ブックタイトルSENTAN せんたん JAN VOL.29

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概要

SENTAN せんたん JAN VOL.29

知の扉を開く開発技術を革新し、次世代のソフトウェアづくりを実現する情報科学領域ソフトウェア工学研究室教員紹介松本健一教授石尾隆准教授畑秀明助教ラウラ・ガイコビナ・クラ助教エコシステムを支えるコンピュータを作動させ、様々な仕事を実行するソフトウェア(プログラム)は、その設計や製品化の工程など開発・運用の面からの技術革新が迫られている。人工知能(AI)をはじめ、プログラミング言語を解析する「自然言語処理」、事業者が持つソフトウェアを使用者が遠隔利用する「サービス化」などのデジタル技術が相次いで普及する中で、必要とされる機能を十分に果たすソフトウェアの作り方や使い方を見直す必要が出てきたからだ。松本教授らは、さまざまなソフトウェアが共存・連携する「次世代ソフトウェアエコシステム」を支える技術の研究に取り組んでいる。日本学術振興会(JST)の科学研究費助成事業基盤研究(S)に採択されており、「ソフトウェア開発運用における無駄を極力なくすことで、高い経済効率と持続可能性を実現します」と松本教授は強調する。研究プロジェクトは、「ソフトウェアを構成するプログラムのアップサイクリング(再利用)」「人とAIの適材適所の配置」「外部の技術情報と連携する品質管理」の3本柱で従来のソフトウェア開発の枠を越えて課題を克服する。まず、「アップサイクリング」は、正常に動作し機能はしているものの改善の余地が多分に残る技術的負債を抱えたソフトウェアが対象。目標の動作の核になる有用な部品(ソースコードの断片)にしぼって取り出して再構築し、新たな性能を持たせるなどの研究を展開する。次いで、「適材適所の配置」は、共同作業が増えたソフトウェアの開発現場の人手不足を補うための研究。開発者それぞれのスキルをデータ化し、統計的手法により適格性などの評価を可視化したうえで、「設計が得意だ」、「バグ(誤り)を見つけるのがうまい」など各人の特性に合わせて配置する。AIロボットもその一員になる。また、「品質管理」は、学術論文など多様な技術情報を部品と紐づけし、製品化後の更新情報も入手して、除去すべきバグの存在などの問題を解決する。そのための登録・管理方式を確立する。松本教授は「ソフトウェアの基本的な部品であるソースコードを公開し、開発者同士で共有するオープンソースソフトウェア(OSS)により、開発の様子がわかるデータが飛躍的に増えて研究が進み、その手順も変わりつつあります。ソフトウェアは生態系(エコロジー)のように大きく循環するエコシステムの中で、さまざまな形に製品化されており、企業の研究開発にも役立つ成果を上げていきたい」と抱負を語る。07 S E NTAN