ブックタイトルSENTAN せんたん JAN VOL.29

ページ
17/24

このページは SENTAN せんたん JAN VOL.29 の電子ブックに掲載されている17ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

SENTAN せんたん JAN VOL.29

バイオサイエンス領域ストレス微生物科学研究室髙木博史教授肝機能改善アミノ酸「オルニチン」の酵母による高生産に成功酵素の活性制御機構を解除して実現バイオサイエンス領域ストレス微生物科学研究室の髙木博史教授らは、奈良県産業振興総合センターとの共同研究を行い、肝臓の働きを改善する効果などが知られるオルニチンというアミノ酸を、従来の約7倍の高効率で酵母に生産させることに成功するとともに、生産量が増加する機構を明らかにした。髙木教授らは、清酒酵母からオルニチンを高生産する菌株を分離しており、高生産メカニズムを明らかにするため、この菌株が持つ特有の遺伝子を調べた。この結果、N-アセチルグルタミン酸キナーゼ(NAGK)という酵素の遺伝子に変異を見出し、この変異型NAGKを発現する酵母ではオルニチン含量が約7倍に増加することをつきとめた。さらに、通常の酵素はオルニチンから合成されるアルギニンによって活性が阻害され、オルニチンを過剰生産しない仕組みが、この変異型酵素では解除されていることがわかった。この酵母を用いることで、健康イメージを高めた発酵・醸造食品の製造が可能になる。この研究成果は、国際代謝工学会の学会誌「Metabolic Engineering」のオンラインサイトに掲載された。▲酵母におけるオルニチンの代謝経路と高生産メカニズムバイオサイエンス領域構造生命科学研究室塚﨑智也教授田中良樹助教チオ硫酸を細菌の細胞内に取り込む運び屋タンパク質の構造を解明システインの発酵生産向上に期待バイオサイエンス領域構造生命科学研究室の塚﨑智也教授、田中良樹助教らは、ストレス微生物科学研究室の髙木博史教授、当時構造生物学研究室の箱嶋敏雄教授(現:理事・副学長)、味の素-ジェネティカ・リサーチ・インスティテュート社、東京大学との共同研究により、細菌がアミノ酸合成に利用するチオ硫酸という硫黄化合物を細胞内に取り込む際に、運び屋となる膜タンパク質(YeeE)の構造を世界で初めて解明。取り込みの仕組みについて新しい分子メカニズムを提唱した。チオ硫酸は、細胞内でシステインなど高付加価値のアミノ酸の合成に使われるので、発酵生産への応用が期待される。塚﨑教授らは、YeeEがチオ硫酸と結合した複合体の結晶構造をX線結晶構造解析という手法によって決定。その結果、YeeEは細胞膜の内側と外側にくぼみを持つ新規の砂時計型構造であることを発見。分子動力学計算などから、チオ硫酸が、細胞に保存されたシステイン残基と過渡的に相互作用しながら、取り込まれていくモデルを提唱した。この成果は米国の科学誌「Science Advances」に掲載された。▲チオ硫酸トランスポーターS E NTAN16