ブックタイトルSENTAN せんたん JAN VOL.29

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概要

SENTAN せんたん JAN VOL.29

があります。相対的に高価な陶器や漆器を買えない人が、手軽で環境に優しいプラスチックの食器が買えるようになれば、そうした課題の対策にも貢献します。ほかにもそのような技術はありますか。網代食糧問題を解決する方法として、地球資源でもっとも豊富な木の繊維質であるセルロースの分子構造を変えて、でんぷんの成分のアミロースにするという「木から米をつくる」などのアイデアはありますが、実現は困難です。髙木微生物には未知の機能が多く、例えば空気中の二酸化炭素だけを栄養源にして活動する微生物も存在し、地球温暖化対策と有用物質生産の両面で有望です。このような夢のある研究を流行に囚われず継続し、大きな成果に発展させることも、大学の使命の一つです。一色法隆寺の建築技術も木材の持続可能性を生かす工夫を実現していると考えられますが。古谷1,400年前に建てられましたが、その時代の木材が4分の1程度も残ってると言われています。建設時に、樹木の年輪から生えていた時の方角を判断し、適切に柱の位置を決めるという宮大工の知恵が生かされています。さらに、300年に1回の大修理をするなど木材の維持管理に努めてきました。あと1,000年は持つようです。ベストの目標を優先する一色今後、テクノロジーを飛躍的に発展させるには、何が必要ですか。網代統計学、情報工学などを使うデータサイエンスなど他の分野との融合が大切です。私の分野は分子設計をしてから素材づくりまで時間がかりますが、データに基づくシミュレーションを行えば、大幅に時間短縮できます。髙木人材育成の面では、将来のイノベーションを生む可能性のある博士後期課程の学生や博士研究員の待遇の向上とキャリアパスの支援が必要でしょう。佐藤奈良先端大と共同研究しており、互いに協力しながら前に進む産学連携は非常に大事だと実感しています。沖研究者も、いまできそうなテーマに取り組むばかりではなく、20年先になっても到達すべき理想とする目標を見極め、後回しせずに限られた研究環境の中でも挑んでいく姿勢が大切だと思います。一色佐藤さんの生分解性ポリマーの研究も、なかなか受け入れられなかったそうですね。佐藤当初、社内で逆風がありましたが、「将来、必要になるので研究を続けたい」という思いを周囲に伝え続けました。心を大切に一色テクノロジーの発達に伴い、それを享受する人、研究する人の心の問題は、どのように考えていますか。古谷テクノロジーが発達して暮らしが非常に良い環境になりますが、精神的には、その変化に耐えられないといった問題が生じてきます。例えば、不老不死の薬ができても、人間にとって幸せでしょうか。仏教には、生老病死の4つの苦しみにもとづく「四苦八苦」という教えがあり、その苦しみを何とか取り除きたいと考えられたのが仏の教えです。人生100年の時代を迎えるにあたって、心を安定させることが一番大事だと思っています。髙木テクノロジーが発展し、それが社会に受け入られるには、人と人の心のつながりが大切です。今後、研究者1人でできることは益々限られてくるので、これまで以上にコミュニケーションを深めて研究に取り組みたいと思います。沖「心の平穏」などSDGsに盛り込まれていなくても今後の私たちに不可欠な目標が数多くあることがわかりました。科学技術、社会の仕組み、暮らし方などについて、どうすればもっと良くなるのか、考えを深めていきたいと思います。S E NTAN04