをもとにシミュレーション実験を行った。その結果、神経細胞の結合部分だけではなく、神経細胞の電気的興奮(発火)に関わる過程にも冷却の効果が現れるという条件によってはじめて局所脳冷却効果への感受性の違いが再現されることが分かった。この成果は、国際オンライン科学誌『PLOSComputational Biology(プロスコンピュテーショナルバイオロジー)』に掲載された。てんかんは慢性の神経疾患で、突然に生じる反復性の発作が特徴。神経細胞が過剰な電気的興奮(発火)を起こすことによりてんかん発作が生じる。薬物治療、外科治療が困難な場合などでも適用可能な新たな治療法として、局所脳冷却の研究が行われている。これまでの実験研究では、過剰発火に対する局所脳冷却の効果は条件などによって異なり、発火の強度・頻度ともに減少する場合と、発火の強度は減少するが頻度は変わらないか、やや増える場合と2つのタイプがあり、適切な冷却条件を探す必要があった。今後、局所脳冷却の脳保護効果についても調べていく。