ブックタイトルSENTAN せんたん SEP 2021 vol.30

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概要

SENTAN せんたん SEP 2021 vol.30

若手の活性化が課題―本学は世界水準の研究力をめざす国の研究大学強化促進事業に採択されていますが、研究者に望むことはありますか。研究については、若手教員、研究者の活性化の課題があります。もちろん、若手は頑張って成果を挙げていますが、本学の戦略企画本部IR(大学機関調査研究)オフィスの統計的なデータを見ていくと、研究の目標がこぢんまり、まとまりつつある傾向がみえます。本学は、教員の努力により、科学研究費助成事業(科研費)など競争的資金の獲得額が比較的多くなっており、そのこと自体は評価すべきですが、若手は大型の研究費が得られる教授らの研究プロジェクトの範囲内でうまく成果を挙げることにばかり意識が集中しがちになってしまうことになるとまずい。難しいですが、若手が独自のテーマを打ち出せる環境がないと真の活性化はありえないと思います。例えば、情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3領域が融合したデータ駆動型サイエンス創造センター、デジタルグリーンイノベーションセンターが相次いで設立されました。そこに若手が独自のテーマを実現するために、一定の期間入って研究し、視野を広げてもらう。そのような大学のシステムを土台に、若手が思い切り挑戦する意欲をかき立てるような仕組みづくりを考えていきたい。また、助教の平均年齢が上がり、成熟した研究者が増えていることは、プロジェクトの遂行上のメリットになります。ただ、そこで大胆な発想の若手の採用が減っているかどうかについてもウォッチしていきたい。さらに、学内での助成金の配分に偏りがないかといった問題は、慣性の法則のようにそのまま進んでしまえば重大になるので、早めに執行部が対応しなければならない。本学は3つの領域がうまく機能していくことが重要です。専門店のメリットを生かす―産学連携について本学は、共通の課題を見つけることから始める「課題創出連携研究事業」をいち早く取り入れましたが、これをどのように推進しようと思っていますか。課題解決型の産学連携研究については、非常に興味深い発想と思っていますが、メリットとデメリットをよく分析し、相手企業との間合いも考えながら、時代に合わせて変えていかなければならない。本学の弱点は研究者の数が少ないので、マッチングできる研究テーマが限られることです。それは、逆に、商業に例えれば、総合デパートではなく専門店の強みがあることになります。さらに、データサイエンスなど融合領域が充実していることもアピールできます。それで全ての業務をカバーできるわけではありません。また、宣言するからには、それを必ずやり遂げなければいけないという制約もあり、その中であまりにもチャレンジングな目標を書いてしまうと、失敗した時のダメージは大きい。そこで、非常に大事で遂行すべき中期目標・中期計画を文科省に提出するとともに、それを包含する形で様々にチャレンジングな内容も取り入れた発展型の「NAIST2030」という自前の中期目標・中期計画をつくろうとしています。そのため、全学の教員、事務職員らの率直な要望を吸い上げて協議し、一体感を持って共創していきたいと思います。ネットワークの強化を―本学が先進的な取り組みをしてきた国際連携については。本学の国際連携の枠組みは非常にうまく出来上がっています。継続して発展するには、米仏カナダにある国際共同研究室などで、さらに自主的な取り組みを増やし、充実することが重要です。また、東南アジアや欧米の留学生が帰国し、出身国の大学に戻るケースが多いことから、ネットワークづくりを強化し、本学との共同研究や優秀な学生の確保などに努めたい。新型コロナウイルス禍の影響でオンラインでのコンタクトが急増しましたが、国際連携でもオンライン訪問などで、コミュニケーションが深まると思います。全学で考える―本学に赴任されて23年になりますが、この大学の将来展望をどのように思い描いておられますか。企業から赴任して思ったのは、大学は研究室という商店が集まった商店街のようなものという印象でした。つまり、商店(研究室)はそれぞれ協同組合(学会)にもつながって業務を充実させており、よい商店が増え、魅力のある商店街(大学)になるとお客さん(学生)がたくさん来て潤い発展する。だから、自分の研究も大学全体のことも両方考えてバランスよく研究してもらうような仕組みづくりが、われわれの職務だと思います。今後、教員、職員、学生のみなさんが共創のキーワードの元に同じテーブルにつき、次の「NAIST2030」に向けて考えていただくことを願っています。チャレンジングな発展型のプラン―大学の業務運営の方針として文部科学省に提出する中期目標・中期計画(6年間)については。これは、文部科学省に対して、我々はこのような目標設定、計画で大学の業務運営を達成しますという宣言です。しかし、S E NTAN04