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概要

せんたん JAN 2018 VOL.26

NAIST?OB・OGに聞く?「謙虚さは必ずしもプラスにならない。自分の意志をしっかりと持ち、それを表明していけば自ずと道は拓けていく」林有吾Yugo Hayashi奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科分子複合系科学研究室助教研究室の一角にてProfile : 2014年度博士後期課程修了(物質創成科学研究科超分子集合体科学研究室)私はNAISTを修了してから2年間の博士研究員を経て、2017年4月に本学の助教として採用されました。博士研究員時代も本学で勤務していたので、NAIST歴はもう8年目になります。その間、学生宿舎~ゲストハウスせんたん~高山サイエンスプラザ~職員宿舎と、学内を転々としています。学生時代に所属したのは超分子集合体科学研究室(廣田俊教授)です。ここではドメインスワップと呼ばれるタンパク質の多量化現象について研究しました。タンパク質はアミノ酸配列に従って決まった形になるという特徴があり、この「決まった形」になる過程は「折れ畳み」などと表現されます。ドメインスワップは折れ畳みの途中でタンパク質の鎖がもつれ、分子が2個、3個とつながっていくことで起ります。前期課程1年の頃、今から思うと簡単な実験だったのですが、初めてドメインスワップ多量体の作成に成功したときは当時とても感動したことを覚えています。そしてこの体験が今日まで続く研究生活の出発点になったと思います。学位取得後、超分子集合体科学研究室で博士研究員として働きながら次の職について悩んでいたとき、なんと隣のラボの上久保裕生准教授(現教授)から「一緒にクモ糸の研究をやらないか」と声をかけていただきました。まさに天からクモの糸が降りてきたようでした。クモ糸はフィブロインというタンパク質の多量体です。クモ糸は優れた物性を持つため昔から注目されていましたが、原料タンパク質からの完全なクモ糸の再現は誰も成し得ていません。現在は学生時代に培ったタンパク質多量体形成に関する知見を活かしつつ、フィブロインがどのようにクモ糸という決まった形に折り畳まれるのかを日夜研究しています。さて、学生時代の思い出で特に印象深いのが、研究科の留学プログラムで3か月間アメリカの大学で語学研修やラボステイを経験したことです。NAISTは留学生が多く国際色豊かな大学ですが、実際に日本を出て海外の文化を経験することは何にも代えがたいものがあります。NAISTには海外経験を積むための機会がたくさんあります。現役学生の皆さんはもしチャンスが巡ってきたらぜひ行きましょう。海外経験以外にも学外での実験や共同研究など研究生活でしか経験できないことがあります。最近、自分自身反省していることでもあるのですが、謙虚さは必ずしもプラスにならないということです。自分の意志をしっかりと持ち、それを表明していけば自ずと道は拓けていくと思います。皆さんが充実した研究生活が送れることを願っています。休日は遠出することもあります。東京上野の国立博物館にて。