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概要

SENTAN SEP2019 vol.28

植物の永久のパワーを生み出す多能性幹細胞の全貌を明らかにするうめだまさあき梅田正明教授バイオサイエンス領域植物成長制御研究室長寿や旺盛な活力の源連載企画開拓者たち大地に根を張り移動できない植物が、環境に適応して長寿を保てる理由は、どんな組織や器官にもなり得る多能性を備えた幹細胞を一生もち続け、その機能を巧妙に操っているからだ。動物では受精時にできた多能性幹細胞はまもなく消滅するが、植物は自力で容易に体細胞を初期化でき、多能性がある幹細胞を増やしていくなど優れた能力を持つ。そこで、その基本的な仕組みの全体像を詳細に明らかにするため、奈良先端科学技術大学院大学の梅田正明教授を領域代表に全国の大学・研究機関の研究者が参加する文部科学省の新学術領域研究「植物の生命力を支える多能性幹細胞の基盤原理」(平成29年~令和3年)が展開されている。の植物は永続的な生命力を持っていて、樹齢1千年以上と言われる米カリフォルニア州のジャイアント・セコイア、鹿児島県屋久島の屋久杉などが代表例だ。竹やぶは1本のタケが地下茎を張り巡らしてでき、計り知れないパワーの産物ともいえる。「植物はタネの中に、個体の大元になる胚をつくり、そこにできる多能性幹細胞は、植物の生長とともに根の先端や、葉を繁らせる枝の付け根など大切な部位にもできて生き続け、様々な細胞を分化させる。それが、長寿と旺盛な生命力につながるのです」と梅田教授。もう一つの特徴は、植物体の一部から、元の個体のクローンを作り出すことだ。枝を土にさしておけば、容易に細胞を初期化して元通り再生するわけだが、動物は特定の細胞だけに分化する幹細胞(組織幹細胞)しか持たず、その能力はない。「多能性幹細胞からさまざまな種類の細胞に分化していく過程を坂道に例えると、植物の場合は緩やかな傾斜で逆上がりでき、動物の場合は急峻で戻れないことになります」と話す。しかし、動物の多能性幹細胞は、iPS細胞、ES細胞と人工的な処理で作られ、再生医療に使われることか▲植物と動物の幹細胞の違いら、研究が植物の場合、多能性をもつ幹細胞が体中に増えていき、拡大してい一生を通じて維持される。一方、動物の場合は、多能性幹細胞は受精後間もなく消滅し、成体では限られた種類るが、植物の細胞にのみ分化することができる組織幹細胞が働く。の場合は幹細胞そのものについての分子レベルの研究は未だ少なく、細胞の初期化のメカニズムについても研究途上だ。こうしたことから梅田教授は「植物が多能性幹細胞を増殖、維持し、初期化して新生する機構を解明し、長期間にわたる生命の維持や、旺盛な生命力の根源を理09 S E NTAN