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概要

せんたん MAY 2018 vol.27

知の扉を開く物質創成科学領域有機固体素子科学研究室柔らかい有機半導体によりエレクトロニクスの新分野を開拓▲中村雅一教授▲辨天宏明准教授能を付け加えて暮らしを豊かにすることを念頭に置いて、多彩な有機材料の相互作用を解明し、役立てる研究を続けてきました」と語る。現在の主要な応用研究のテーマは、有機熱電材料、次世代プラスチック太陽電池、そして、透過性が強いテラヘルツ波という電磁波を受信し画像化するフレキシブルセンサーだ。排熱を電気エネルギーに▲小島広孝助教▲鄭敏喆特任助教どの表面にもエレクトロニクスを柔らかい有機化合物を次世代のエレクトロニクスの材料として使う研究開発が実用段階に入っている。曲げられる高精細の有機ELのディスプレーはすでに製品化され、有機薄膜太陽電池、有機トランジスタなどの実用化も間近に迫った。有機材料は柔軟で軽く、印刷技術を使って低コストに大面積デバイスが作られるといった、シリコンなどの無機材料にはない特性を持ち、それを生かした個々の有機デバイスの性能が格段に向上しているからだ。このように有機エレクトロニクスへの期待が高まる中で、有機固体素子科学研究室では、身の回りの環境から電気エネルギーを得る有機デバイスを中心とする様々なテーマに、物性物理、電子工学、表面科学、材料化学など多角的な視点から研究に取り組む。電流が流れている材料内の電位をナノレベルで評価し解析できる世界唯一の装置などを開発し、測定が困難な現象の解析には理論計算を導入するなど、現象の根本理解を研究の核として基礎から応用まで幅広いテーマに挑んでいる。中村教授は「紙のように丸められる電子機器、発電する衣服などさまざまなモノの表面(anysurface)にエレクトロニクスの機有機熱電材料は、生活環境や人体からの排熱を回収し、それを電気エネルギーに変換するのがねらい。ゼーベック効果と呼ばれる現象で、材料内の温度差により起電力が生じて電流が流れる。一般に、起電力の大きさに相当するゼーベック係数や電気の流れやすさを示す電気伝導率が高いほど、また、熱伝導率が低いほど効率が高くなる。この現象について、有機固体素子科学研究室では大きな発見があった。純度を十分に高めたフラーレン薄膜が、従来の理論値の100倍前後の高い電圧が出るという巨大なゼーベック効果を示したのだ。後に他の多くの有機低分子半導体でも同様の現象が見られることが判明したが、これまでの無機材料の理論では説明できない。実用化されれば、有機熱電材料を2枚の電極で挟むだけの乾電池のような単純な構造の熱電変換素子ができるだけに期待は大きい。チームを主導する小島助教は「無機材料に比べ有機材料は分子同士が弱い相互作用で結合するなどの特徴が関係しているのかもしれません」と推測する。図1有機分子の機能を活かした新しい熱電材料とその応用熱伝導率が高すぎることが課題だったカーボンナノチューブ(CNT)というナノカーボン材料の間に特殊なタンパク質を挟む形で接合することで熱伝導率を最高で1000分の1に抑制するナノ複合材料の1 1 S E NTAN