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概要

せんたん JAN 2018 VOL.26

新しい有機エレクトロニクス材料に向けたグラフェンナノリボンの合成戦略奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科教授山田容子シリコン半導体素子の集積度が限界に近づく中で注目されているのは、鉛筆の芯に使われる黒鉛を一層だけ剥がし取ったグラフェンに代表されるカーボンナノ材料で、非常に導電性が高い材料です。われわれは、その中でリボン状の形状を持つグラフェンナノリボンの合成法を研究しています。グラフェンナノリボンは幅・長さや縁の形状によって半導体になったり、金属の性質を持ったりするので新たな有機エレクトロニクス材料として期待されています。実用化には一定の寸法や形の材料を大量に作る必要がありますが、ベンゼン環という6角形の平面構造分子が多数つながったグラフェンのような材料を有機化学的に合成するのは難しいのです。このため、溶媒に溶けやすい前駆体ユニットを連結して伸長させ、最後に平面分子へと変換する独自の戦略で合成に挑戦しています。光エネルギーを貯蔵・変換する高感度分子材料の提案奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科副研究科長・教授河合壯光を当てると分子の構造が変化して着色するフォトクロミック分子材料を研究してきました。特徴は、光子が無駄なく反応に使われることです。この研究の過程で、電気を流すと電子の働きがドミノ反応のように増幅される分子を発見しました。こうした現象は、光を熱エネルギーに換えて蓄積するシステムに使えます。無色の状態に光があたると、エネルギーを貯めこんだ状態で着色し、これを電気で刺激することにより、無色にもどる間にエネルギーを放出させられます。現段階では、このエネルギーは、1日置いても98%が蓄積されていて、昼間に変換した電気を夜間に使うことができます。シンプルな構造なので維持管理のメリットもあり、将来のエネルギー貯蔵系になりそうです。パネルディスカッション■石田建一氏■浦岡行治氏■中村雅一氏■山田容子氏■河合壯氏<セッションコーディネーター>藤堂安人氏(日経BP総研クリーンテック研究所主席研究員)―今後の太陽光発電の開発に望む改善点は。石田浦岡今後残されているのは、マンションなど高層ビルが問題です。屋根の面積がないので壁に付けますが、太陽光電池の耐久性が20―30年なので、このサイクルで外壁をやり換えているとコストがかかる。壁の材料と一致するように耐久性を強化してほしいと思います。太陽電池の劣化の問題です。従来のシリコンの半導体を集合住宅やメガワット級の太陽光発電所で使う場合、戸建て住宅よりもさらに厳しい信頼性が要求されます。太陽光パネルを集合的に組み合わせた場合、非常に高い電圧が発生し、そのときに、ガラスの中の不純物のナトリウムが、半導体の中に侵入して、劣化を起こすことが問題になっています。成熟した技術も使い方によっては新たな劣化現象が出中村山田てくるわけで、そのメカニズムを調べて、解決したいと思っています。有機材料の特徴や機能を生かしたデバイスを作ろうと思っています。例えば、2種類のポリマーを混ぜて塗るだけで太陽電池の基本的な機能は出来上がります。電極も含めて壁に塗るだけで太陽電池ができることが理想です。そうすれば、寿命が短くとも、頻繁に塗り替えることで機能を保たせることが将来できるかもしれません。私は低分子の有機薄膜太陽電池も研究しています