ブックタイトルSENTAN せんたん JAN VOL.29

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概要

SENTAN せんたん JAN VOL.29

域長に聴く基礎から応用まで、最先端をカバーする物質創成科学領域長太田淳教授物質創成科学領域は、物質の未知の仕組みを電子や原子のレベルまで掘り下げて明らかにするとともに、科学や産業の最先端で必要な新材料やデバイスの開発基盤となる研究を手掛けている。太田淳領域長に、研究教育の現状と動向などについて聴いた。―大学が奨励している異分野の融合研究はどのような形で進んでいますか例えば、バイオサイエンス領域の修士課程を修了して、物質創成科学領域の博士課程に移る学生や、他領域出身の教員の採用など、融合研究を念頭において進路を選ぶ例が増えていて、そのような交流を積極的に勧めています。小規模な大学なので、研究室間の物理的な距離が近いのは、融合研究には向いています。学内の論文発表会でも学生の発表を聞いた他の研究室の教授から「この成果は使える」と共同研究を申し込んできたことがありました。また、本学は、複数指導教員制により、博士課程の学生に対し、他分野の教員が副指導として参加しますが、これが共同研究の出発点になることが多いです。学生にとって融合の場は、ある程度強制的に設けないと成立しないことがありますが、子(学生)が交われば親(教員)も交わることになります。―国内の大型研究プロジェクトを担当したり、国際的な共同研究に参加する研究者が多くなっていますね研究のテーマが、JST(科学技術振興機構)創造研究推進事業の「CREST」「さきがけ」などに採択されるケースが増えてきました。このような大型のプロジェクトに加わると、さまざまな形での共同研究が進みます。また、海外との共同研究では、フランスのエコールポリテクニックなど大学・研究機関に国際共同研究室を設け、東南アジアでは台湾国立交通大学、タイのチュラロンコン大学などとの共同研究も進んでいます。これら協定校のいくつかは、両校で学位が授与されるダブル・ディグリーのプログラムを採用し、教育と研究が一体になって国際的な活動を進めています。―2018年に1研究科になりましたが、その後の学生の教育の状況は授業のカリキュラムは、それまでの物質、情報、バイオの3研―物質創成科学領域で行われている研究は、どのような方向に進んでいますか物質創成科学の領域は材料科学やナノテクノロジーといったさまざまな学問のベースになるテーマがあり、物性、デバイス、化学、バイオマテリアルの四つの分野にまたがっています。非常に基礎科学的な領域から、バイオサイエンスや情報科学の領域と結びつく形で分野を融合した研究も盛んです。このように、基礎から応用まで幅広くカバーするような方向をめざしています。当面は、物質のデータを網羅的に解析するマイニング(採掘)の手法や人工知能を使って、効率的に探索するマテリアル・インフォマティクス(MI、材料情報科学)などデータサイエンスに注力していきます。このMIの専門家の研究室を2021年4月に発足する予定です。基礎的な研究と産業界を結びつける形で、研究成果の出口を見据えた研究は大切ですし、学生の教育にも不可欠です。究科のコアになるプログラムと、情報、バイオと融合したプログラムに分かれますが、物質の学生は融合プラグラムを選ぶケースが多いです。以前から行っていた学生の海外派遣については、学生自身がステイする研究室を選び、メールを書いて承諾を得るなど、アレンジする学生も出てきました。国際的な研究マインドを身に付けるための良い経験になっています。一方、留学生は、東南アジアを中心に、博士課程の学生が急増しています。教員が大学同士のコネクションを築いているからで、私の場合、タイ出身の留学生とともに出向いて、留学生によるタイ語でセミナーを開きます。日本での暮らしぶりも紹介して、学生同士のつながりを深めます。―太田教授は、生体に電子デバイスを移植し、外部から光を使い制御、測定する研究などで知られています。その経験を踏まえて若い研究者に望むことは興味を持って異分野に飛び込み、自分の研究分野を広げ、深めることに躊躇せずトライしてもらいたいです。05 S E NTAN