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概要

せんたん MAY 2018 vol.27

知の扉を開くバイオサイエンス領域植物二次代謝研究室有用な植物代謝物を探索し、生合成の道筋を解明する▲峠隆之准教授▼清水崇史助教植物が産生する様々な化合物(代謝物)の比較解析からの発見人類は植物から、医薬品や化粧品、香料などの生活に役立つ貴重な化合物の材料を得てきた。これらの多くは二次代謝産物(特化代謝物とも呼ばれる)と呼ばれる化合物群で、植物にとっては病害虫に対する防御や、花粉を媒介する昆虫の誘因、強光や乾燥などからのストレスの緩和などの機能があることが知られている。そのため、植物が自然環境に適応し生き残るための戦略のひとつとなってきたと考えられている重要な化合物群である。しかし、自然界に広く分布する植物種が非常に多様であることに加え、それぞれの二次代謝物の分子構造や生合成経路が複雑であるため(図1)、有用植物二次代謝物を植物により多くかつ効率的に産生させるための生合成経路の解明は難しい点が多い。こうしたことから、峠准教授は「植物が有用な機能を持つ化合物をどのような生合成経路でつくるか、鍵となる遺伝子は何か、またそれらはどのようにして進化してきたか、という点に着目した研究を行っています。研究は、『どのような代謝物を産生するのか』という点を最初に明らかにしてから生合成経路を推測し、遺伝子の発現パタ-ンやDNA配列の相違と関連付けて解析をすすめるという手法を取っています」とボトムアップの研究方法を説明する。具体的には、植物のさまざまな器官や自然突然変図1様々な植物から検出される主なポリフェノ-ル二次代謝物とその生合成経路異体コレクションにおける『代謝物をつくる能力の違い』についての比較解析を行うことにより、DNAに刻まれた歴史と生合成経路との関連性を探っている。「例えば、同じ植物種であっても日差しの強さや温度の違う地域で育ってきたかどうかで産生する代謝物が異なっていたりします。それは、何千万年という歴史の間でそれぞれの自然環境によって選択されて生き残った現在の形質と言えます。私たちは、そういった代謝物の機能が環境ストレスへの耐性と関連性があるかなどの解析も行っています」と話す。研究手法としては、「オミクス統合解析」というオミクス(DNA配列、遺伝子発現や代謝物について、分子全体の包括的な理解を試みる研究手法)を組み合わせた手法を用いている。植物を紫外線から守る化合物最近の成果のひとつは、有害な紫外線から植物を守る機能がある二次代謝物とその代謝物生合成の鍵遺伝子を、アブラ0 9 S E NTAN