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概要

せんたん JAN 2018 VOL.26

~イノベーションを先導するエネルギー材料の新潮流~脱炭素社会におけるハウスメーカーの戦略積水ハウス常務執行役員・環境推進部長兼温暖化防止研究所長特別講演石田建一氏積水ハウスは単に家を売っているだけではなく、お客様に幸せな人生を提供しています。それには、健康、快適、安全、安心に暮らせる住まいが必要ですが、まず前提として健全な地球環境であることが必要で、このため当社は気候変動防止に関して積極的に取り組んでいます。そこで、私が担当している地球温暖化対策を中心に話します。住宅から排出される二酸化炭素(CO2)は増加傾向にあります。生産時のエネルギーよりも、住んでから消費するエネルギーの方がずっと大きいので、住宅から排出されるCO2を削減する方が効率的です。積水ハウスは1999年に環境未来計画を発表し、環境保全に取り組んできました。2008年の洞爺湖サミットでの「日本は2050年にはCO2の排出を60~80%削減する」との政府の発表を受けて、「2050年にライフサイクルでCO2をゼロにする」という脱炭素宣言を日本の企業でもっとも早く行いました。この目標達成に向けて、2009年から快適に住みながら、CO2を大幅削減「グリーンファースト」を開始し、さらに2013年からネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)である「グリーンファーストゼロ」に進化させました。2 0 16年度には新築の戸建て住宅のZ E H比率は74%に達し、累計では2万6000戸を超えています。我々の環境戦略の特徴は事業戦略と一致していることです。ZEHの販売数が増えれば、当社の業績は向上し、地球環境がよくなり、ユーザーも喜ぶというまさに「三方よし」のスキームです。これからの課題は、賃貸住宅とマンション等の集合住宅のZEH化です。このタイプの集合住宅の数を増やして、ユーザーが選択できるマーケットをつくることが先決。省エネ住宅であれば光熱費などのコストを押さえられ、入居者にとっても大きなメリットに繋がります。今後も、快適でありながら、地球の環境をよくする住宅の普及を推進していきたいと思います。次世代エネルギーエレクトロニクスを牽引する新しい半導体材料奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科教授浦岡行治変換効率の高い太陽電池の実現を目指し、材料、製造プロセス、素子構造など多様な観点から研究しています。まず、幅広い波長の光を吸収できるナノ(10億分の1)メートルサイズのシリコンナノワイヤを均一につくる方法を開発。従来のシリコン半導体と組み合わせて、これまでの変換効率の限界(25%)を超える30%以上を出そうとしています。また、原材料を塗るだけで低コストにつくれるペロブス型太陽電池を実現する材料について、フランスでトップのエコールポリテクニーク大学と国際共同研究に取り組んでいます。一方、電気自動車など未来の乗り物の電力制御に必要なパワー半導体材料として、窒化ガリウムの研究に取り組んでいます。我々独自で開発した熱処理法でその高品質化に成功しています。やわらかい熱電材料による革新的熱電変換素子の創出奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科教授中村雅一モノのインターネット(IoT)の普及により、個別の電源が必要な電子機器が増えるため、光、熱など身の回りのエネルギーを電気に変えて使う研究が進んでいます。中でも熱は光よりもエネルギーが高密度であり、常在しているので有望です。そこで、温度差により発電する熱電材料について、有機物を使って「やわらかい」材料をつくり、利便性や機能性を高める研究をしています。カーボンナノチューブ(CNT)という導電性の高い材料を使うのですが、熱伝導率が高過ぎて出力が出ない。このため、CNTの間に半導体粒子を包んだ特殊なタンパク質を挟み込んで連結したところ、電気は流すが、熱は通さない材料ができました。今後、体温での発電などウェアラブルな用途を考えています。