ブックタイトルSENTAN せんたん JAN 2019 vol.27

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概要

SENTAN せんたん JAN 2019 vol.27

科学の研究が行われます。そして、この時代の先には、世界的な人口増、資源の枯渇、災害の増加などが予想され、そのような危機を乗り越えられるだけの実力を人間が持たないといけない。このため、理研では、ビジョンを持って議論し、イノベーション(技術革新)を設計するイノベーションデザイナーを雇用しています。未来社会はどうあるべきかについて、さまざまなシナリオを提示して、研究者とともに考える。科学が分野別に進展しバラバラになっている時期に、このように統合化し、多くの研究者が共通のビジョンを持って取り組める仕組みは必要だと思っています。特別講演乾坤相泰動植咸栄上司永照師華厳宗教学部長・東大寺教学執事栄」は、動物も植物も、みんなが栄えるということです。つまり、私たちの生き方についての答えがあり、1300年前から人々はこの言葉を大事に思ったのでしょう。だから、その後の歴史の流れの中で、大仏殿が焼失しても繰り返し建て直されてきました。そして、いまでは世界中の人が拝観に来る。そのときにこの言葉を伝えていきたい、と思っています。そこで、科学者も考えていただきたい。「乾坤相泰」については、地震、台風など天災がある中で、天地が穏やかであり、自然のサイクルに乗って動くような世の中を作られるでしょうか。「動植咸栄」もむずかしく、自然の中で互いに食べたり、食べられたりしている動植物がともに栄えることはできるでしょうか。その中で、どのような生き方をすべきか。仏教の基本的な考え方に、欲を少なくして、足るを知るという意味の「少欲知足」という言葉があります。欲をすべて無くしたら、人間も動物も生きていけないので、さまざまな欲と、いかに、うまく付き合うことができるか。これからの重要な考え方になると思っています。人生100年時代を科学するという難問について意見を聞くなら、東大寺では大仏(盧舎那仏)さまにたずねるということになります。大仏さまは、聖武天皇により、約1300年前の西暦752年に創建されました。そのころの平城京は、地震などの天災や天然痘の蔓延など、さまざまな災いや苦しみがありました。聖武天皇は天変地異などについても「責めはわれ一人にあり」と思い悩まれたあげく、華厳経という経典に書かれた盧舎那仏に出会い、「すべての生きとし生けるものはかけがえのない存在である」ということを思い出すために、大仏さまの建立を決意されたのだと私は考えます。盧舎那仏建立の精神に「生き方をたずねる」ことに、この難問の回答を求めたいと思います。なぜかというと、聖武天皇の「大仏造立の詔(みことのり)」には「乾坤相泰(けんこんあいやすらか)動植咸栄(どうしょくことごとくさかえる)」と書いてあります。「乾坤相泰」の意味は、天も地もともに安らかであるということ、「動植咸S E NTAN0 2